56 人魚の肉
私とテツさんは、1週間ほど暇なので”勇者試練のダンジョン”でレベル上げをしたの。
吹雪裕也が結構レベルアップしてたので、猛特訓になっちゃたわ。
1週間後、公園の隅で吹雪裕也と落ち合ったら、女性の取り巻きが6人も出来てたのよ。
聞いたら、全員愛人でも構わないそうよ。
イケメン恐るべし。
テツさんも口を開けたまま羨ましそうに見ていたわ。
早速、人魚の国の近くの浜辺に直行したの、有料転移ゲート魔法陣を使って飛んだわ。
もちろん、取り巻きの女性は置いて行ったのよ。
◇
人魚の国に近い浜辺は、まるでリゾート街だったわ。
南の観光地の”ワハイイ”と違って、この浜辺は大人の町なの。
らぶなホテルやカジノもあるわ。
だけど浜辺を歩いているとビックリなの。
だって、人化した人魚がいっぱい歩いているんだもの。
しかも、逆ナンしている。イケメン限定みたいけど。
人魚は種族繁栄のため、子種を求めているの。
この世界の人魚は、人化が出来てその人化の持続時間は12時間なの。
魔法で化けるみたい。
人族との区別は耳の形よ。
この世界の人魚は人化しても耳に水かきが残っているの。
「それじゃ、師匠行ってきます。」
と吹雪裕也は、自信ありそうなドヤ顔で人魚をナンパに行ってしまったわ。
テツさんもキョロキョロと美人の人魚を見ていたの。
テツさんもナンパに行きたい感じね。
でも、私が腕を組んでいるので行けないのよ。
吹雪裕也とは、明日午前中10時頃に、この浜辺で待ち合わせよ。
◇
私とテツさんは、ブルーダイアモンドとは別に、人魚の肉を食べた場合の不老不死について調べに向かったの。
だって、不老不死になれば、私が魔王を倒さなくても、不老を手に入れることが出来るじゃない。
「情報屋の話だと、この路地の裏の店だな。どうする?真美子は一旦帰って俺一人で行くか?」
「ううん、付いて行くわ。サングラスとマスクそしてかつらを付けるから、顔とかばれないわよ。」
「そうだな、でも注意してくれよ。真美子に何かあったら俺・・・」
「心配性ね。もう私LV1711だし、索敵魔法とかも覚えたし、大丈夫よ。」
「そうだな。それじゃ行くよ。」
「はい。テツさん。」
テツさんの仕入れた情報によると。その店には人魚の肉が売っているみたいなの。
私達はマスクとサングラス、銀髪のかつら、そして上級の認識阻害ペンダントを付けて、路地裏のさびれた店に入って行った。
店内は一見お土産であったが、テツさんが何か証文を店員に差し出すと、店の奥の部屋に案内し始めた。
「どうぞこちらに。」
私達は、その店員に付いて行き、奥に部屋に入った。
奥の部屋はお風呂みたいな水槽があって、そこに人魚が泳いでいたの。
よく見るとその人魚たちは、手や足が欠損していたり、胸の一部の肉が無くなったりしていたわ。
そして、全部の人魚が奴隷紋を刻まれていたのよ。
「だんな、先に言っておきますが、体に合わない場合は、そこにいる娘みたいな体になりますぜ。また、不老は手に入れられますが、不死に関しては、首を切られたり心臓を潰されたりした場合は無理です。もちろん病気もかかります。」
水槽の脇に座っていた娘が立ち上がって、マントと頭巾を取って顔と体を私達に見せた。
「わ」「な」
と私達はその娘のただれた皮膚と頭髪の半分抜けた頭に驚いた。
「店員さん、あの状態は回復魔法でも治らないのか?」
「ええ、回復魔法も回復薬も効きません、また呪詛の類じゃないので解呪も効きません。」
「それで、良く人魚の肉が売れるな。」
「ええ、そりゃ、5人に1人は効きますので。」
5人に1人ですって、それ以外あの醜い姿になっちゃうの?それなら使いたくないわ。
「で、人魚の肉は何処にあるんだ?」
「目の前で御座います。新鮮な人魚から切り取ります。」
何それ、ひどいわ。でも、殺さないだけましなの?
「そうか、それで、水槽の人魚は、欠損とかケガとかしているんだな。」
「ええ、そうです。」
「回復魔法とかで治療しないのか?」
「それは、欠損がひどくなりすぎてから治療に行きます。それにこの商売ですからね、最上級回復魔法は、口の堅い人物に頼むので、更に高額になってしまいますから、なるべく治療してないんですよ。」
「なるほど、治療はしているんだな。」
「はい。」
治療してるってそれじゃ生き地獄じゃない。
私はテツさんに小声で言った。「テツさん止めましょうよ。これちょっとひどいわ。」
テツさんは小声で、「ああ、止めるけど、ちょっと待ってね。」と言った。
「店員さん、ちょっと人魚とその子を見せてくれないか?あと、ちょっと結界を張るけど、目をつぶってくれ。」
とテツさんは店員にお金を少し渡した。
「はい。どうぞ。」
と店員が言うとテツさんは、ただれた皮膚の子に近寄り、手を触れた。いつの間にか部屋全体に結界が出来ていた。
この結界は何なのかな?でも、テツさんがする事だじゃら何か意味があるんだわ。それに、治療できないか見ているのね。
しばらくするとテツさんは人魚のところに行き同じく手を触れた。
そして部屋の結界が消えたあと、テツさんは店員に言った。
「今回は遠慮しておく、見物料はいくらだ?」
「はい。そうですか。では見物料は、白金貨1枚でございます。」
高すぎるわよ。まあ、肉を買った場合は白金貨50枚だけどね。
「店員さん、人魚を最上級回復魔法で治療すれば料金をまけてくれるかな?」
「へ?最上級回復魔法出来るんですか?だんな。」
「ああ、出来る。」
「それでしたら、全部の人魚を治してくれたら、料金はタダでいいですよ。」
「よし、乗った。」
テツさんは全ての人魚を最上級回復魔法で治したのよ。
「これは凄いです。だんな。もしよかったら、また、治してもらいたいほどですよ。」
「それじゃ。帰るよ。」
「あ、だんな、この店のことは、」
「ああ、大丈夫黙っているから。」
「はい、ありがとうございます。またのお越しをお待ちしています。」
と私達は店を後にしたの。
尾行が付いて来たので、テツさんは私を抱いて転移で飛んだわ。こうやって逃げるのは、テツさんと打ち合わせていたのよ。
これで、追って来れないわね。テツさんの転移は痕跡が残らないもの。
でも、念のため数回転移を繰り返し、途中で変装は解いたわ。
そして私とテツさんは、一気に転移で一旦中央国家の宿屋に戻ったの。
◇
宿の部屋で、一息ついた私はテツさんに話した。
「人魚の肉はダメだったわね。5人に1人だけ成功じゃ嫌だわ。それに、人道的にも使いたくないわ。」
「そうだな。やっぱり、魔王を倒すことがいいかな?」
「そうね。魔王を倒しましょう。」
「それじゃ、レベル上げだな。」
レベル上げはキツイけど仕方がないわね。
「そ、そうね。そう言えば、テツさん、人魚に最上級回復魔法はどうせかけるつもりだったんでしょ。」
「ああ、そうだな。お金関係なしにね。」
「でも、あの人魚可哀そうだったわね。」
「ああ、でもあれを店から助けたら、その関連の組織をすべて潰さなきゃならないからな。」
「そうね。厄介だわね。」




