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聖魔の救済者  作者: 港瀬つかさ


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5.白夜

 日が暮れることなく、空に光が満ちている。あぁ、今日は白夜であったのか。そんなことを想いながら俺は、傍らで火を熾す少年を見た。枯れ枝をくべて火を大きくし、串に刺した魚や肉をその周囲に突き立てている。

 そう言った野宿姿と、何処までも重ならない少年。時折爆ぜた火の粉が飛び、それをゆっくりとした動作で払い落としている。肉や魚が焼けるのを待ちながら、先に作ったスープを飲んでいた。人間とは、厄介なモノ。いや、殆どの種族が、厄介と言うべきなのか。

 睡眠を必要とし、食事を必要とする。俺のような邪神にとっては、何処までも無縁なその行動。けれど時折、思いつきのようにフーアは俺を見る。食べるかと、屈託無く笑う姿は幼い子供。或いは、それが、この少年の最も本性に近いモノなのかも知れない。

 何時からだ?歪であると、感じ始めたのは。勇者として歪んでいると言うよりは、何かヒトとして歪んでいる。それが一体何であるのかを理解できぬままに、俺は逃れる術を模索することなくフーアの傍にいる。

 世界を、救う。そんなことは本来、どうでも良いのだ。そう、どうでも良い。滅ぶのならば滅びてしまえばいいと、思う。どうせ俺は、封印されていた、はみ出し者の邪神なのだから。


「白夜だったら、階段登ってれば良かったな。」

「光が強すぎて目が眩むぞ。」

「そうなのか?」

「光の神の影響を受けて、祭壇付近はかなりの発光量になる。邪神の俺ならいざ知らず、人間の貴様では眼を灼かれる。」

「お前、物知りだな。いやー、お買い得物件、お買い得物件v」

「…………ヲイ。」


 言うに事欠いてそれはどういう事なのだろうか、このクソガキは。一度でも、見直そうと思ったことがある自分を、俺は恥じた。こいつを見直すことなど、一生有り得ん。むしろ、そのねじ曲がった性根をたたき直さねば。

 そんな決意を固めかけて、俺はふと気付くのだ。何故、邪神の俺がそんな決意を固めるのか、と。放置しておけばいいのだ。確かに今は限りなく邪魔でうっとおしく、尚かつ俺に対して実害ありまくりだが。全てが終わった後に困るのは、俺ではなく人間達だ。



 …………こいつが、俺を解放するというのなら。



 一瞬、不可能かも知れないと思った。何故かは解らないが、物凄く気に入られてしまっているのだ。どうしてだ?何故この拗くれ曲がった勇者が俺を気に入る?その理由が、俺にはまだ解らない。

 焼けた肉を串にかぶりついて食べる姿が見える。天使の美貌がそういう生々しいことをするのは、はっきり言ってあまり嬉しくなかった。背中に翼がないのが不思議な程の顔立ちをしているのだ、一応。

 とはいえ、まぁ。まだ大人しい方なのだ、これで。外見と中身が一致していないとはいえ、17歳の少年だ。荒っぽかったりするのは、普通だろう。



 そんな風に考える自分の思考に、それは只の現実逃避だと告げる、もう1人の自分がいた…………。

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