特例入団
どうも、インフルの軟禁明けで直ぐに正月休みに入り、現在旅行中の黄瀬 楓です。
遅くなってすみません今回から平常運転で行こうと思います。
~シーニィ・ブランシュ~
「さあお次は―――あら、いないわね」
見渡す限りの死屍累々。ガラの悪い図体だけの飲んだくれが積みあがっていた。
「はぁ、シーニィが外にすっ飛ばしたのが最後」
ロサは手をパンパンと二回叩いてほこりを払っている。あたしも手のひらが汚れていたので同じことをした。
しかしこの男達の立ち回りの悪さったらありゃしない。お互いがお互いの邪魔して思わずため息をつく時間ができてしまった。これじゃあいつぞやのゴロツキ共と変わらないかもしれない。仮にも義勇兵を名乗っているのなら、それなりのやり方っていうものがあるはずなのに。
「行こ、ロサ。あの二人いつの間にか先に行っちゃった」
「あら、本当ね」
あそこが受付だろうか、広いカウンターでエスカが女の人と話している。あたしとロサも少し駆け足で合流する。と言うか一連の流れでこの人ご立腹なんじゃあ……。
「お前ら、わかっているな? な?」
着いてみると案の定眉間にしわを寄せて苦笑いをしたエスカが念を押して詰めてきた。
受付の人に案内されたのは、レイリーに無理やり転移させられた場所だった。どうやらここが団長室と言われているらしい。
「やあ、お早い出勤だね、四人とも」
「朝からデスクに座って待ち構えてるやつに言われたくないわ、団長様」
扉から入ってすぐ、広い部屋の奥に見えるデスクの椅子にレイリーは座っていた。その右隣に立っているのは、宿屋で襲い掛かってきたアイナ。それと地下庭園にで別れたティナと言う少女がいた。ティナは椅子に腰かけている。
そして、この前部屋にあった丸テーブルとは別に、4人か5人は座れるほどの白いソファーと木造の机が、レイリーのデスクと向かい合う形で置かれていた。
「その呼び方はやめてよ、君と僕の仲じゃないか」
レイリーはヘラヘラと笑う。それに「君と僕の仲」と言われてもいまいちピンとこないんだが。少しイラッときた。
「ニヤケ顔の謎の少女とお友達になった覚えはないわ」
嫌味たらしく言ってみるが、ソレでもレイリーは顔色一つ変えず、ニコッと笑う。まるであたしの言葉を気に求めてないとでも言うふうに。
「あなた、無事だったの?」
確かティナとか言う少女にロサが話しかける。ロサの言葉はおそらく見を案じているんだろうが、当のティナとか言う大胆な服装をして、椅子の背もたれを前にして、股を前回に開いて座っている、ロサより少し年上ぐらいの少女は、とてもその態度からは身を案じられるような傷は怪我は見受けられない。
「心配どうもロサちゃん。見ての通りケロッと復活よ! まぁ一日ベッドの上だったんだけど……」
アハハッと苦笑いをしている。きっとあたしがいなくなったあとの地下庭園で何かあったんだろう。
「みんな仲良しでいい事だよ。さぁ、目の前のソファに座って。それは君たちのために用意させたんだから」
じゃあお言葉に甘えて、と言うことで座らせてもらう。ソファは見た目通りフカフカで、ちゃんとあたし達四人がゆったりと出来るような幅だった。
そういえばあの時の転移とのすれ違いざまに、フードを被った女と、長い白髪の女(エスカに聞いた話、その二人は姉妹らしい)が見当たらない。
「あの姉妹の二人はいないの?」
「ああ、ユキノとソラノなら急な案件でちょっと出てるよ」
ふーん、まぁ差ほどの興味はないが、グオネスとロサが負けた相手を見てみたかった。
「そうそう、やっと本題なんだけど、雑談が少し長引いちゃったね」
「全くよ。こっちは山菜採集の予定をキャンセルしてまできてるんだから、それ相応の内容じゃないと、時間返してもらうわよ」
いま孤児院では子どもたちが目を覚まして朝食を済ませ、山菜を取りに行く準備をしているだろう。本当ならあたし達はそこに加わるはずだった。
「そうだね。でもこれはそれ相応の内容だと思うよ」
レイリーがそう告げると何やらデスクの引き出しを開け、4枚の紙を取り出して、アイナにわたし、あたし達4人のもとに1枚ずつ配られる。
見てみると、何やら契約書じみたものだった。まだこの世界の文字を習って日が浅いが、自分の名前を書く空白の欄があるのはわかる。
「団長、これは……」
横を見ると、エスカが紙をじっと見つめてレイリーに確認を取ってみる。エスカのこの慎重度合いを思えば、紙はよほど大事なものと見受けられた。
「エスカトン君の思ってる通りさ。おめでとう、君達はその書類にサインしたとき、晴れてギルド[アート]団員だ」
「へ?」
急な言葉にあたしは戸惑う。だってそうだろう? いきなり読めない字がびっしりの紙切れ一枚渡されて、覚えのない怪しい組合に入会する許可がもらえたら、普通の人なら怒り出したり怖がって相手にしなかったり、それなりの態度を取るはずだ。覚えがないのなら。
あたしを初め他の三人もおそらく、ペンを取ってサインするだろう。なぜなら、あたし達の当面の目的は、目当ての情報を見つけるためにこのギルドの団員となることだったからだ。経緯はどうあれ、こうして入団するチャンスが舞い込んできたのだから断る理由が見つからない。
「君たちの実力は見たからね、ランクはB級から。それと住まいなんだけど、このままフリージアの所に下宿させてもらうってのはどうだい?」
「まてまて、喜んでギルドには入らせてはもらう。願ってもないことだ。だが話がトントンと進みすぎている。どうして俺達は他とは違う待遇なんだ。ギルドの初期ランクはC級からと聞いてるんだが?」
あたしの横に座るエスカが食って掛かる。当然といえば当然だな。そして、ことの原因はまずあたしが絡んでいるのは間違いないだろう。
「さっきも行った通り、君たちの実力は知ってるからね。S級であるユキノとソラノに、負けたとはいえ手こずらせたんだ。その実力にあった役職を用意するのは当然さ。それと、まぁシーニィのことがあるからね。君たち三人には少し特別なお願いをしなきゃいけないときがあるかもしれないし、その時にC級じゃあ周りに僕が示しがつかないしね」
「それ相応の判断、ということか」
エスカはどうあれ納得したらしい。
他の二人が黙っているのは、きっとこう言う交渉はずっとエスカがしてきたからだろう。
「そういう事。形はどうあれ君たちは異世界の人間と接触してしまった。これはもう奇跡と言っていい。数えるのも馬鹿らしくなるくらいのたくさんの人口がいる国が、これまたたくさん集まっているこの世界で出会ってしまったんだ。君たちには肩身の狭い思いをするかもしれないけれどそこはすまないけど我慢してね」
そう言われるとあたしが萎縮してしまいそうになる。
「ああ、そこは構わないさ。お転婆な娘が二人に増えて、おれの胃が萎縮するだけだからな」
あ、あたしだなそれ。
「あの、ごめんなさい。……つい、ね?」
「ついで済んだら憲兵はいらないんだがな?」
いやもう全く言う通りです……。
「え、それ私もなの?」
ロサって自覚があったんだな……。
「ああ、カウンターが何やら騒がしかったのは君達が関係してるの?」
ああ、その話か。どうやら団長様はご存知ないらしい。ここは新規団員あるあたしがご説明してやろう。
「どうもこうも、朝から酔っ払ったおじさん達が喧嘩吹っかけてきたんですよ、団長様」
すごく大雑把に説明すると、すぐにレイリーは何かを察した顔になった。両隣にいるアイナとティナも、アイナは眉間にシワを寄せたり、ティナは苦笑いを浮かべた。
「君達があったのは多分、最近ギルドに入った義勇兵達だね。今このギルドは急激に拡大していってるんだ。それに伴い、生半可な人が紛れ込んで入団してきたってわけさ。ゴルズって名前の義勇兵を知ってるよね? そこら辺の事情はゴルズが詳しいから聞いておくといいよ」
怪しい、絶対にレイリーは何かを隠している。あたしはジッとレイリーを見つめるが、当のレイリーはずっと笑顔を顔に貼り付けたまま。感情も何も読めはしなかった。遂に諦めて顔を逸らす。
「わかった。詳しいことはゴルズに聞くとして、あたし達を読んだ理由はそれだけ?」
あたしがそう言い放った途端、レイリーの纏っていた雰囲気が変わった。具体的には少しピリッとした空気が部屋中に行き渡った。
「いや、むしろここからが本題なんだ」
グオネス(なんでみんなそんなにペラペラ喋れるのさ、相手は偉い人だよ⁉)
グオネスはメンタルが弱かったりする。




