7 ダンジョンで学費稼ぎ、そしてお花摘み
今日は、お金を稼ぐため、町の一番近くのダンジョンに向かった。
このダンジョンは、近くと言っても、徒歩で5日かかる場所にある。それでテツさんに飛行魔法で飛んで、私を運んでもらうことになった。
最初は、テツさんに抱っこしてもらうつもりでいたのだけど。おんぶになっちゃったのよ。もう。
それで今、私はテツさんにおんぶしてもらって空を飛んでいるの。
テツさんの背中が温かいわ。
気を使ってくれているのか分からないけど、余りキツイ臭いはしないわよ。
こんな異世界でも、清潔にしているのね。
でも、テツさんは昨日武器屋で買ったライトアーマーを装備していて、私も女冒険者が付ける胸当てをしいている。
抱き付いてもごつごつするだけ。これじゃ、テツさんをメロメロに出来ないじゃない。
と思っていたら、ダンジョンに着いたわ。
◇
ここは、誰が呼んだか”魔虫の巣”ダンジョンというの。
昆虫コレクターだった魔術師が作ったダンジョンで、正式名称がないのでこう呼ばれることになったみたい。
私は虫は嫌いなんだけど。
ここの虫の魔物が高値で売れるの。
特に”タマタマ虹色大玉虫”の甲羅がとても綺麗で、アクセサリーや工芸品に使われる素材なの。
そう、学費を稼ぐためよ。
「真美子それじゃダンジョンに入るよ。」
「はい。テツさん。」
私とテツさんは、”魔虫の巣”ダンジョンに入っていった。
ちなみに私のレベルと装備は、
山根 真美子 LV151
勇者
HP***/*** MP***/***
装備:勇者の腕輪、アンチマジックの胸当て、ライトアーマー、鋼の剣
魔法:ライト、アイス、点火、ウインド
特殊:光の剣
その他:真偽眼、絶対貞操帯
テツさんは、ライトアーマーと鋼の剣。
私は鑑定能力無いので、テツさんのレベルとか分かんないわ。でもきっと高レベルよ。
・・・・・・・・
テツさんは魔法の”ライト”であかりを作った。
中は洞窟のように湿っていて、空気が重い。
ライトに照らされ、無数の歪な影が出来る。
奥で水音が響く。
リアルダンジョンっていつ来ても気味わるいわ。
入って暫らくした頃、魔物が2匹現れた。
バッタの大きな魔物よ。
テツさんは一歩前に出る。
「ハタバタ大バッタLV43だ!真美子、右を頼む。」
「はい。テツさん。」
私は右のハタバタ大バッタに剣で切りつける。
シュン!
ぶううしゅー!
ハタバタ大バッタの胴体に切れ目が入り、紫いろの体液が飛び出す。
気持ち悪。
ぶぎゅー!
と変な音を立てながら、ハタバタ大バッタはもがく。
ばたばたもがいているので、近づきにくい。
ようやく収まったので、私はハタバタ大バッタに近づき追い打ちをしたわ。
剣を数回突きさす。
ズス!ズス!ズス!
ぐぐぐぐっ!
とハタバタ大バッタは痙攣をおこしながら息絶えた。
テツさんの方を見ると、もう既に倒しており、私が戦うのを眺めていた。
「テツさん、早く終わったのなら、手伝ってくれたっていいじゃない。」
「いやぁ、それじゃ真美子のレベルアップにならないだろ。」
「・・・・まあそうなのだけど。」
そうよね、いずれ私は魔王と戦えるレベルまで強くならなくちゃならないんだから。
でも、虫気持ち悪い。
「それじゃ、素材取って次に行こう。」
「はい。」
とハタバタ大バッタの羽根と後ろ脚の健を取りリュックにしまったの。
そして、ダンジョンを2人は進む。
・・・・・・
暫らくバッタみたいな魔物を狩っていった。
”ハタバタ大バッタの他に、”ギリギリ大キリギリス”や、”ぼったん大カマドウマ”もいた。
全て、大した素材が取れないので、途中から素材は取らずに捨ててしまったわ。
・・・・・・・
1層下に降りるごとに魔物種類が変わっていく。テツさんが言うには、現在の階の魔物のレベルはLV100前後みたい。
私とテツさんは、魔物を倒しながら更に下の階へと進んでいったわ。
・・・・・・・
テツさんは、いも芋糸大虫を倒し終わった後、
「真美子、ちょっとトイレするから見張ってて。」
と言い出し、私の直ぐ側で用を足し始めた。
「はい。テツさん。」
と私は周りを警戒したわ。
シャー!
と音が聞こえる。やだ!もう!
でも、そう言えば、私もそろそろしたいわ。
以前は森とかだったので、少し離れても大丈夫だったけど、ダンジョン内ってどうしよう。
離れて魔物に会っちゃうとそれこそ下半身まるだしとかで戦わなくちゃいけないわ。
しかしここですると、テツさんの側よね。音が聞こえちゃうわ。
でも、次の戦闘で漏らしちゃったら嫌われちゃう。
私は用が終わったテツさんに
「私も、ト、トイレ。」
「じゃあ後ろ向いてるよ。」
とテツさんはうしろを向いて周りを警戒し始めた。
私は、テツさんの後ろで、ズボンを脱ぎお花摘みをしたの。
音は聞かれちゃったけど、漏らして嫌われるよりはましだもの。
でも、男性って女性の、その、お花摘みに興奮する方もいるって聞いたことあるけど、テツさんはどうなのかな?
やだわ、こんな考え止めましょう。
でもテツさん紳士ね。全然こっち向かないもの。それとも、私に魅力が無いのかな?
・・・・・・・・・
と私とテツさんは、魔物を倒しながら更に下の階へと進んでいった。
「真美子、このダンジョンってまだ、中層なのに魔物のレベル高くないかな?もうLV150前後だよ。」
「いいえ、テツさん、私の知識だと、中層ならLV150前後で合ってると思うわ。」
「そうか、この世界のダンジョンって魔物のレベル高いんだな。」
「そうかしら?だって魔族から比べるとLV150って4分の1よ。」
「へえ、そうするとその魔族ってLV600だから、魔将軍クラスかな?」
魔将軍クラスって確か、噂によるとLV3000超えてたわよね。
「いいえ、2カ月前に城に攻めてきた下級魔族がLV580よ。」
「そんな馬鹿な!LV580が下級だって!LV999が上限なのにおかしいじゃないか?」
「?上限はLV9999よ。」
「な!」
とテツさんは黙ってしまった。ショックを受けているみたい。
それって、以前の世界で高レベルだから安心していたのに、この世界ではレベル的に不十分とかよね。
「テツさんのレベルってどれくらいなの?」
「・・・・LV954だ。まさかこの世界がレベル上限LV9999だったなんて。」
やっぱり、当たったわ。でもLV954って凄い。どうりで動きが見えない筈よ。
「でも凄いじゃない。そのレベルなら中級魔族の弱い相手なら十分戦える強さよ。まさかテツさんがそんなに強いとは思ってなかったわ。」
「中級魔族の弱いのかよ。」
「そうよ。だって、私の知っている人間でLV400超えてる方は、この国では見たことないわよ。」
「・・・・・」
なんか黙っちゃったわ。そうよね。LV999上限の世界でLV954とLV9999上限でLV954じゃ自身もなくなるわよね。
「テツさん!とにかくお金稼ぎましょう。」
「ああ、そうだな。」
とその日は、数回下の階まで行ったあと、魔物のレベルが私のレベルを超えてるからという事で、テツさんの判断で帰ることになったわ。
そして、素材もいっぱいになったので、テツさんがダンジョンの中層の隅に転移ゲート魔法陣を設置しその周りにアイテムで結界を作り、次の日に備えて転移で町まで帰ったの。
冒険ギルドで今日の素材を売ったのだけど、羽根とか腱とか、地味な色の甲羅とかばかりだったから、銀貨5枚にしかならなかったわ。
ちなみにお金の単位は
白金貨1枚・・・金貨10枚
金貨1枚・・・銀貨10枚
銀貨1枚・・・銅貨10枚
大銅貨1枚・・・小銅貨10枚
小銅貨1枚・・・アルミ貨10枚
小銅貨6枚でランチが食べられるから小銅貨1枚100円と思っているの。
テツさんは、お金に関しては、テツさんのいた世界の通貨と同じ数え方って言ってたわ。