5 真偽眼持ってることがばれる
あの戦いの場所を去って、私とテツさんは、かなり離れた喫茶店にいた。
「真美子さん、あの2人、ついやっちゃったんだけど。どうしよう。」
とさっきまで無口でカッコよかったテツさんは、台無しなことを口走った。
夢見る乙女のままでいさせてくれれば、今夜抱かれても良かったのに・・・・・・。
そんな情けない顔で言わないでよ。
「そ、そんなこと、テツさんがやってしまったのだから、しょうがないじゃない。もう。」
「やっぱり、復讐とか来るかな?」
「たぶんね。テツさんは、復讐が怖いの?」
「ああ、真美子さんを守ることを計算に入れると厄介なんだ。」
・・・ああ、私への復讐も考えに入れてるんだ。台無しって言ってごめんなさい。
「でも、テツさん自体は復讐されても問題ないわよね。」
「ああ、俺1人ならな。」
そうね。私を守れればいんじゃない?
「だったら私がテツさんといつも一緒に居るっていうのはどう?」
「それもいいが、俺の理性がもたない。それに、抱いてない女を守るのは割に合わない。」
あ、本音が出たわね。まあ、確かにエッチな事してないものね。
『させてあげてもいいかな。』と思ちゃったわ。
でも、エッチだけで逃げられるのも嫌だし。・・・そうね。結婚相手ならエッチOKよね。
「それじゃ、私とテツさんがその、け、結婚するっていうのはどう?そうすれば、その、エッチなことしてもいいわ。」
いきなり結婚って重かったかしら。
ていうか、これってプロポーズ?私何言ってるの?
私テツさんの事・・・・好き?
と思いながらテツさんを見ていると、何か考え込んでいる。
「・・・・・・・・」
・・・・・なによ黙っちゃって。こんな若い女性に言い寄られてるのよ。
「テツさん、なに黙ってるのよ?もしかして魅力ないの、私。」
「いや、その魅力はあるんだが、その打算的なものがあって、俺と結婚するとか言ってない?結婚すれば俺に守ってもらえるとか。」
「・・・・・なによ。テツの馬鹿。」
・・・・確かに打算的なところも無い訳じゃないけど、テツさんなら私・・・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
と気まずい状態になってしまった2人に救いの言葉が放たれた。
「あら!ここにいたのね。真美子さん、探したわよ。」
と言われて、私はその人物を見た。
元クラスのお嬢様の、伊集院愛美さんだった。
この愛美さんは、魔法の才能が高く、もう高レベルの魔法まで使える。
そのため弱小国のはずの国なのに手厚く保護されている。
しかも凄い美人。スタイルも抜群。縦ロールの髪型がちょっと私的にはNGだけど。
凄い不平等だと言いたいけど、私なんか実は魔力はあっても魔法は生活魔法レベルで、それ以外全然使えなかったりするの。落ちこぼれじゃ国もお金出さないわよね。
「愛美さん、私を探していたのですか?」
「ええ、正確には、さっきの乱闘を見ていまして、その隣の殿方を探しておりましたのよ。」
「ええ?テツさんをですか?」
「ええ、そうよ。」
「何でですか?」
「わたくしのパーティにスカウトしに来ましたの。」
・・・・・マズい。愛美さん美人だから、私がテツさんを繋ぎとめておくのは厳しい。それにテツさん、もうデレデレと愛美さんを見ているわ。
「こんにちわ。愛美さんていうのですか?俺はテツと言います。」
とテツさんは、愛美さんの手にキスをして、挨拶を始めたのよ。きぃー!
「これはテツ様。わたくしは伊集院愛美と言います。私は、国の勇者の中では、魔術が一番得意ですのよ。」
「勇者?」
「ええ、勇者ですの。」
・・・あ、マズい私、テツさんに勇者ってこと話してないわ。
それに鑑定魔法があってもたぶん勇者かどうかは分からないの。
だって、私や私のパーティだったメンバー、そして荻原光と間藤真紀羅のパーティメンバーのように、国から召集を嫌う者は、日ごろから勇者という事を隠すために、性能の良い一部認識阻害認識変更アイテムを使っているから。
そのアイテムで、勇者の表示と能力および持ち物を誤魔化しているわ。
「愛美さん、勇者って、何人もいるんですか?十人くらい?」
「いいえ、最初は、35人と、1人いましたわ。でもそうね、何人か死んでしまったわ。もう20人亡くなったのでしょうか?ねえ、真美子さん。」
「・・・・そうです。はい。」
「何で、真美子さんが知ってるの?勇者の関係者?」
「あら、真美子さんテツ様に言ってなかったのですか?あなたも勇者の1人って事を。」
「なんだって?真美子も勇者?」
テツさんはとても驚いた顔をしている。
そうね。この際だからテツさんに話そう。
「テツさん、そう、私も勇者。クラス全員転移して全員勇者になったの。今からすべて話すわ。・・・・・・」
と以下の内容をテツさんに話した。
①いじめられっ子の吹雪裕也がクラスで魔法陣を作動。
②クラスのみんなと英語の先生は、その転移に巻き込まれて、異世界神の元へ転移。
③クラス全員が勇者になる。誰かが魔王を倒す事で、その者の願いが叶えられる。
④勇者はLV1から始めて魔王を倒すミッションになる。
⑤能力を3つまでもらえる。全員勇者の腕輪を持っている。
⑥神様との連絡は、魔王を倒して”魔神の欠片”を手に入れないと連絡できない。
⑦期限は、魔王か勇者達どちらかが死ぬまで。つまり、何十年でも問題ない。
⑧補足で、この事件の発端となった吹雪裕也を、クラスの数人がしめようとしたが転移で逃げられた。
・・・・なんかテツさん顔色悪いわ。
「し、質問だが、いいか?真美子さん。」
「なに?テツさん。」
「さっき、俺が倒した2人って、勇者か?」
「ええ、勇者よ。鑑定魔法を使っても、2人は一部認識阻害認識改変アイテムを使っているから分からないわ。私もそのアイテムを使っているの。」
「か、神は、何処まで勇者達を見ている?一般人に勇者が殺されたり倒されたりした場合、なにか神に伝わるか?」
・・・・・テツさん額に汗が出ている・・・・・・神様に怯えてる?・・・・・
「クラスの人、あ、もう勇者って言った方が良いわね。勇者は結構死んだわ、けど特に何もないと思う。そうね、最初盗賊に殺された勇者もいたけど、その盗賊も捕まってないわよ。」
「・・・そうか、それは良かった。」
・・・・・・なにか隠してるわね。
「テツさん、神様となにかあったの?」
「いいや、何もない。」
・・・真偽眼が嘘だと言っているわ。
「神様に、何かわるいことしたの?」
「俺の方からはやってない。何もないのに何故聞くんだ?真美子さん」
・・・真偽眼が本当と言っているわ。
「テツさん、神様から、狙われてるの?」
「・・・・・」
「真美子さん、もうおやめなさい。真偽眼をそんなに使って、テツさんが困ってるじゃない。」
「な、愛美さん、それ言っちゃダメ。」
「なに!真偽眼だと!真美子それどいういう事だ。」
・・・・・テツさん怒っちゃったよ。そうよね。心読まれているようなものだしね。
「テツさんごめんなさい。私、実は真偽眼を神様から能力として貰っているの。質問に答えてもらい正しいか間違っているか、つまり○か×かが分かるの。」
「なるほどな。俺を今までそうやって、判断してたわけだ。」
あ、テツさんの私を見る目が嫌、そんな目で見ないで。
「ごめんなさい。でも、テツさんはその、いままで会った人で一番優しくて、強くて、その、信頼できる人です。」
あ、なんか涙腺が緩んできた。涙がこぼれてる。
その私の様子を見た愛美さんは
「真美子さん、テツ様、込み入ってしまっているので、わたくしはこれで失礼するわ。それからテツさん、わたくしのパーティに入って頂けるよう心からお待ちしますわ。その気になったら城に来て下さい。それじゃ。」
と言って去ってしまった。
・・・・・・・逃げたわね。
「なあ真美子、その真偽眼て、○か×なんだよな。」
「ばい。ズズっ!」
と私は泣きながら答えたので鼻水をすすっちゃった。ああ、みっともないわ。
「ほれ!」
とテツさんは、ハンカチを出してくれた。
この間の女性ものだ。洗ってある。
「真美子、ちょっと宿屋に行って話そう。ここじゃ誰かに聞かれるから。」
「わかったわ。テツさん。」
と私はテツさんの宿屋の部屋に付いて行った。
どうなっちゃうのかしら私。でもテツさんなら何をされてもいいわ。