12 温泉宿
女子生徒達が乗る馬車の一行は、その後も魔物をに遭遇しながらようやく、目的地の温泉宿へ着いた。
その温泉宿は、温泉宿というより大きなお屋敷に大浴場が付いていた。そして、一部温水プールの様な大きな露天風呂があった。
女子生徒達は馬車から降りた。
「わー広い!」「ようやく、お風呂に入れるわ。」「泳ぐぞー!」「美容にいい湯は何処かしら?」「体の汚れが落とせますわ。」・・・・・・・・・
などなど女子生徒達は口々に言いながら、旅館の中に入っていった。
護衛の私たちも、一緒に旅館内へ向かった。
◇
一応パーティの団体行動を想定しているので、女子生徒の部屋は、2人、3人、3人に分かれた3部屋になった。
もちろんお付きの女性従者も一緒なの。
その3つに分かれたパーティに、それぞれ護衛の女性が一人ずつ付くことになっているわ。
私の仕事は、ジョセファーナ、マリアン、キャサリーリの3人を旅館の部屋内や浴場内の護衛よ。
3人と一緒に、女子生徒の部屋に入ってみると、そこは広くて清潔なベットが並んでいたわ。
とてもじゃないけど、冒険者パーティの訓練を兼ねているとは言いがたいわ。これじゃお遊びね。
「真美子さん、”ジョン”さんって、いつもはどなたに雇われているのかしら?」
とキャサリーリが言ってきたわ。
「えーと、いつもは私と共に、フリーの冒険者をしています。」
「そうなの。”ジョン”さんを私の専属の護衛に雇えないかしら?」
な、これって、強いテツさん(”ジョン”)を見たから、欲しくなっちゃったってやつ?
と思っていたら、ジョセファーナが割って話してきたの。
「ちょっと抜け駆けはずるいわ。キャサリーリさん。真美子さん、私も”ジョン”さんを雇いたいのだけど。」
「あら、ジョセファーナさん順番守って頂けないかしら?」
と2人のにらみ合いが始まっちゃったわ。と思っていたら、マリアンが割って話してきたの。
「”ジョン”さんって、恋人とかいるですか?いないなら紹介してください。真美子さん。」
そしたら、ジョセファーナとキャサリーリもにらみ合いを止めて、私に向き直り興味津々で見つめてきたわ。
え?何?私、テツさん(”ジョン”)と一緒にいるのに恋人扱いもされてないの?
と思いながら、私は言ったの。
「テツ、じゃなくて、”ジョン”は、私の夫です。」
「え?兄弟じゃなかったの?」「え?身元引受人じゃないの。」「証拠はありますの?籍とか入れていますの?」
と3人から言われたのよ。
何でだろう?もしかして、もっとテツさん(”ジョン”)とラブラブして見せつけるべきだったんじゃないの?
「とにかく、夫婦です。籍はまだですけど。」
「なんだ籍入ってないんだ。」「それなら、大丈夫ね。」「籍が入ってないのでは夫婦とは呼べませんわ。」
ぐっ!なんなの?私がテツさん(”ジョン”)の妻なんだから。
私は3人を睨みつけたわ。
コンコン!
「はい!」
女従者の一人がドアを開け対応する。
「”ジョン”だ、真美子いるか?」
と、テツさん(”ジョン”)が、私の名前を呼んだわ。
私は睨むのを止めて振り返ったの。
あ、ここで、ラブラブなところ見せ付けちゃえ!
と考えていたら、ジョセファーナ、マリアン、キャサリーリの3人が私を押しのけて、テツさん(”ジョン”)の周りに集まって質問攻などが始まったわ。
「ねえ、真美子さんと夫婦って本当?」「お金すき?わたしと結婚すればお金もタップリ使えるわよ。」「”ジョン”さん、私の専属の護衛になりなせんか?」
「えーと、いっぺんに言われても分からないので、ひとつづつお願いします。」
テツさん(”ジョン”)は、3人の気迫に押されていたのよ。しっかりしてよ。
「それじゃ私、ジョセファーナからいきます。真美子さんと夫婦って本当ですか?無理やりじゃないのですか?私みたいな女性は好みですか?」
とジョセファーナから言い出したの。さりげなく、自分が好みかも聞いているわ。
「えーと、真美子とは結婚の約束をしています。しかし、まだ結婚していません。無理やりでもありません。ジョセファーナさんは可愛らしいですよ。その柔らかそうなほほも魅力的です。」
「可愛いらしいって、・・ポッ。でも結婚していないのね。」
と、ジョセファーナは照れている。しかしテツさん、なんか私との結婚の件が事務的じゃない?しかも私の前で他の女性を褒めないでよ。もう。
「次はわたしよ。”ジョン”さん、私の専属の護衛になりなせんか?あと、わたしみたいな女性って”ジョン”さんは好みかしら?」
キャサリーリまで、自分が好みかとかも聞いているわ。
「専属の護衛は申し訳ありませんが、お断りします。俺はフリーがいいので。あと、キャサリーリさんは、美人でとても素敵ですよ。そうとても魅力的です。」
「まあ、魅力的なんて嬉しいわ。でも護衛の件は、また伺いますので考えておいてください。」
きー!テツさん、私がいるのよ!なに他の女をべた褒めしてるの?
と私が睨むとテツさんは、気が付いたらしく。アイコンタクトと眉毛の上下で何か言っているようなそぶりをしたの。でもそんなの分からないわよ。
「最後にわたしの番ね。わたし、マリアン。わたしと付き合ってみない?」
と、マリアンは直球で言った。もう私は我慢が出来ずに割って入ったの。
「何言ってるのよ!テツは私のなんだから!」
「真美子、俺は”ジョン”だ。」
「あ、”ジョン”は私のよ。」
慌てて言ったけど、もう遅かったわ。
「もしかして偽名?」「テツさんて言うんだ。」「まあ、テツさという名前でしたのね。」
テツさんは、私の口を押えて、またしゃべれなくしたのよ。今回ばかりは私のミス、大人しくしたわ。
「えーと、みなさんすみませんが、”ジョン”とおよび下さい。そうしないと俺は護衛の仕事を外れますよ。あと、今後も他言無用でお願いしたい。」
「護衛から外れると帰りの訓練が辛いわ。」「わかったわ。だから付き合うの考えて!」「いいわ。貴方がいないと帰りの護衛が不安だものね。」
とりあえず。3人は黙ってくれることになったわ。当然まわりのお付きの従者も黙ってくれるとおもうの。
「ありがとう御座いますお嬢様方。それでは仕事がありますので失礼します。」
私の口をふさいだままで、テツさんは私を連れて部屋を出た。
「ふぐふぐっ!」
「ああ、ごめん真美子。」
「ぷはっー!もういつまで口を押えてるのよ。」
「いやー、なかなかいい口の感触だったもんで。出来れば指を口に入れてたかったよ。」
やだ、指なんか口に入れちゃ、でもテツさんの指が入るの?私の口に。
「もう変な事言わないでよ。それに、テツさんは私と夫婦なんだから、他の女性にデレデレしないでよ。」
「でも、まだ結婚して、・・・・・」
と、なにやら結婚していないとの理由で、不満げな事を言いそうなテツさんを私は睨んだわ。
「テツさんは私と結婚するって言ってくれたじゃない。だから、他の女に色目使わないで。」
「ああ、そうだな、それじゃ真美子、妻としての俺に何をしてくれるんだ?」
「そ、それは、今後色々してあげるわよ。」
「ほう、どんな?」
「いろいろよ。」
もう、確かに私はテツさんに大したことしてあげられてないけど、今後はやってあげるわよ。そう言えば料理もしてあげて無かったような。
「それじゃ、仕事の話だ。真美子、大浴場の準備ができたから3人を連れて風呂に入って来てくれ。」
テツさんは口調を固めに変えて言ってきたので、私もつられて、きちんと返事をしちゃった。
「はい。テツさん。」
そう言えば、仕事の用事でテツさんは私を呼んだんだわ。すっかり忘れてた。
私は部屋に戻り、3人を大浴場に連れて行った。もちろん私は入らないで護衛に徹したわ。
外は男性の護衛が見回って守っていたの。
◇
食事の時間になって、女生徒たちには食堂で男性の護衛が付き、私達女性の護衛はお風呂に行く事になったわ。
愛美さんとアンさんとミミさんと私の4人が風呂に入ったの。
私はお風呂で、綺麗に体を洗ったわ。
そう言えば2日くらい、お風呂入ってなかったわよね。テツさん私の側にいた時、私、臭わなかったかしら?
ちょっと、いまから考えると恥ずかしい。テツさんは、テツさんの匂いがしたけど。
と体を洗い終わり、湯船に浸かっていたらアンさんと愛美さんが話しかけてきたわ。
「真美子さん、ずいぶんと肌がきれいだね。傷痕一つない。アタイなんて傷痕だらけさ。」
「え、あ、ありがとうございます。アンさん。」
「本当に綺麗な肌だわ。わたくしも魔族との戦闘で肋腹の所に傷痕が残っちゃったのよ。」
「あ、本当、治らないんですか?回復魔法で?」
「そうね。最上級回復魔法なら治るけど。城の回復魔法の魔道士がいやらしいので、治してないのよ。」
そうね、あの城の魔導士達はいやらしかったもの。
でも、そうすると私は最上級回復魔法が使えるテツさんに治してもらって幸せよね。
テツさんに会う前は、傷だらけで、体中縫い目だらけだったわ。
そう、今は私がケガをすると、テツさんの手が、あんな風やこんな風に私に触れて傷や傷痕が治るのよ。
「真美子さん、なに、ニヤニヤしてるの?」
「あ、いえ私ニヤニヤしてました?」
「ええ、もうとろけるくらいに。」
やだ、そんなに、ニヤけてたの恥ずかしい。
「そもそも傷痕一つないなんておかしいよ。誰に治してもらったんだい。アタイに教えてくれよ。」
「え?テツじゃなくて”ジョン”だけど。」
「”ジョン”だったのか。というかもう”テツ”さんなんだろ”ジョン”は偽名で。」
あ、マズいここでも、テツさんが偽名を使ってるのばれちゃったわ。
「アン、その偽名のことは内緒でね。」
「わかりました。愛美さん。」
とりあえず良かったわ。偽名の件は隠してくれるみたい。
「ところで、真美子さん、傷痕の治療をテツさんにお願いできないかしら?」
「アタイも頼む。」
と2人が頼んできたわ。
これって、テツさん目当てじゃないわよね。
「えーとあとでテツさんに聞いてみるわ。」
「ありがとう。」「よろしくな。」
と話していると、ミミさんが近寄ってきたのよ。
「傷痕の治療ですかにゃ?私もお願いにゃ。」
「はい。ミミさんの分もテツさんに聞いてみます。」
「ありがとにゃ。しかし、綺麗な肌だにゃ。これでテツさんを夜な夜な誘惑してるにゃか?」
とミミさんは私の背中から手を滑らせて胸をもみ始めたの。
「あっ!ちょっと、なにをミミさん!
「ちょっとだけにゃ。」
「なにがちょっとですか!あん!」
「うわ、余り大きくないけど、感度がイイにゃ。いい顔するにゃ。」
「ほんとだ。アタイなんかこんな女らしい表情出来ねえぞ。ちきしょう。」
とアンさんまで私に手を伸ばしてきたわ。
愛美さんは傍観している。
止めてよ愛美さん。
「駄目よ、あぁ!」
「この体でテツさんをどれだけたらしこんでるんだ?真美子さんよ。」
「そうだにゃ。悪女だにゃ。」
私は逃げようとしたけど2人ががりじゃ為す術もなく。
「あ、そんなところ駄目。や、止めないとテツさんに、つ、伝えないから。あぁ。」
「わかったよ。ごめん。」「わかったにゃ。すまないにゃ。」
と2人は止めてくれたわ。
まったく危ないわよ。わたし百合の気ないんだから。
でも体が火照っちゃったわ。どうしよう。
と考えていたら、愛美さんが言ったの。
「さあ、時間です。出て護衛に戻りましょう。」
「はいよ。」「はいにゃ。」「は、はい。」
と、お風呂を出て4人は護衛の任務に就いた。
その夜、一応テツさんに傷痕の治療のことは伝えておいたわ。




