異変
いやぁ、前に投稿したのいつだっけwww
~グオネス・ツァールトハイト~
今一番欲しいものあるって聞かれたら、みんなはどう答えるかな。
エスカは多分、お金だろうな。主に食費の方で迷惑かけちゃってるからなぁ……。
ロサはやっぱりご飯かな。その代わりエスカのお願いは永遠とかなわないだろうけど。
シーニィは何かな。正直まだ出会って日が浅いからわからない。いつかいっぱい話をしてみようって思うけど、なかなかそのタイミングがつかなくて、結局今も分からずじまいだ。
僕は何を選ぶだろう。
………。
穴…………穴が欲しい。
「それでその中に入りたい……」
ギルドの一番偉い人の前なのだから当然緊張していた。気をつけていたのに噛んでしまった。もう恥ずかしくてたまらない。
「え……なにいってるの?」
「気にしないで、独り言……」
ロサは少し気遣ってくれてもいいんじゃないか?
「コホンッ。気を取り直して、質問って何かな?」
さすが団長、すかさず話題を切り替えてくれた。今度は噛みませんように。
「その……ゲートが開いた途端に、中から出てくる人をいきなり敵みたいな扱いをして、戦力を集めることもないんじゃ……」
最後まで言い切れる自信がなくてちょっと言葉足らずだったかもしれない。それでも僕の言葉の意味は分かってくれたはずだ。
「いや、完全に敵と認識して行動しているといってもいい。出てくるのはシーニィみたいな優しい女の子かもしれないのに」
僕の問いに団長の口から出た答えは、僕の考えを前提から覆すものだった。
「うん、いいね。いい質問だよグオネス君。君は単に臆病なだけじゃなくて、観察眼も鋭そうだ。答えは簡単だよ。僕達[ギルド]は、人じゃなかった場合の為に、準備するのさ。多分下のロビーはもう義勇兵でいっぱいじゃないかな」
人じゃなかった場合?
「それは、仮に中から猫が出てくる可能性だってあるっていうことなの?」
「たとえがかわいいねシーニィ。つまりそういうことさ」
「うるさいわね」
団長の返しにシーニィが不機嫌になった。この二人って気が合ってそうで余り合ってなさそうだ。
「中から出てくるのが巨大な翼竜だったこともあるし、果ては大きな岩だったこともあるんだ」
竜。竜だって? おそらくロサとエスカも、僕と同じことを考えている。僕たちの村を襲った、あの黒い竜の事を。
ロサの方を見る。さっきまで眠たがっていたのに、今は顔に影を落としていた。
「竜……か」
エスカの独り言がかすかに聞こえた。表情こそ変わっていないものの、両の拳をギュッと握りしめている。
僕達三人はあの日の出来事を懸命に覚えている。遊びに行った山の上から見た、燃え盛る村の光景を。悠々と村を闊歩し、家々をいとも簡単に踏みつぶしていく様を。
僕たちは忘れない、忘れられない。丸子げになって誰かも分からなくなった死体を埋葬する日々を。雨の中で三人で分け合ったパンを。
けれども最近、思うことがある。もういっそのこと忘れてしまいたいと。
多分僕は、復讐を胸に生きていくことが辛くなってきたんだと思う。
全部忘れて、ロサとエスカの三人で暮らしたい。そう願っているのは僕だけなんだろうか。
「……ネス」
ロサもエスカも、まだまだこの旅を続ける気だ。特にロサは復讐に固執している。時々獣を狩る時の様子が……怖い。
「グオネス! 聞いてんのあんた!」
「えっあ、ごめんシーニィ、それで何?」
いきなりシーニィに怒鳴りつけられた。一体どうしたっていうんだ?
「何か考え事をしてたみたいだけど、話を戻してもいいかな?」
「あ、はい。すみません、ありがとうございました」
そうか、僕は周りが見えなくなっていたのか。そんなに考え込んでいたなんて。
周りに注意を配る……か。そうすれば、なるべくそうするようにはしてるんだけどな。
~シーニィ・ブランシュ~
多分、グオネスは「竜」と言う言葉に反応したんだと思う。いや、それはほかの二人もか。
あたしも話は聞いている分、いくらかは察せる。いつ思いだしてもひどい話だ。
「それじゃあ話に戻るね。あーどこまで話したかな?」
「私とレイリーが……ラブラブするところまで」
あいつ、本当にぶれないな。
「いきなり話の腰を折らないで姉さん」
叱られて少しショックを受けたらしいアイナは、肩を落として今度は真面目に話した。
「保護……必要なら殲滅」
「あ、そうそう。確かそこ等へんだったよね。それで、君達には直ちにその書類にサインをしてもらって、今下に集まっている本隊に加わってほしいんだ。下に集まってるのは特B級以上の精鋭義勇兵、その義勇兵を率いるA級義勇兵の部隊長達。一部隊20名の三部隊編成、総勢60名の義勇兵からなる対ゲート部隊。実力は君達と同等かそれ以上の猛者達だ」
話を聞いているだけで武者震いが起こった。というか目の前の団長様は確実に事を構える気でいるようだ。さっきの話の「保護」と言う言葉の意味を説いてやりたい。
「まて、そもそも俺達に会ったことのない奴らと連携が取れるほどの技量はないぞ」
エスカの言う通りだ。あたしもそんな大人数といきなり連携をとれと言われても無理な話だ。
「ああ、ごめん。伝え忘れてたね。何も君達にいきなり戦えなんて言わないよ。君達の初任務は、シーニィの護衛だ」
「へ?」
「なんだと?」
「ええ⁉」
「冗談でしょ」
今のは焦った。一体どこからどうなったらあたしの護衛の話が出てくるんだ。
「説明、してもらえるんでしょうね」
レイリーは問いかけたあたしの顔を見た。その瞳は綺麗な灰色をしていた。
「なにもシーニィが弱いからとかじゃないよ? 君達、確か出会ってからすぐの森でシーニィが暴走したんだよね?」
吟醸があたしを操ってたあれか。暴走とは少し違うような気がするが。
「もし万が一、何らかの形でまたシーニィが暴れだすようなことがあれば、それを君達に食い止めてほしいんだ。シーニィの力は異界の力、それにその使い方を本人はまだ完全に思い出してない。不測の事態に備えたいんだ」
「二人共、俺は別に構わんが」
「私も特に」
「僕も異論はないよ」
エスカが他の二人に確認を撮った。それはいいんだが、護衛される身としては少々複雑だったりするんだが。
「決まりだね。よし、じゃあ早速書類にサインして、下に居る隊と合流しようか」
「その必要はない」
その言葉は、レイニーの言葉を遮るように聞こえた。野太い声の主はこの部屋の誰でもない、部屋の外から聞こえた。
木製のドアが開かれ、全身白い甲冑の男が三人入ってきた。
そのあとから、入ってきた三人とは違う、灰色の甲冑を着た男が入ってくる。
灰色甲冑の男が兜を取り、わきに抱える。兜の下から出てきた顔は、金髪の髪をオールバックにした細身の中年だった。
「やあ、ホーリック。対ゲート部隊の副司令である君がこんな時に何の用事だい?」
ホーリック。レイリーは兜を取った男の事をそう呼んだ。対ゲート部隊の総司令と言うことは、今下に集まっている部隊の二番目か。
ホーリックは口に不敵な笑みを浮かべて、こっちをじっと見てくる。
「貴様か、ゲートをくぐりこの世界に足を踏み入れたよそ者は」
おっと、よそ者ときた。つまりこの男はあたしのことをどういうことかは分からないが、あまりよくは思っていないということだ。
「ええ、あたしよ。で、対ゲート部隊の副司令様が、よそ者に何の御用で?」
多分、何か仕掛けてくるな。こういうタイプの男は野心家でなおかつ自分の失態一つでおかしな方向へ志向が行ってしまって自爆する、ロクでもない奴だ。
「まぁそう慌てなさるな。クラッヒトカデーレ!」
突然ホーリックが叫びだした。ろくでもない奴だとは思っていたがここまでくるとただのバカだな。
「くっ、力が……」
突然エスカが膝を床に着いた。苦しそうな表情で額には汗まで浮かんでいる。
「なに……これ」
「あぐっ」
ロサとグオネスもまともに立っていられないほど苦しみ始めた。一体どういうことだ?
「これはいったい、どういうことかしら?」
ホーリックの方に向き直ると、当の本人が一番焦った表情でこっちを見ている。本当なら焦りたいのはこっちなんだが。
「バッ、バカな。何故きかんのだ⁉ クラッヒトカデーレ! クラッヒトカデーレ! ちっ、忌々しい! お前たち、殺れ! たかが女一人だ!」
ホーリックが命令した白い全身甲冑の男二人が、ギャインと音を立てて腰の剣を引き抜く。
「ていやー!」
先に飛び出してきた男が大振りで突っ込んでくる。バカなのかこいつは。本当にあたしをタダの女だと思って切りかかってくるのか。
グダグダ頭の中で文句言っても辣があかないので、とりあえず相手より早く動いて………蹴る!
「なめんなぁ‼」
「うごっ⁉」
見事顎にクリーンヒット。天井に頭から突き刺さる。そのまま宙ぶらりんになり、手から滑り落ちた剣がストッと床に刺さる。
「あ、天井に穴開いちゃったわね」
これから考えられるのは、また物を壊したのかと顔を暗くするエスカだ。今回は不可抗力だから許してくれる。とは思う。思いたい、て言うか願いたい……。
「うわぁぁぁ⁉」
直後、混乱したもう一人が右からあたしの頭に向けて剣を突き立ててくる。けれども、やっぱり遅い。
剣の平の部分を右手の裏拳でたたき折る。それと同時並行に左手で相手のみぞおちを殴る。甲冑を着ているが関係ない。へこませるだけだ。
甲冑に拳をねじ込ませる。勢いのあまり壁まで飛ばしてしまう。
パラパラと壁のかけらが落ちる。
「ヒッヒィ‼ 化け物‼」
ガクガクと足を震わせるホーリックの顔は、初めて見たにやけ面はもうどこにもなかった。万策尽きたところか。副司令と言うのだから、どれほどのものなのか期待していたのにこれか。
「駄目だよホーリック、一人の女の子に化け物なんていっちゃったら。それでも君は貴族かい?」
レイリーが涼しい顔で立っている。レイリーだけじゃなく、両隣にいるアイナとティナもだ。ティナは若干顔が青ざめていた。
「君が使用していた魔法は刻印魔法だね。きっと体のどこかに隠しておるんでしょ?」
「ヒッヒィ‼」
ホーリックは聞く耳を持たず、そのまま扉の外目掛けて走り出す。
「捕まえてシーニィ」
あいつの命令なのは癪だが、あたしも一方的にこられて聞きたいことがあるので、ホーリックの首根っこをつかんで、部屋の真ん中に放り投げる。
「ぐへぇっっ⁉」
ホーリックは床に倒れたまま動かなくなる。もう最初の無駄にあった気高さはもうどこにもないな。
「ホーリック、君は一つ間違いを犯した。それは僕達とシーニィを甘く見すぎていたことだ。クラッヒトカデーレっていう魔法は、相手の魔力に作用して力を奪う魔法だ。けど僕とティナと姉さんがその手の対策をしていないとでも思ったのかい? シーニィに至ってはこの世界の理から外れている力だ。当然魔力なんて持ってるわけがないんだから使ってもしょうがないじゃないか。君さては何の計画性もなかったね?」
レイリーに言葉攻めは笑いながら言うので質が悪い。
「で、誰なの?」
ホーリックがこっちを向いて、「何が?」みたいな顔をしているので、一発ぶん殴ってやろうかとも思ったがここは我慢する。
「決まってるでしょ。あんたみたいなタイプの奴が、独断で物事を判断できるわけないでしょうが。あんたに命令したのは誰かって聞いてんのよ」
「ラ、ラールガンだ……」
「ラールガン、って誰よ?」
当然、名前を聞いてもわかるはずがなく、レイリーに助けを求める。
「対ゲート部隊の総司令だよ。まぁ副司令に命令できるのは限られた人達だけだし、大方予想はしてたけどね。と、そろそろ魔法を解いてあげようか」
しまった、と思って部屋を見渡してみると、ロサ、グオネス、エスカはもう肩で息をしながら耐えている。
「うっぷ」
ティナは立ってはいるが口からなにか出てきそうな雰囲気だ。
「ごめんみんな! どうやって解けばいいの!」
これには流石に大慌てだ。なぜかって解いたあとが怖そうだから。
「術者が解くか、気絶するかだよ」
じゃあ気絶させるほうが早い。
「まっまて、解く! 解くから!」
床にまた一つ、穴が空いた。
術が解けた瞬間、四人が息を吹き返したかのように呼吸をする。
「君はいちいち敵を何かにめり込まさせなきゃ気がすまないのかい?」
「あたしが殴り飛ばした方向にたまたまめり込めるものがあっただけよ。ていうかあんたとあんたの姉はなんで平気な顔で突っ立ってたのよ」
「そこらへんは訓練次第でどうにでもなるよ。ティナはS級になって間もないから、少し苦戦してたようだけどね」
「だって~、あんなの咄嗟に防げって言われても無理だよ~」
実際受けてみると苦しいことがわかる。あたしはそもそも魔力と言うものが体の中にないから実感はわかないが、ロサ達がいい例だ。
まぁ自分に効果がないのだから考えてもしょうがない。時々思うがこの体は何でできているんだろうか?
「で、ラールガンってやつはどこにいるの?」
レイリーは少し考え込むそぶりを見せるが、すぐにこちらに向き直した。
「僕の招集に応えているなら、一回のカウンター前にいるだろうね」
よし決まりだ。兎にも角にもまずは敵の頭を捕まえれば答えはいくらでも聞ける。
「楽しくなってきたじゃない」
転移者の前に、身内と前哨戦と行こうじゃない!
ご一読ありがとうございました。やっと本編を始められる………。




