孤児院での一日
どうも、お久しぶりです。やっとテストが終わりました!
ここから新章に突入していきます。
※パンチの描写を付け加えました。
さて、あたしことシーニィ・ブランシュの今日の一日を紹介しようと思う。
朝、相部屋で一緒のロサを起こし、一階の食堂におりて、今ではすっかり顔なじみになったシルやフリージアさん、孤児院の子供たちと一緒に朝ご飯の支度をする。因みに支度するメンバーはシルとフリージアさんは固定で、あたしや子供たちは日替わり当番制だ。
少し遅れて、今では傷も完治したグオネスとエスカが二階の部屋から子供たちと降りてくる。最初こそ不慣れだったものの、二人の子供相手術の上達ぶりはすごかった。
みんなが揃ったところで席に着く。食事中は裏庭の野菜が収穫時だの、今日は玉蹴りをして遊ぶだの、朝から賑やかな食卓だ。
食事がすんだら後片付け、それからお昼まで子供たちとお勉強だ。
フリージアさんの書斎の向かい側の部屋は教室になっており、子供たちはそこでフリージアさんから文字や算数を教えてもらう。あたしも文字は読めないので子供たちと一緒に勉強に励んでいるが、一週間やそこらで上達するはずもなく、悪戦苦闘の日々だ。
お昼時になると裏庭の畑で農作業をしていたシル達年長者組とロサ達が昼食を作ってくれているので、そのまま昼食の準備を手伝い、子どもたちと一緒に食べる。
因みにメニューは「キノコとリンゴのシチュー」と、普通なら組み合わせがたい食材なのだがこれがなかなか美味しい。
昼食が終わって午後の勉強も終えた昼下がり、特にやることもないので裏庭の木製のベンチに腰掛け、ボーっとしていると、どこからともなく眠気が襲ってくる。
考えたあたしは、すぐに睡魔にあらがうのをやめ、ベンチの背もたれに体を預け、目を瞑ってしまう。
聞こえてくる音は、子供たちの無邪気な遊び越えと、時折吹く風に揺れる木の葉のかすれる音。
ハッと目を覚ますと、目の前には悠々と沈んでいく夕日が、温かく体を照らしてくる。眩しいなと思いとっさに目を細める。
眠る前までははしゃいでいた子供たちの姿がどこにもない。きっと家の中に帰っていったのだろう。
今日の夕食当番はグオネスとエスカ達だったはずなので、誰かが呼びに来るまでもう少しベンチでゆったりしていくことにする。
しばらくするとロサが呼びに来てくれた。"やたら寝てたわね、風邪ひくわよ"と、身を案じてくれるロサ。
最近気づいたのだが、グオネス、エスカ、ロサ、そしてあたしの中で、一番仲間思いなのはロサなのかもしれない。出会った頃は一番の仲間思いはグオネスだと思っていたが、二日間眠り続けていたグオネスを付きっ切りで看病していたのは他ならぬロサだった。エスカと二人で"交代で看病しよう"と提案はしたのだが、"私が一人でやる"の一点張りだった。
地下庭園で何があったのかは知らないが、ロサとグオネスの間には確かな繋がりを感じた。
今夜の夕食は裏庭で採れた新鮮な野菜と、フリージアさんが夕方に城下町で買ってきた鶏肉の炒め物だ。
グオネスとエスカが中心となって作ったメニューは、ガッツリ食べれて腹持ちがよかった。
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さて、今日も一日を楽しく過ごした。明日の朝は授業は休みで、近くの森にみんなで山菜を取りに行くそうだ。
シルに浴槽のお湯の準備を頼まれたので、裏口から出て離れにある、丸い建物の大浴場に向かう。浴槽が中々に大きいので、お湯を張るのに時間がかかる。なので毎晩、みんなで夕食の後片づけをしている間に、こうして誰かひとりが準備しに行くわけだ。
いそいそと裏口を出て大浴場の方を見る。
「あれ?」
大浴場の屋根に突き刺さるようにして立っている煙突からは、すでにモクモクと煙が立っていた。
誰かが用意してくれたのだろうか、とりあえず中に入ってみる。
木で作ったドアを引く。
「おお、ガキどもか! すまねえな、体が汗癖えもんだから一番風呂はもらっ……あ?」
目の前には厳つい顔でこっちをにらんでくるやたらムキムキで巨漢の全裸の男が、仁王立ちで立っていた。
わかっている。扉から入ってすぐは脱衣場なので裸の人がいるのは当然のことだ。
だが、あれを見せつけられては、この衝動は一人の女性として抑え切れないものがあった。
ギュッとこぶしを握る。腕を振り上げる。今の自分が殴ったら、目の前の男はただでは済まないだろう。けど……けれども……!
「なんてもの見せてくれてるのよ…………こんの変態がー!」
目の前の男の顔面目掛けて拳を振る。そして当たった後は、自分の情けない行動を恥じるだろう。
今更ながらに、もしかしたら普通に泥棒なのかもとか思ったりもする。
そうこうしている間に拳があと少しときた。
だが――。
「おっと、いきなりなんだてめぇ」
その拳を男は素手で止めて見せる。パァンという、拳と掌がぶつかる音がする。
とっさの判断で間合いを取る。
「ほう、さてはてめぇ盗人か。我が家に手ぇ出すなんざぁいい度胸してんじゃねえかよ。いいぜ、丁度風呂上がりで体はぬくもってんだ。相手してやるよ」
名も知らぬ男は構える。というか……。
「その前に服を着ろッ!」
ド正論を言った気がする。
「んぁ? 俺ぁ別にどうってことねえぞ?」
「あたしが迷惑してんのよ!」
一体この裸族はどういう神経をしているんだ?
「もう、ゴルズ兄さん!」
後ろから声がしたので振り返ってみる。
もはや声の時点でわかってはいたのだが、後ろにいたのは腰に手を当てて頬を膨らましていたシルだった。可愛い。
「おう、シルか! 待ってろ、今盗人をつかまえてやらぁ!」
シルは猛ダッシュしてあたしの横をすり抜けていく。
「その前に服を……着て下さ―――い!」
シルもお年頃なのか、顔を赤くしながらジャンプして裸族の顔をビンタする。
目を開けたシルは、裸族の顔を怒った顔で凝視して、小動物見たいな怒り方を始めた。
「なんでいっつもそうなんですか! お風呂上りはちゃんと服を着てください!」
「つってもここ脱衣所だしよ」
「脱衣所関係なく女の人が目の前にいるならせめて下着くらいはいてください! 大切なお客様なんですから!」
「お客様だぁ?」
ようやくまとまった話ができそうな気がしてきた。
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「はっはっはっ、済まねえな。ギルドからの客人とは知らず失礼なことをした」
「全くです。びっくりしたんですからねこっちは」
食堂の、あたしの座っている椅子の向かいに座り、ふろ上がりのお茶を飲んでいる元裸族の名前は[ゴルズ・モーティナス]と言うらしい。この孤児院の育ちで、今はギルドに所属して依頼をこなし、ギルドの家計の支えになっているそうだ。話を聞けばすごくいい人なんだが、初めての出会いがちょっとなぁ…。
「ちなみにゴルズ兄さんはA級義勇兵で、難しい依頼も簡単にこなしちゃうんです!」
自分の事でもないのにシルは胸を張る。なるほど、このゴルズ兄さんとやらはシルのあこがれか何かなのか。うらやましいな。
「しかし、すさまじいな。女の前で平然と裸とは。」
「ははっ、まあ確かに豪快ではあるよねぇ……」
騒ぎを聞きつけたエスカとグオネスがあたしの後ろに立って共に苦笑いを浮かべる。
「バカなんでしょ」
あたしの隣に座って、お茶をススっているロサは落ち着いた声音で、暴言を吐き捨てる。
「まぁそうカッカすんな。どうだ、フリージアのお茶はうめぇだろ!」
ゴルズがにかっと笑う。
「全く、もう少し落ち着いて行動してください、ゴルズ」
ゴルズの隣に座るフリージアさんが頬に手を当てて、首をかしげて困った顔をしている。
「はっは、しかしまぁ、これから仕事していくことになるんだ。溝にっちゃいけねぇ、今日の事は忘れてくれて、許してくれ」
ゴルズが真剣な顔になる。こんな顔もできるのかと素直に驚く。
まあ今日は全面的にゴルズが悪いわけではなく、確認しなかった自分にも非はある。すぐにとはいかないだろうが、悪い奴ではないだろうし、仲良くやっていけそうな気がする。
「ええ、あたしも悪かったところもあるし、今回の事はお互い不問にしましょ」
「おう、これからは仕事の面でも家の面でも宜しく頼むぜ」
二人で握手をする。いい雰囲気だったはずが、ロサの一言で、その場の空気は崩壊する。
「あれ? 私達、あの日以来ギルドに行ったっけ?」
「いや、確か正式な通達があるまではここにいてくれと、手紙が届いていたな」
エスカが首をかしげる。
「それっていつなの?」
「俺に聞かれてもわからんぞ」
ロサとエスカが考え込んでいる。
と、突然コンコンコンと家の正面扉をたたく音が聞こえてくる。
「はい、今参ります」
フリージアさんが急ぎ足で正面扉の方に消えていく。
「だれだぁ? こんな夜遅くに?」
しばらくすると、フリージアさんが食堂に戻ってきた。その手には封書が握られていた。
「あの四人にお渡しくださいと、言われました」
"あの四人"となれば、それはもうあたしとロサとグオネスとエスカの四人しか考えられない。
その手紙をあたしが代表して受け取る。
その内容は、明日の山菜採取に行く予定を、あたし達四人は止めざる得ない内容だった。
続きをお楽しみに!




