6 本当に勇者を目指すきっかけ
私とテツさんは、宿屋に戻り、今はテツさんの借りている部屋にいる。
「で、その真偽眼で俺を何処まで知ってる?言ってみろ。」
「え?はい。・・・・・」
やっぱり、怒ってるよテツさん。ちょっと怖い。
私は以下のことをテツさんに言った。
①テツさんは神様の事で何かか隠している。
②テツさんは神様に怯えているようだ。
③この間のテツさんが言った日本人の父親の話は嘘。
④テツさんはエッチだけど、いい人で、相手を思いやる優しい人。
⑤テツさんは私を好きかどうかわからない。
「わかった。それだけなんだな。真美子。」
なんか私のこともう呼び捨てね。でもその方が嬉しいかも。
返事はそうね、テツさんの信頼を勝ち取るためにも奮発した方が良いわよね。
「はい。テツさん。それが嘘なら、私の処女あげます。」
「そ、そうか。」
・・・・・何かテツさんは考え込んでいる。え、私の処女って魅力ないの?
「真美子。真偽眼て目にあるのか?」
「ええ、たぶん。」
「ちょっと触らせてもらっていいか?」
触ってどうなるものじゃないんだけど・・・・テツさんの気が済むのなら。
「いいわ好きにどうぞ。」
といったら、私の顔に両手を伸ばしてきた。
あ、顔が近い。もしかして仲直りのキスとか?
何考えてるのよ私、まだテツさんとキスもしてないのに。
と考えていたら、テツさんの手が私に触れた次の瞬間、意識が少し飛んでしまったわ。
△○×□・・・・・・
気づいたときは、もうテツさんの手が私の顔から離れていた。
「真美子、真偽眼を使って、俺に質問してみろ。」
「え?なんでさっき嫌がってたじゃない?」
「いいから。」
「テツさんは、私のことが好きである。イエスかノーで答えて。」
「イエス。」
・・・・あれ?反応が無い?
「テツさんは、愛美さんのパーティにはいりたい。イエスかノーで答えて。」
「イエス。」
・・・・また反応が無い。ってイエスなの?
「テツさんは、私と結婚したい。イエスかノーで答えて。」
「ノー。」
・・・・反応ない。しかし何でノーなの?
そしていくつか質問を続けたが、すべて反応が無かったの。
「テツさんもしかして、私の真偽眼使えなくしたの?」
「いや、俺だけに作用しないように付け足しただけだ、だから俺だけ真偽眼は役に立たない。」
「そんなことが出来る訳が・・・・・・・」
だから神様に・・・・・
それだと、記憶とかも消せるんじゃないの?
「これで色々分かったろ、何故俺が・・・・・なのか、誰にもしゃべるなよ。」
「伏字じゃ分からないわよ。でも、誰にもしゃべらないわ。あと、少し質問があるのだけどいい?」
「質問?ああいいよ。」
「もしかして、記憶とかもいじれちゃうの?」
「試したことが無かったな。それいい案だ。」
と言ってテツさんは私の顔に手を伸ばしてきた。
私はその手を払ったわ。
「ちょっとまってよ。私の記憶消さないでよ。」
「冗談だよ。そんなこと出来ないから。」
とテツさんはニッコリ笑った。
私はその笑顔にドキッとしたの。
でも、私は、もしかして記憶操作出来るんじゃないかと疑心暗鬼になったわ。
そして、テツさんが私の記憶を消せば、テツさんは私の側にいる必要がなくなる。
いや、テツさんと離れたくない。
そして、考えた。
そうよ、さっきの結婚よ。
結婚してテツさんが、私を好きになってくれれば、私の記憶も消せない筈よ。
だって私、テツさんを忘れたくないもの。
「ちょっとまって、喋らないのには、条件があるの。」
「な、なんだここで俺を脅すのか?」
「条件は簡単よ。私と結婚すること。」
「なん、それ、本気だったのか?」
やっぱり、本気だと思ってくれてないのね。
「冗談だと思ってたの?」
「そうだ、すまん。」
「で、どっちなの?結婚するの?それとも私にバラされるの?」
と言ったらテツさんの顔がちょっと怖くなった。
「選択肢が2択だと思わない方が良い。」
「どういうこと?」
「俺が真美子を監禁するとか殺すとかして、喋らせないっていう手もある。」
脅しなの?でもいいわ。よく考えれば、テツさんに助けてもらった命だもの。テツさんが私をどう使っても。
「・・・いいわ、それでも、ただ、もし私を殺すんだったらその前に抱いて。処女で死にたくないもの。」
テツさんは呆れた顔をした。
「わかった。降参だ。」
「じゃあ結婚してくれるの?」
「えーっと、俺はいずれこの世界を去る。結婚しても居なくなるぞ。」
「いついなくなるの?」
「分からない。時が来るまでだ。10年とか30年とか・・」
30年とかあれば十分に幸せになれるんじゃない?
「それじゃ30年いてください。それで我慢します。もしくは連れて行って下さい。」
「もう一つ問題がある。」
「なに?テツさん。」
「俺はたぶん不老だ。年を取らない。」
それって、私が皺くしゃになってもテツさんはいまのまま?そうすると、若い子に取られちゃうわよ。
でも私を騙す嘘とか・・・・ああ、こんな時に真偽眼が役立たずなんて・・・・・
「え、なにそれ卑怯よ。それ本当なの?」
「いや卑怯と言われても。本当かどうかはまだ、長年生きていないから分からない。」
なにかいい手はないの?そうだ!魔王を倒せば願いが叶えられる。”不老”も夢じゃない。
「そうよ。私が勇者のミッションクリアして願いを叶えて貰って”不老”になればいいんだわ。」
「なんでそうなる。」
「だってあなたと一緒に生きていくには、それが一番いいじゃない。」
「いや、間に合ってるって言ったら?」
なのよそれ、私のこといらないの?
「泣くわ。」
テツさん困った顔をしてる。
「本気なのか?」
「本気よ。」
「・・・・俺には婚約者がいる。マイラっていうんだ。その子を探して次元を旅する途中なんだ。内緒だけど。」
すごく嘘くさい。
「テツさんが不老なら、テツさんがたどり着くころまでに、その人はもう年で亡くなってるんじゃない?」
「たぶん、マイラも不老だ。それにマイラのお腹には俺の子がいた。」
な、衝撃の真実。
「で、でも30年もほったらかしじゃ、いい人出来ちゃうんじゃない?」
「・・・・」
あ、落ち込んじゃったわ。ってことは、これ本当の話なのね。
でも、もう後には引けないわ。
「ごめんなさい。その2番目でもいいから、私を妻としてください。」
「・・・2番目はほなかって子なんだ。」
なな!2番目もいたの?
「まさか3番目もいるの?」
「いや、いないけど奴隷とメイドが一人づつ。」
なにそのハーレム!もしかしてテツさんてヤリチン?でも、私に手を出さないわね。
それよりも、その次元に帰れるかどうか分からないわよね。チャンスはあるわ。
「テツさんその次元に帰れる保証はあるの?」
「・・・分からない。早くても数百年、それでだめなら何千年かかるか想像もつかない。」
随分とそのマイラさんに会いたいのね。やけちゃうわ。
でも”不老”になって、数百年も一緒に居られれば私としては満足じゃない?それに長年連れ添っていれば、情も湧くってものよ。
「テツさんマイラさんと会うまででいいです。私を妻として下さい。」
「・・・・・分かった。」
よし、あとは不老だわ。
「それじゃ、勇者として強くなって魔王を倒します。”不老”めざして。」
「やっぱりそうなるのか?」
「はい。では、テツさん、魔法を教えて下さい。私生活魔法しかできないんです。」
「え?いままでどうやって戦ってきたの?」
「魔法はパーティの人に任せてました。私は切るだけです。」
テツさんは頭を抱えてしまった。そして、私に向き直った。
「真美子、魔法はイメージだ。俺はそれで魔法を使っているんだ。」
・・・・・なに?その感覚的過ぎる説明は。
「えっと、わからないのですけど。」
「そうだな。例えば、手を出して、ここに熱い炎の塊を思い浮かべると。」
とテツさんの手の平から小さなファイアボールが浮かんできたわ。これ無詠唱よね。
「じゃあ真美子、やってみて。」
「は、はい。」
「うーん!うーん!」
と私がやってみるが、全くできなかったわよ。
「テツさん。出来ません。」
テツさんはため息をついてから言った。
「そうか。真美子、魔法の呪文なら魔法は発動できるのか?」
「ええ、ただ、発音が悪くて、簡単な呪文の生活魔法しか出来ないの。」
「魔法の先生に教わったりとかした?」
「ううん。なんか城の魔術師の教官はいやらしいので教わらなかったの。」
「そうか。魔法の家庭教師とかは付けられないのか?」
そうね、きちんと魔法習わなくちゃね。そうだ。
「テツさん、魔法騎士育成学園っていうのがあるんだけど、そこで魔法とか剣術とか習うっていうのは?」
「それはいいアイデアだな。でも、今までなぜ行かなかったの?」
「学費が高いからよ。国から支援を受けている愛美さんは通ってるわ。」
「真美子は、そのお金あるのか?」
「私とテツさんがダンジョンとかで稼げばすぐじゃない。それに私が強くなれば、荻原光と間藤真紀羅の復讐も帰り打ちに出来るわ。」
「そうだな。」
「ええ、それに夫婦ですもの。一緒に稼ぐのは当然よ。」
「じゃあ今夜からエッチOKだよな。」
え、そこに来るの?でもまだ私処女だし、・・・・・なんかやり逃げされたらいやね。本気で転移とか使われたらテツさん探せないもの。
そうね。テツさんが私にメロメロになってもらえばいいのだけど、厳ししわね。
「えーと、私がある程度魔法を覚えてからじゃダメ?」
と甘えた声で言ってみたの。
「さっきはすぐやらせてくれるようなこと言ってなかったけ?」
くっ!覚えていたのね。
「そ、それじゃテツさんが私をもっとロマンチックに口説いたらいいわ。」
「わかったよ。」
ということで、明日からダンジョンに潜ってレベルアップと学費稼ぎをする事になりました。
同時に、私が強くなれば、荻原光と間藤真紀羅の復讐も帰りうちに出来るので、一石二鳥よ。