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世界の歩き方  作者: 黄瀬 楓
ギルド強制転移編
16/25

結末、孤児院モーティナス

スマホ壊れた……。

「レグルス!」

「アイゼングリュート!」


 二人が同時に魔法を放ち、互いの魔法がぶつかる。その衝撃波を受け、ユキノは後ろに跳んで衝撃を和らげ、グオネスは飛び退くことができずに衝撃を受け、その場に膝をつく。


「流石に限界のようね。ムリもないわ、十二星座魔法は発動してるだけでも魔力を大量に消費する。ましてや()()()()()を解き放って自分に宿らせてるんだもの、消費量は半端ないでしょうね」


 ユキノがグオネスに話しかけている間も、グオネスは剣を地面に突き刺し、杖代わりになんとか立ち上がろうとする。

 ユキノとグオネスの模擬戦は、最初はほぼ互角かに思われた。だが、戦闘が長引くに連れグオネスの動きが悪くなっていく。

 原因は魔力の使い過ぎにあった。

 だがそれでも、グオネスは立つ。


()()()()()なんて呼び方はやめてください。まぁ僕も正しい呼び方なんてわからないですけど、ずっと一緒に寄り添ってきた仲間なんです」


「へぇ、まぁ好きにすればいいわ。嫌いじゃないわよそう言うの。でも、結構長引いたからね。早く終わらさないと、いい加減レイリーがうるさいだろうから」


 そしてユキノは刀を頭の上で持ち、振り下ろす構えをとる。


「まぁまぁ楽しめたわ。今回は敬意を評して――」


 そしてユキノは不敵に笑い、一層構えの腰を低くし、全身に黒い魔力をまとわせながらこう言うのだ。 


「――邪属性の魔法で沈めてあげる」


ユキノは詠唱を始め、周りの黒い魔力はユキノの刀に吸い込まれていく。


「火だけじゃなくて……邪属性まで使うのか……。でも、あきらめるわけには……!」


 グオネスは歯を食いしばり立ち上がる。

 そして、剣を両手で持ち、胸の前で掲げる。


「最後の一撃になる……。けどここで諦めたくないんだ!」


 グオネスも決死の思いで詠唱を行い、光の魔力がグオネスのロングソードに吸い寄せられていく。


「十二の星、十二の座につきし我が精霊たちよ。今、我が身我が魂を刃にせんとするもの。祖は、グオネス・ツァールトハイト!――」


 グオネスは詠唱を続けながらも驚愕する。なぜなら――。


「十二の星、十二の座につきし我が精霊たちよ。今、我が身我が魂を刃にせんとするもの。祖は、ユキノ・アカーシュ――」


 邪属性の魔法を使っているはずのユキノが、まったく同じ詠唱文を唱えていた。

 さらにユキノの背後に浮かぶ十二角形の魔法陣。

 ありえないと、グオネスは思った。





「お姉ちゃんも意地悪よ。あんなことしたらグオネス君が戸惑っちゃうことは決まってるのに……」


 ソラノは自分の姉の行動を困った表情で見ている。ユキノの性格上の事なので今更どうしようもないのだが、それでも何とかならないものかと思ってしまう。


「グオネス、あれって……」


 ロサが横にいるエスカトンに話しかける。だが目線はユキノに釘刺しになっている。


「あれもおそらく十二星座魔法なんだろうが、グオネスの十二星座魔法を見てきたせいか何か釈然としないな」


 エスカトンの疑問に、ソラノが答えを出す。


「簡単よ、聖と邪はついの存在で表裏一体。ていうことは同じ魔法があっても不思議じゃないってわけ」


 ロサとエスカトンはソラノの言葉を聞きながらも目線は三人とも戦っている二人の方にあった。


「詠唱が終わるわ」


 ソラノ達三人は、戦いの行く末を見守る。





「聖の導きに従い、我が刃の一片となせ! 十二星座魔法、リュミエール!」


「邪の導きに従い、我が刃の一片となせ。十二星座魔法、オプスキュリテ」


 ユキノとグオネスの魔力を帯びた刃が互いの敵と定めた相手に向かって同時に振り下ろされる。

 魔力の束が二人の中間地点でぶつかり、それは大きな衝撃と爆発を生む。


「まずい! ディアー、私たちを守って!」


 ソラノは腰の鞘に納めていたレイピアを抜いて上にかざす。するとソラノの周りにいるロサとエスカトンも巻き込み、半球型の魔法防壁が張られる。

 爆発が地下庭園全体に広がり攻撃を放ったグオネスとユキノをも飲み込む。

 ソラノが爆発に飲み込まれる二人を見てハッとなる。


「まずい、お姉ちゃんのほうは余力がまだありそうだから何とかするだろうけど……」


「「グオネス!」」


 エスカトンとロサが叫ぶ。グオネスは魔法を放つ前も、立つのがやっとの満身創痍の状態だった。

 二人が助けに行こうとするが、ソラノが張った魔法防壁が邪魔だった。


「早くこれを解きなさい!」


 ロサがソラノに叫ぶが、ソラノは首を大きく横に振る。


「ダメ! ただでさえ防壁の外は膨れ上がった魔力が渦巻いてるのに、グオネス君のところにたどり着く前に魔力に飲み込まれるわよ!」

 

 ロサがその場にとどまる。


「じゃあ、どうしたらいいのよ……」

 

 ロサは何をするでもなくただうつむいている。


「無事でいてくれ……」

 

 エスカトンも防壁の中で、爆発で見えない外を見ながら悔しそうにつぶやく。

 そして――――――。





「やれやれ、どうしてユキノは加減をするっていうことを覚えられないのかな?」


 爆発が収まり、音もせずモンモンと立ち込める土煙の中で一人の声が聞こえてくる。

 ソラノがその声を聞き、すぐさまいつも一緒にいる年齢よりも幼く見えてしまう仲間だと気づく。


「レイリー居るの⁉」


「そんなに大きな声を出さなくてもいいよソラノ。今は静かだからソラノの声はよく響くからね」


「グオネス!」


 煙が徐々に晴れ、見通しが良くなりつつあったのを見計らい、ソラノに障壁を解かせ、ロサがグオネスのいた方向に走る。

 そこには、グオネスの代わりにレイリーが立っており、グオネスはレイリーの足元で倒れていた。

 ロサが慌ててグオネスに駆け寄る。


「グオネス、ねぇ聞いてる⁉」


 ロサが耳元で話しかけるがグオネスからの反応はない。


「状況をよく知らないから詳しくは見てみないとわからないけど、まずは過度な魔力使用の反動ってところかな」


 エスカトンがグオネスの方へ歩いていく。普通なら駆け寄るはずだが、これには訳があった。


「…………これは」


 エスカトンはあたりを見回す。あれほどまでに激しかった爆発にも関わらず、地面がえぐれた跡も、壁にもヒビは入っておらず、地下庭園の真ん中にそびえたつ巨大樹にも傷一つなかった。


「お前がやったのか?」


 エスカトンは信じられないといった風にレイリーに問いかける。


「そうだよ、爆発する直前に転移してきて、壁や地面に魔法防壁を張ったんだ。それと僕の事はレイリーでいいよエスカトン。お前って言われるのはあんまり好きじゃないんだ」


 エスカトンが呆気に取られているうちに、お構いなくレイリーは話を進める。

 

「さて、ユキノのお仕置きはまた後にして」


「うっ……」


「君たちは今日の宿舎に行こうか」


 レイリーの指す君たちは、グオネス、ロサ、エスカトンの三人だった。

 

「もう夕方だし、あとでシーニィも送るからさ」

「え、いや、聞きたいことが」


 ロサが口を開いた時には遅く……。


「じゃあ、あとはフリージア・モーティナスて言う名前の人に任せてあるからよろしくね~」


 突如地面が光、目の前が眩しくなる。





「はぁ、またなのね」


 ロサは本日二回目の転移にうんざりしているようだ。


「あれがおそらくラグフォール城だから、ここは城下町の外れか」


 エスカトンが見ている先には、夕日でオレンジ色に輝く王城がある。そこから自分たちの位置を割り出していく。

 見渡すと周りは少しの木と、地面に生い茂る草、エスカトンとロサの二人が立っているのは森の向こうにある町と城下町をつなぐ一本の広い道。エスカトン達が前にしている大きな木造の二階建ての家と、隣の家の距離はしばらく歩かなければならないくらいの距離だ。

 グオネスはエスカトンに担がれている。

 目の前の大きな家の玄関からは、道からしばらく歩いたところに見える。

 道路と玄関までの通路の境目に建てられている看板は[孤児院モーティナス]と書いてある。


「ここで、いいんだよな?」


「私に聞かないでよ」


 ロサはもうどうにでもなってしまえという風だった。

 そうこうしているうちに、玄関が開き、中から銀髪の髪の女の人が出てくる。


「ちょ、ちょっとどうするのよ」


「俺が知るわけないだろ」


 女の人に聞かれるとまずいので声の音量を下げて話す。そうこうしているうちに、女の人は二人の前に来る。

 女の人は包容力のある優しそうな笑みを浮かべる。


「あなたたちが、エスカトンさんとロサさん。それと、エスカトン君が支えている人がグオネスさん、で、よかってでしょうか?」


「「は、はい」」


 エスカトンとロサは変に緊張していた。目の前の女の人からは、謎の包容力があふれていた。


「ああ、よかった。間違えていたらどうしようかと」


 女の人は胸に手を当て、ホッとなでおろす。


「あの、あなたは?」


 エスカトンが意を決して話しかける。


「はい、申し遅れました。私の名前はフリージア・モーティナス。孤児院の院長をしています。三人ともようこそ孤児院モーティナスへ、今日からよろしくお願いします」



ご一読ありがとうございました。

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