40 魔族が攻めて来た 1
<真美子の視点に戻ります。>
私とテツさんは宿屋に戻った。
「テツさん何よ。あの仮面の色は!」
「いいセンスだろ、あれなら顔もばれないし。」
「ピンクは無いでしょ、普通は赤と黒でしょ。」
「いや、真美子にはピンクがいいなと思ってさ。」
「もう。次は赤も用意してよ。」
あれから、ピンチになった吹雪裕也と少女を助けたのよ。
でも顔がばれると嫌だから、テツさんのアイデア通り、仮面をつけて助けたの。
でも、仮面の色がピンクなのがちょっとあれよね、赤のほうが正義の味方っぽいじゃない。
◇
次の日、武闘大会会場で愛美の試合を観戦しようと、私とテツさんが観客席に座っていたら、吹雪裕也が私達を見て近寄ってきたの。
知らんぷりを通して、観客席で座っていようとしたのだけど、吹雪裕也は私達の周りをウロウロした後、私に前に来たわ。
「あ、あの、昨日オレと会いませんでしたか?」
と言ったので、
「え、いえ、人違いです。」
と答えたわ。そうしたら、
「昨日の少女は、無事家に送り届けました。ケガも治したので両親は喜んでいましたよ。」
とニコッと笑いながら吹雪裕也は言ったの。そのイケメンの笑顔は、つい、私に返事をさせたわ。
「それはよかったわ。あの後・・・・、げほん、げほん。」
テツさんは呆れた顔をしていた。
「やっぱり、そうでしたか、では隣の男性の方もあの時の方ですね。」
「人違いだ。少年。」
「そうよ。人違いよ。」
「大丈夫です。誰にも言いませんから。オレは魂のオーラで人物を識別できる能力があります。」
なんてこと、そんな能力聞いたことが無いけど、それならバレるわよね。
「え、そうなのね。」
「それは珍しいな。俺は何色だ。」
「女性の方がピンクで、男子の方が黒です。」
なにそのピンク発言。私、魂までピンクなの?魂って白とか黄金色とかじゃないの?
「そうか、やっぱり、真美子はピンクなんだな。マスクもピンクで決まりだよ。」
「私のマスク、ピンクで決まりなの?」
次は赤を付けようと思ってたのに。
「嘘です。オーラの色なんか見えません。ただ髪形と背格好が似てたもので、決め手はその剣です。その剣は市販品ではありませんから。」
「え?」
「な?」
やられたわ。うまく引っかかったわよ。真偽眼使っておけばよかったわ。しらを切ることで頭が一杯だったわ。
「という事で、昨日の方達ですね。」
「そ、そうよ。」
「ああ、そうだ。だから誰にも言わないでくれ。」
「言いませんよ。命の恩人なんですから。それに、以前小さな町の魔族狩りの時も会いましたから、その剣が記憶に残ってるんですよ。」
そう言えば、あの時も会っていたわね。あの時は私達に感心が無いから、覚えてもいないと思ってたのだけど。
「それから、これ、あの少女の家族からです。貰ってください。」
と吹雪裕也はお金とお菓子を私達に渡した。私とテツさんは小声で相談して返そうと思っていたら、
「それじゃ。試合があるので。」
と吹雪裕也は行ってしまったの。
話してみたら丁寧な口調で、魔族狩りの時とは違ってたわ。もしかしてあれが本当の吹雪裕也なのかもしれないわね。
◇
そして2日が過ぎ、今日は決勝戦。
昨日、愛美は奮戦したが、前年度優勝者ロックジャガーに敗れてしまったわ。
そして、今日は決勝戦。ロックジャガーLV1241対吹雪裕也LV718なのよ。
観客席には、私とテツさん、愛美、アン、ミミが並んで座っているわ。
「テツさん、どっちが勝つかしら?」
「そうだな。レベル的にはロックジャガーだが、吹雪裕也は何かの能力があるからな。」
「そうね。今までも、挌上のレベル相手に勝ち進んできたのよね。」
「あら、テツ様達は、あの吹雪裕也を随分と評価しているのですわね。」
「ええ、そうよ。だって、実際に勝ち進んでいるじゃない。愛美さんは、まだクラス転移でのわだかまりがあって、吹雪裕也にいい印象が無いからじゃないの?」
「まあ、そうですわね。」
しばらくして、ロックジャガーと吹雪裕也が入場して来たのよ。
場内が歓声が響き渡ったわ。
歓声が静まり、2人の紹介がアナウンスされ始めた時、
バアアアガアアンン!
と大きな音がして大地が揺れたの。
「爆発ね。何処から?」
「南の方だな。」
「そうね。南よ。」
「そうだにゃ。」
「どうするよ。」
「様子をみよう。」
私達と同様に観客、選手その他係員は驚き、少しづつ騒ぎ始めたわ。そして、
ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!ウヲー!
と魔族来襲の警報が鳴り響いたの。場内は騒ぎになり、避難する為に人々が出口に殺到し始めたわ。
「テツさん、さっきの警報って、魔族来襲の警報よね。」
「確かそうだな。愛美さん、状況の確認をお願い出来ませんか?」
「はい、テツ様、大会の係員の人に連絡を取ってみます。」
と愛美は魔法通信機で連絡を取り始めた。
そこに、アナウンスする人が全体に拡張音声魔法で声を伝えた。
「ただいま確認中です。皆さまはその場でお待ちください。」
と場内のパニックを防ぐための処置がなされたの。
しばらくしてから、また拡張音声魔法で声が響いた。
「町の南門に魔族が襲撃に来ました。ここは、まだ安全なので、皆さま、落ち着いて避難してください。」
それから、避難誘導が始まったわ。どうやら、本当に魔族が来たみたいね。
愛美が魔法通信機で係員と会話が終わり、その内容を話してきたわ。
「皆さん。魔族が来襲して城の兵達が交戦中だそうよ。とても強力な魔族で苦戦中みたいわ。」
「魔族は、どのくらいのレベルと数だ?」
「はい。テツ様、中級クラスが2、下級クラスが4、あと認識阻害で不明1ですわ。その中級魔族が結構強いみたいですわ。」
それなら十分に中央国家で対応できそうね。
「そうか、その不明1で戦局が動くな。」
「はい、それで、この大会に参加している実力者に魔族撃退のために協力してほしいとの要望が出ていますわ。」
「愛美さんはどうするんだ?」
「はい、私達は、これから自国に連絡を入れてどうするか確認いたします。」
そうよね。愛美は小国の代表だから、気軽に動けないわ。でも、中央国家の戦力に任せればいいじゃないの?
「その大会実力者の集まりはどこだ?」
「え、テツさん行くの?」
「ちょっと、様子見だけだよ。真美子。」
まあ、テツさんが戦えば、すぐ終わるんだけどね。
「テツ様、大会実力者は大会運営の建物の中に集まることになっていますわ。」
「そうか、愛美さん、俺と真美子はそこに向かうよ。もし、連絡がある場合は魔法通信機でしてくれ。」
「わかりましたわ。」
私とテツさんは、大会運営の建物に向かった。
◇
建物の外には係りの人が立っていた。
私とテツさんは、大会出場じゃないので中に入れずにウロウロしていたら、吹雪裕也が来た。
「あ、こんにちわ。お2人さん。」
「あ、吹雪裕也さん。」
「あれ、オレ名前いってないけど、あ、そうか試合で名前バレバレだっけ。」
あ、あぶない、そう言えば自己紹介、お互いにまだだったわ。
「吹雪裕也さんは魔族撃退に協力するの?」
「ええ、オレ勇者だから。」
へえ、凄い、勇者って言って自分から参加する人ってなかなか居ないわよね。
「少年、えっと、吹雪裕也君だっけ、レベル的に、中級魔族と戦える強さじゃないが大丈夫なのか?」
とテツさんは、心配して吹雪裕也に忠告したわ。そうよね、中級魔族はLV1100を超えるもの。
「大丈夫です。隠してますけど能力があるので、中級魔族なら倒せます。実際にLV1200クラスの魔族は倒しました。それから、”裕也”と呼んでください。君づけも無しで、おじさん。」
へえ、吹雪裕也はLV718なのに、それでもレベルを覆せる能力があるのね。
「それは凄いな、裕也。俺は”テツ”だ、おじさんはやめてな。」
「わかりました。テツさん。ところでそちらの女性の方は?」
「あ、私は、真美子よ。」
「それでは、テツさん真美子さんは、参加者じゃないと思いますがどうしてここに?」
「それは、気まぐれかな?なあ真美子。」
「ええ、そう気まぐれよ。」
「そう言う事にしておきます。では、オレと中に入りますか?俺と一緒なら入れると思います。」
吹雪裕也は、私達がウロウロして入れない所を見てたのね。
「それじゃ、裕也、お言葉に甘えて一緒に入らせてもらっていいかな。」
「ええ、では、テツさんと真美子さん、一緒に。」
と私達は、建物の中に入っていった。




