2 一夜
私とテツさんは川辺の林の中に荷物を探しに入った。
「こいつは凄いな、ゴブリンが沢山死んでる。真美子さん、君が倒したのかい?」
「ええ、私とあと、死んでしまったけど私のパーティ3人よ。」
「・・・そうか。その3人には墓を作らなきゃな。」
「・・はい。」
始めに、眼鏡を掛けた三つ編みの沙紀を見つけた。腹に穴が開いていて既に死んでいる。
私は、苦痛で見開いた目を閉じてあげた。
次に弓を持ったまま腹を裂かれている有美香を見つけた。有美香も目を閉じてあげた。
最後にプロテクターを纏った由和を見つけた。体中穴だらけだった。私は由和の目を閉じてあげた。
その後、由和の近くで落とした荷物を回収して、テツさんにお金を渡した。
友達の3人はゾンビにならない様に火葬して埋めた。
私は、いつの間にか涙が出ていたみたい。
テツさんがハンカチをくれた。
「はい、これどうぞ。」
「あ、ありがとう。・・・・・?」
と手に取ったハンカチは女性ものだった。
私はありがたく使わせてもらったの。ついでに鼻もかんだわ。
・・・・・・・
友達の3人の埋葬が終わるころには、日が暮れていた。
「テツさん、今日は3人の埋葬まで手伝っていただいて、有難うございました。」
「ああ。」
とテツさんは気まずい顔をして、短く答えただけだった。
テツさんて、結構いい人ね。普通は手伝ってくれないわよ。
「テツさん、少し歩いたところに洞窟があります。そこで、私は野営しますが、何か良い方法がありますか?」
「えーと、ちょっと、この辺りはまだ慣れないので転移とか使えない。俺も野営に加わっていいか?」
転移魔法が使えるのね。やっぱり突然現れたのは転移魔法だった訳ね。
「ええ、そのつもりです。だって一人じゃ寝ることできないじゃないですか?」
「ああ、それもそうだな。でも、今日初めて会った男と2人で、野営なんて良く出来るな。」
なんか、ビッチあつかい?ちょっと嫌だわ。
「えーと、始めに言っておきますけど、私、絶対貞操帯持っているので犯せませんから。」
と言って様子を見たわ。でも、真偽眼を持ってることは黙っているつもりよ。
「絶対貞操帯?そりゃなんだ?」
と本当に分からなそうな顔でテツさんは言ってきた。
「この世界の住人なら知らない筈がないのだけど。テツさん何処の田舎生まれなの?」
「そうなのか?・・・・まあ、かなりど田舎なんで教えてくれ。」
ワザと言ってるのかしら?いま魔力が勿体ないので真偽眼使わなかったけど。もしかして、私が恥ずかしがって説明するとこ見たいとか?
「・・・そ、その女性の純潔を守るための見えない貞操帯で、使ってる女性が許可しないと性行出来ないのよ。」
「ほう、そんなものがあるのか?」
「以前、異世界から来た。女性の勇者も使ってたのよ。」
「なるほどな。でも、その女性が拷問されて、許可を出せば出来るんじゃないか?」
私はギョッとした。
「そ、それはそうだけど、テツさん、私を拷問するの?」
この時ばかりは、回復したてのMPを使い真偽眼を使ったわ。
「いや、言ってみただけだ。俺は合意でしかしないから安心して、真美子ちゃん。」
嘘では無かったので安心したの。
まあ、やったことないけど、最悪お口でしてあげるわ。命の恩人だし。好みだったら考えなくもなかったのだれど。
何故一緒に野営かって言うと、回復魔法でいくら傷が治ったとしても、精神的には疲れているの、だから寝なくちゃいけないの。
町までテツさんと交代で睡眠をとりながら帰らないと、疲れて魔物に殺されてしまうわ。
「・・・・・分かったわ。でも”ちゃん”付けは止めて。」
「・・・・ああ。真美子さん。」
◇
洞窟に向う途中で、魔物が出てきた。
毒大ガエルンが現れた。 カエルの大きい魔物よ。
マズいわ。私はさっき剣が折れて武器のリーチが短く、毒を持ってるこの魔物には向かないわ。また、魔力が足りないので”光の剣”も出せない。
テツさんは丸腰。
あ、そう言えば、テツさん、ゴブリンナイトどうやって倒したの?
「テツさん逃げましょう!」
と言ったのだけど、テツさんは、手を毒大ガエルンに向けた。
サシュウンンンン!
がろわー!
と風の魔法が出て来て毒大ガエルンは、3つに解体され更に風の刃は後ろの岩を切り裂いた。
「凄い、テツさんて魔法も使えたのね。」
「・・・普通エアカッターくらい冒険者なら使えるだろ?」
「いえ、使えない人も多いし、そもそもこんな威力のあるエアカッターは見たことありません。しかも無詠唱だし。」
「そ。そうか。」
とテツさんは何かマズかったような顔をして答えた。
気が付くと、私はそんなテツさんを見つめていたの。
その後も、数匹魔物が現れた。
その度にテツさんが倒してくれたわ。
凄い!高レベルなのかしら。
それに、よく見ると結構体格が良いいわ。
30代くらいかしら?でも、18才の私から見たらおじさんよね。
◇
その夜洞窟にアイテムで結界を張り、たき火をしながら夕食を取っていた。
テツさんは無言で食べていた。時々、何か考え事をしてるみたい。
しかし、この異世界、西洋人顔が多いのにテツさんは日本人顔、もしかして、同じ日本からの異世界転移者?
「テツさん、テツさんって私の故郷の人に顔が似てるけど、もしかして、日本て知ってる?」
テツさんは日本って単語に驚いたみたい。
「真美子さんは日本が故郷なのか?」
「ええ、テツさん日本知ってるの?」
「・・・・・・いやあ、俺の親父が日本から来たって言ってたからさ。いろいろ親父から日本については聞いてるんだよ。」
嘘ね、真偽眼が反応しているわ。でもそう言う事にしておきましょう。
あ、またMP無くなっちゃったわ。やっぱり寝ないとMPちょっとづつしか回復しないわね。
「そうだったのですか。てっきりテツさんも日本人かと思って。」
「そうすると、真美子さんは異世界転移者?ですか?」
あ、マズい墓穴を掘ってる。転移者だという事ばれたわ。最近は勇者だという事隠していたのだけど。
そう、勇者だと、魔族が来たとき矢面に立たされるから。
そのせいでクラスの何人か死んだわ。
「・・・・そうだけど、私が転移者だという事は黙っていて。」
「・・・・分かった。けど、そうすると神様からなにか願いの対価を払わなくちゃいけないんじゃないか?」
詳しわね。やっぱり転生者か転移者ね。
「ええ、でもこれ以上は内緒よ。」
「そうだな、分かった。お互いそこまでの仲じゃないからな。」
と冷たい表情でテツさんは言った。
あ、そんなこと言われたら、テツさんにこれ以上聞けないじゃないの。
「えーと、テツさんの態度次第で、話すかもしれないわ。」
「そうか。」
とテツさんは、ニッコリ笑って食器を片付け始めた。
・・・・・・・・
夕食が終わって、テツさんが言ってきた。
「真美子さん、先に休みなさい。疲れただろう。」
と言ってくれた。
なんかテツさん余裕がある。顔に似合わず結婚してるかも。
まあ襲ってきても、私には絶対貞操帯もあるしね。
・・・・・
私は横になった。
テツさんは見張りをしている。
なんか急に眠気がしてきちゃったわ。
・・・・・・・
・・・・・・・
私はいつになく、明け方までぐっすりと寝てしまった。