72 キス
私は付き合い始めた男性と5回目のデートに行ったわ。
最初に聞いたけど、その男性はやっぱり”テツ”という名前じゃ無かったの。
その男性が付けていた認識阻害のアイテムは、私が最初に付けっぱなしでいいと言ってしまったので、外してって言う機会がまだないの。
だって、すぐに別れるかも知れなかったから。
それでも、デートしているってことは私、その男性の事、気に入ってるんだわ。
今日は、遊園地とか行ってみたかったのだけど、その男性は静かなところがいいと言ったので、交渉の末、とりあえず劇を見てきたわ。
全く、デートで女性の意見を蔑ろにしたらフラれちゃうんだから。
でも、なぜか私は付き合っちゃってるわね。
「真美子さん、これから飲みに行きませんか?」
どうしよう。こっれってそのままあれよね。でも、もう私も25才、不老だから22才だけどね。
あと、そろそろいいかな。とも思ってる。この人とも気が合うし。
まあ、嫌な時は力づくで帰るわ、LV9999の私に勝てる者はいないから。
「そうね、いいわ。」
そして、酒場で飲んだわ。
男性は私に勧めてあまり飲まないのよ。
魂胆が見え見えよ。
「もう帰るわ。」
「それじゃ送っていくよ。」
そして、私達は公園に行ったわ。この人に2度目に会った所よ。
月がとても綺麗な夜だったわ。
この日初めてこの男性に手を握られたの。まあ、私がいままで握らせなかったんだけど。
そして、男性は私の腰に手を回したのよ。この人手が速いわね。
でもなんか嫌じゃなかった。酔っているせいもあるのかしら?
そして、いきなりキスしようとして来たの。
な、ダメよまだ。
私は腕を振りほどこうとしたの。
でも、動かない。
うそ!私LV9999なのよ。力で対抗できるのは腕力で勝る男性のLV9999のみのハズ。
そして、男性の唇が私の唇に触れた。
私はその唇の感触に目をつぶってしまった。
「んん。」
そして、男性の舌が私の舌に入ってくる。
懐かしい甘美な感触。
私も舌を絡める。
くちゅ
「んんん」
ちょろ。
ぺちゃ。
「んん」
痛っ!
私の頭が痛む。
そして、辺りが真っ白になった。
気が付くと私は男性の胸に抱かれていた。
◇
月明かりの中、私は男性の顔を見つめた。
そう、この人は”井中哲次郎”通称”テツ”
私の旦那様よ。
何故今迄忘れていたのかしら、私の人生を変えた人なのに。
私は抱き付いた。
あの抱き心地と懐かしい匂いだ。
「テツさん。」
「ああ、そうだよ。」
「テツさん。」
「真美子。」
「テツ」
「真美子」
目じりに涙が溜まっていたわ。
そして、テツさんを見つめて言ったの。
「テツさん、何でもっと早く自分がテツって言ってくれなかったの?」
そうよ、なんでよ。
「いや、迷ったんだ、真美子が本当に幸せなのは何なのかを。」
何で迷うのよ。
「テツさんが居なくちゃ私の幸せは無いじゃないじゃない。」
「でも、最近は”井中”と幸せだったんじゃないか?」
な、正体を隠して口説いたのは誰よ。
「それは言わないでよ。そもそも、猛烈に口説いたのは”井中”さんじゃない。」
「そ、そうだよ。ごめん。」
「それに、こんな回りくどいことして。何してるのよ。もう。」
「いや、本当は真美子を諦めて次の異世界に行こうと思っていたんだけど。真美子を見たらつい。」
え、もしかして、本当に捨てられる可能性があったの?
「”つい”って何よ。それに、なんでこの公園で会った時、酒なんか飲んだくれていたのよ。」
「酒を飲んだくれていたのは、真美子を諦めきれなかった俺のストレスからだよ。」
それって、私にべた惚れで、未練たらたらだったからって事なのね。
「なによ。それ、もう。」
「あと、もう一回真美子と恋がしたかった。」
え、それってもう一度口説けるか試したの?
「口説けなかったらどうしたのよ。」
「その時は力づくで俺のものにした。」
そんなに私のこと好きなんだ。
「ばかね。そんな事しなくても、私はあなたの物よ。」
私は、そう言いながら抱き付いたの。
もう離さないんだから。
その後また、濃厚なキスを堪能したのは言うまでもないわよね。




