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世界の歩き方  作者: 黄瀬 楓
ギルド強制転移編
18/25

あたしの感情、話の前座

どもです。

 夕食が終わり、子供たちが各々自分の寝室に帰っていく。

食堂に残った子供たちの中でも年長組の面々は、食器を洗うために奥の部屋へ入っていった。後で聞いたが奥の部屋は広い台所で、小さい子供が一人はいるような大きな鍋まであるらしい。

 シルも年長組なので食器洗いを手伝いに席を立ち、エスカトンも何か手伝ってくると言ってシルの後を追う。

 残されたのはあたしと、あたしの横にいるロサ。

 それと、この孤児院の院長であるフリージアさんだった。


「シチューは美味しかったですか、お二人とも?」


 食後のお茶を飲みながらフリージアさんは笑みを絶やさない。笑顔を絶やさないところはレイリーと似ているが、笑顔の種類が違う。フリージアさんの笑顔は見ていて安心してしまう。因みにレイリーは何か企ん出そうな気がするから気に食わない。


「ええ、ごちそうさま。すごく美味しかったです」


「ご……ごちそうさまでした」


 だからなんでロサはそんなにがちがちに緊張しているのか。シチューも食べるスピードは完全にいつもより遅かったし。

まあおかわりは結局三杯くらいしていたが。


「ふふっ。はい、お粗末様でした」


 あ、フリージアさんが笑ってロサの顔がまた赤くなった。

 好きになった。ではないか、フリージアさん女の人だし。

経緯はどうであれ、こうなった理由が知りたい。あとで聞いてみよう。


「それでシーニィさん、少し込み入ったお話をさせていただきたいのですが……」


 そういえば、フリージアさんに詳しい話は食後にって言われていた。聞き出すのは少し先になりそうだ。


「ええ、いいですよ?」


「よかったです。では後程、私の書斎で。シル~、シーニィさんを先のにお部屋に案内して差し上げて」


「はいです~」


 奥の部屋から返事が聞こえてくる。駄目だ、やっぱり可愛い。あたしの方が実は…何てことになりたくはないな、うん。自分を信じよう。



          +++++



 シルに部屋を案内され場所は、二階の奥から二番目にある部屋だった。

 部屋には簡素な木作りのタンス、机、ベッドのセットが、右の壁際と左の壁際にそれぞれ一セット用意されていた。

 二人部屋なのでロサとの相部屋だった。

 奥に設けられた、木の板で開閉できる窓から見えた景色は、この孤児院裏庭にあたる部分で、地下庭園(とりあえずはそう呼ぼうとエスカに提案された)ほどではないが、大きな木の枝に木製のブランコが太巻きにした糸でつるされて、花壇の花たちと一緒に、夜風にゆっくりと身をゆだねて揺れていた。




 シルに案内された後、約束通りフリージアさんの書斎に向かう。

 書斎は一階の玄関前の通路を奥に行った先にあった。一回の奥の部屋は三つあり、一つはフリージアさんが孤児院の子供たちに勉強を教える教室。二つ目はフリージアさんの寝室。そして最後の一つが、一番奥にあるフリージアさんの書斎だった。


「ありがとうシル。ごめんね、さっきから部屋の案内ばかりさしちゃって」


「いえ、シルがやりたくてやってるんです。では、シルは片付けの方を手伝ってきますね」


 小走りに走り去っていくシル。角を曲がる際にこちらに笑顔で手を振ってくれた。


「可愛いわね」


 なんてことを真顔で言ってしまったあたしはどうにかしてしまったのだろうか。

 邪念を取り払うべく首を大きく振る。本当にあたしはそっちの気があるんじゃないだろうか、冗談ではなくなってきたな。だが、あの弱々しくもしっかりと咲こうとする花のような少女は、なんとなく守りたくなってしまう存在だった。さて、この気持ちをどう説明したらいいものか……。

 新しく出てきた邪念をすぐに払い去り、目の前の両開きの扉に向き直る。

 扉を三回、コンコンコン怒鳴らす。するとすぐに「はい、どうぞ」と言う返事が帰ってくる。

 入ってみると、さすが書斎と言うべきか、壁に沿っておかれている本棚には分厚いのから薄いのまで、気難しそうな本がびっしりと詰まっていた。


「シーニィさん、こちらへどうぞ」


 部屋に入ってすぐ右に振り替えると、フリージアさんが椅子に掛けていた腰を上げ、向かいにある椅子に、笑顔で手を差し伸べる。

 どうやら向かいの椅子に座れとのことらしい。


「失礼します。すごい本の数ですね、まぁあたしは読めないんですけど」


 椅子に腰かけながら周りをもう一度見渡す。目に入った文字がどういった意味を持つのかもまだわからない。


「はい、そのことは存じております。レイリーから文字などのこの世界の常識について教えてやってくれと言われているものですから」


 そういえばここに来たのはあいつの紹介だったな。今更だがこれから先の生活では常にレイリーの存在が付きまとうんだろうか、そう考えるとなんだか気後れしそうになる。

 それと、驚いたことがもう一つ。


「あたしが別の世界から来たってこと、知ってるんですか?」


 あたしの疑問にもフリージアさんは笑顔で答える。


「はい、レイリーから少し聞かされた程度ですが。それにしても何か不自由はありませんでしたか?

あの子、ときどきとんでもないことをやってしまうものですから」


 フリージアさんが頬に手を当て、少し困った表情になる。

 とんでもないことと言うのは、強制転移の事だろうか、それとも姉の方がいきなり突っかかってきたことだろうか。心当たりが複数あって困る。


「それはまあ…………はい」


「あったんですね……もうあの子ったら、後で少し注意をしておきましょう」


 フリージアさんの困った顔をもう少し見ていたかったが、この部屋に来た目的を思い出し、脱線しかけた話を戻す。


「それで、あたしに用って何なんですか?」










ご一読ありがとうです。

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