10 女子生徒の実地訓練
私とテツさんは、今、実地訓練を兼ねた旅行の護衛をしているわ。
その旅行の護衛は、私達2人だけではなく、愛美さんのパーティ8名も一緒に護衛なのよ。
何故地道に馬車で行くのかというと、今回の旅行の道中に、女子生徒の実地訓練を行うの。
弱そうな魔物の場合のみ、女子生徒が馬車から降りて戦う事になっているわ。
ガタン!ゴトン!
馬車の列が山道を進む。
馬車は全部で6台
前の1台と後ろ1台は荷物と従者。
真ん中の4台が女子生徒が乗ってる。
護衛の私たちは分担して馬車の御者の席の隣に座ってるわ。
女子生徒は全部で8名。そのうち6名が貴族の娘で、残り2人が商人の娘。
そのせいか、2年生にもなるのに、平均レベルがLV150前後。
だから、護衛が必要なのよ。
まあ、私はLV179なので威張れないけど・・・・。
そして、私とテツさんは、一番前の馬車に乗ってるわ。テツさんは今日は”ジョン”という偽名を使ってるのよ。
・・・・・・・・
ガタン!ゴトン!
馬車の列が山道を進む。
山の木々は、広葉樹みたいな木になり、周り薄い緑色になってきたわ。
そして、山を下りた人里離れた森の中に入った。
「少し先に、ゴブリン数匹がいるぞ、どうする?」
とテツさんが魔物を見つけたらしく、魔法通信機で愛美さんと話し始めた。
「・・・・・わかった。」
話が終わったみたい。
「真美子、女子生徒の実地訓練を行うそうだ。もう少し行くとゴブリンがいる。それを女生徒に狩らせる。」
「分かったわ。テツじゃ無くて”ジョン”。事前の愛美さんからの説明通り、周りの警戒と女生徒のサポートね。」
「そうだ。それじゃ俺は、ちょっと周囲を確認してくる。」
と言ってテツさんは、飛行魔法で飛んで行ってしまった。
◇
私の担当班の女子生徒とゴブリンの所に向かう。
その女子生徒は、
ジョセファーナ LV151 金髪 ポニーテール 貴族 ロリボディ 14才 秀才
マリアン LV147 赤毛 セミロング 商人 プローポーションそこそこ 20才
キャサリーリ LV149 茶色の髪 ウエーブロング 貴族 プロポーションいい 19才
の3名よ。
この3名に事前に戦闘のパターンを打ち合わせてあるの。
3人は、陣形とか難しいことは無理みたいなので、単純な以下の4パターンと撤退命令を加えたわ。
パターンA:攻撃魔法の後、剣で突撃。
パターンB:攻撃魔法のみ。攻めてこられたら剣で応戦。
パターンC:剣で攻撃
パターンD:各個自由に攻撃
撤退
後ろから、愛美さんパーティの男性2人、ランタスさんとガイさんがその他の女子生徒を引き連れてきたわ。
・・・・・
少し、開けた場所に、普通のゴブリン2匹、ゴブリン魔術士2匹、格闘型ゴブリン2匹がいたの。
私の知識だと、ゴブリンがこんなに色々な職種があるなんて、最初ビックリだったけど、この異世界では普通らしいわ。
最初の魔物との遭遇なので、私の担当班が狩ることになっていた。
テツさんが、鑑定魔法でゴブリンのレベルを調べているから、大丈夫な相手。早く私も鑑定の魔法覚えなくちゃ。
「ジョセファーナさん、マリアンさん、キャサリーリさん、パターンAで攻撃してください。」
と私は3人に攻撃を指示する。
「はい。」「はーい」「はいですわ。」
と3人は返事をして、攻撃魔法を放った。
「ファイアーアロー」「ウインドカッター」「ウォーターアロー」
とゴブリンに魔法が飛んで行ったが、
ファイアーアローとウォーターアローは途中でぶつかり、敵に届く前に消滅した。
「あ!なにするの!」「こっちのセリフですわ。」
と喧嘩を始めるジョセファーナとキャサリーリ。
ゴブリン魔術士は魔法防壁を張って「ウインドカッター」を防いでいた。
格闘型ゴブリンとゴブリン2匹がこちらに向かってきた。
「みんな!来るわ!体制を整えて!」
と私は叫ぶ。
格闘型ゴブリンがマリアンさんに襲い掛かる。
「きゃー!」
ガシっ!ガシっ!ガシっ!
格闘型ゴブリンの拳をマリアンは盾で受けて防いでいる。
ゴブリン2匹は、小さいジョセファーナに襲い掛かる。
キャサリーリは悲鳴を上げて動かない。
マズいわ。なんでLV150前後なのに、この3人はこんなに動きが悪いの?
と思いながら、私は2体1はマズいので、ジョセファーナの助けに入る。
ザン!
ぎゃあ!
ゴブリン1匹を私は倒した。
ガイン!ガイン!ガイン!
とジョセファーナさんは剣で、残りのゴブリン1匹と打ち合っている。
これなら大丈夫だろうと、私はマリアンの助けに入る。
マリアンは、防御で精一杯だった。涙目だわ。
私は格闘型ゴブリンに切りつける。
ザン!
ぐあー!
と格闘型ゴブリンは私に向き直る。
「マリアンさん今です!」
と私が指示をした。
マリアンが、後ろから格闘型ゴブリンを剣で切る。
「はい。」
ザシュ!
ぐぎゃ!
格闘型ゴブリンは、マリアン向き直る。
マリアンが続けて格闘型ゴブリンを剣で数回切る。
「いやー!」
ザシュ!
ぐぎゃ!
ザシュ!
ぐぎゃ!
ザシュ!
ぐ!
と格闘型ゴブリンが倒れた。
横を見ると、ジョセファーナもゴブリンを倒していた。
そこに忘れていたゴブリン魔術士2匹が、魔法を放ってきた。
2本のアイスアローだ。
「キャサリーリさん魔法防壁を張って!」
と私が叫ぶが、
キャサリーリは「え?」「え?」と言って動かない。
マズいわ。私は魔法防壁張れないのよ。
剣で撃ち落としても私じゃ1本しか落とせない。
と焦っていると
「真美子、みんな、動くな!」
と上空より声が響く。そして、
シュルーンンンン!
ガリガリガリ!
と私達4人とアイスアローの間に風の壁が立ち上がり、2本のアイスアローが氷の欠片に変わった。
そして、その風の壁越しにゴブリン魔術士2匹が、風の刃で切られて死んだ。
そして、私達の前にテツさん(”ジョン”)が立っていた。
「大丈夫か?」
「は、はい。」
よかった。貴族に怪我でもされたら大変だったわ。
さすが私のダーリン。
私が抱き付きたいのを我慢していたら、
ジョセファーナ、マリアン、キャサリーリが、それぞれテツさん(”ジョン”)に言った。
「すごいわー!あんな魔法初めて見る。貴方名前は?」、「すごい!」、「遅いですわ。もう少し早く助けなさい。」
テツさん(”ジョン”)は頭を下げて礼をし詫びを言う。
「”ジョン”と言います。助けるのが遅れて申し訳ありませんでした。」
もう、そんな頭下げなくていいのにと思っていると、
ジョセファーナ、マリアン、キャサリーリが、再度それぞれテツさん(”ジョン”)に言った。
「ジョンさんね。今度魔法教えて。」、「私も教えて、」、「そうね。教わっても良くてよ。」
3人とも何に言ってるのよ。そういうのはイケメンに言うものよ。テツさんはイケメンじゃないから。・・・私的にはカッコいいけど。
私はちょっとムッとして、今の戦闘の不味い点を話そうとした。
「えーと、みなさん、今の戦闘はみなさんの動きが・・ふがっ!」
とみんなに言う前にテツさんが、私の口を塞いだ。そして私の腕は後ろに回され動けなくなったの。
私は必死にもがいたのだけど、テツさんは全然動かない。
「あ、皆様すみません。さあ、馬車に戻りましょう。」
「ふがふが・・・」
「はい。」「はーい。」「真美子さんでしたっけ?」
とキャサリーリだけが、残って話し出した。
「真美子さん、貴女護衛失格じゃなくて?」
「ふがふが・・・」
「あ、すみません。真美子の分を俺が補うって守る事になっていたので、先ほどの戦闘に関しては俺の責任です。」
「そうだったの。以後気負付けてくださる。」
「はい。お嬢様。」
「ふがふが・・・ふがん!」
とテツさんに私は口を押えられ、何も言えないままだった。一方、テツさんはキャサリーリに頭を下げていた。
キャサリーリは私を睨んでいたが、テツさんに謝られ馬車に戻っていった。
キャサリーリが十分離れた後、テツさんは手を放してくれた。
「テツさん、何で私の口をふさいでいたの?」
「落ち着け、貴族ってやつは、理屈じゃないんだ。」
「・・・・でも、あれは無いんじゃない!」
「いいから、仕事が無くなるぞ。俺を困らせないでくれ。」
「・・・・・」
仕方ないわね。テツさんを困らすわけにはいかないもの。
と私たちも馬車に戻った。
◇
馬車に戻ってしばらくすると魔法通信機の音がした。
「はい。”ジョン”です。愛美さん?はい。・・・・・・・・・」
と隣でテツさんは愛美さんと話し始めた。
「・・・・・・わかりました。そうします。」
とテツさんは魔法通信機を切って仕舞った。
「テツさん、何の話しだったの?」
私は周りに人がいないので”ジョン”とは呼ばなかった。
「・・・えーと、真美子担当班の戦闘中の護衛を、今後俺がする事になった。」
「え?何でよ。」
「キャサリーリさんからの要望だとさ。あ、でも、一般の温泉宿の中の護衛は、真美子のままだから。」
何よそれ、一番役立たずだったのはキャサリーリなのに。・・・でも、テツさんはすんなり引き受けたわね。それにキャサリーリからの要望?
「・・・テツさん、もしかして、女生徒と一緒にいられるから引きうけたんじゃなくて?キャサリーリさんスタイル良かったしね。」
「そんなことなよ。第一、俺には真美子がいるじゃないか。」
「そうかしら、私の扱いが悪いように思えるんだけど。」
「そんなことないだろ。」
「さっきだって、乱暴に私の口塞いだじゃない。」
「あれは、真美子が貴族に向かって意見しようとするから・・・・・」
意見って、注意じゃない。怯えてなにも出来なかったキャサリーリが悪いのよ。
「なによ。悪いものは悪いんだから。テツさんは私の味方じゃないの?」
「分かってくれ、貴族に喧嘩を売ると後で厄介なんだ。真美子が危険になるんだぞ。」
「どういう風に?」
「暗殺とか、町などで物が買えなくなるとかだよ。」
「・・・それは嫌ね。」
「まあそういう事だ。、真美子、貴族ってやつは、陰険で我がままなんだから。」
「・・・・・」
「もう機嫌直せよ。」
とテツさんは黙って私を抱き寄せた。
「あっ、もう。」
「膨れてるとその口また塞いじゃうぞ。」
と言って、テツさんは手をにぎってきた。
あ、温かい。握ったり、指をからめたりしてくる。
もう、これでイケメンだったら本当に女ったらしよ。
「もう、わかったわ。」
「ありがとう。真美子。」
とテツさんは手を離した。
あれ、もう終わり?
って何期待してるのよ。私。
でも、テツさんが本気で私を抑え込んだら、全然抵抗できないことが今日わかったわ。
その時はテツさんのにされるままね。
と考えていると、
「お!やっぱり魔物だ。」
「もしもし、愛美さん、”ジョン”だけど・・・・・・」
と魔法通信機で愛美さんと話し始めた。
テツさんが手を離したのは、魔物を見つけたからだった。
・・・・・・・
そして、次の班が先頭になり、現地に向かった。
・・・・・・
・・・・・・
数回の魔物との戦闘を繰り返した。
テツさんが班の護衛に変わってからは、ジョセファーナ、マリアン、キャサリーリの3人が安定して戦闘出来、すんなり勝ってしまった。
『凄い!テツさんは戦闘指揮も手慣れたものだわ』と私は感心したの。
・・・・・・
・・・・・・
ガタン!ゴトン!
馬車の列が山道を進む。
そして、日が暮れ野営となった。
野営も生徒の実地訓練に入っていたので、生徒にも交代で従者と護衛の人で夜の番をした。




