することがなくなった僕はエアラジオをすることにした。
朝だ。今は夏休み。でもSNSにもLINEにもネトゲにも友達は浮上してこなかった。暇だ。することがない。誰かと話したいんだけど誰もいない。困った。僕はこんなにも体力が有り余っているというのに。もちろん外に出るつもりはない。外はめんどくさい。暑いし疲れる。ということで既読のつかないLINEの中暇なので荒らしまくった。けど返信がこないのですぐに飽きた。そこで思いついた。いなければ僕が作ればいいんじゃないかって。
僕はエア会話をすることにした。イメージはある。もう結構絡んだからだいたいの口調とか雰囲気はわかる。
とりあえずラジオ風にやろう。
僕がラジオパーソナリティーだ。そしてゲストにマーチと呼ばれる人に設定する。
よし、始めるか。
ラジオ名は……エアラジオ
「こんばんはー」
「こんばんはー」
「今日のゲストはマーチさんです」
「よろしくお願いします」
「ということでね。始まりましたね。第一回目、エアラジオ」
「あ、これ第一回目だったんですか。それにエアラジオっていいんですかそんな名前」
「おっ、いいツッコミですね」
「まじっすか。ありがとうございます」
「そうなんですよ。これが第一回目のエアラジオとなります。名前は適当ですね。僕が暇だったので適当に作った感じなので」
「僕そんな適当なラジオに呼ばれたんですか。話では長く続いているラジオだって聞いていたんですけど。聞いたことのないラジオでしたが」
「ああ、それは僕が捏造しました。そうじゃないと来てくれないと思ったので」
「僕を騙したんですか」
「はい」
「すごい正直なんですね」
「僕は嘘をつきませんから」
「ものすごい嘘をつきますね」
「おっ、いいツッコミありがとうございます」
「はあ。で、このラジオいったい何をするんですか」
「まだ決めてません」
「え。今なんて」
「まだ決めてません」
「僕帰っていいですか」
「まだ始まったばかりじゃないですか。これからですよ。もう少し居てください」
「僕は別に暇ではないんですが」
「今ラジオ回ってるのでそういう発言は控えていただきたいんですが…」
「僕が悪いんでしょうか」
「そんなことは……」
「もう分かりましたよ。もう少し付き合います。気になるんですが、このラジオ聞いてくれている人いるんですか」
「いると思います。たぶん」
「情けない司会者ですね。もっと自信持ってください」
「すみません。こういうの初めてでして」
「だめだめじゃないですか。僕も付き合うんでこうなったらいいラジオにしましょう」
「ありがとうございます。頑張ります」
「ふぅ。で、何を話しましょうか」
「そうですね。とりあえず絨毯の遊び方でしょうか」
「なんですか、そのくだらない話題は」
「マーチさん話題広げてください。もう詰みそうなんです」
「早すぎますって。もう、ほんと仕方ないですね。絨毯はふわふわしてますよね」
「ですね。絨毯はふわふわしてます。やはり家に帰ったら絨毯に寝転がるのが一番です」
「ソファとかベッドじゃないんですか」
「僕は絨毯ですね。ソファ欲しいです」
「なるほど。持ってなかったんですか。僕はソファ派なんですよね。だらーと寝転がってますね」
「羨ましいです。絨毯でしか寝転がったことがなくて興味深いです」
「そんな変わらないと思うんですが」
「変わります。ソファで寝転びながら体育座りでゲームをするのが僕の夢ですから」
「そんなものを夢にしないでください。でも、僕はやったことがありますね」
「ほんとですか。その、どんな感じなんでしょうか」
「それはもう特に感想はないですね。腰が痛いので丸めたってだけであまり気にしたことがないので」
「それはソファを持ってない人への中傷ですね」
「いや、そんなことはないと思うんですが……」
「もういいです。ソファ持ってないのでソファの話はやめましょう。絨毯です。まず僕は絨毯に寝転がり絨毯を撫でます。あの毛みたいなやつを逆立てます」
「はあ……」
「そうすると色が変わるんですよ!!分かりますかこの気持ち!!!」
「いや特に……」
「それは絨毯への暴虐ですね」
「まじっすか」
「あの手触り最高じゃないですか。絨毯の色を変える感覚はもう自分が神になったようで」
「そこまで感じるんですか」
「それはもう。やばいです。すぐに飽きるんですけど」
「そうっすか。あの、もう帰っていいですか」
「まだ10分も経ってないんですが……」
「こんなつまんないラジオ誰も聞きませんよ」
「そんな……」
僕は途方に暮れた。このままじゃ終わる。僕のラジオが第一回目で終止符が打たれる。そう絶望した時、ディレクターから声がかかった。聞くと何やらメッセージが届いているらしい。
「ええっと、何やらリスナーさんからメッセージが届いてるようで読み上げます。エアラジオ聞かせてもらいました。私は絨毯の逆立ち具合に興奮します。仕事から疲れて帰ってきた時は絨毯に寝転び毛を愛でます。絨毯大好き。とのメッセージです」
「聞いてくれている人いたんですね」
「この方は絨毯派みたいですね」
「毛を愛でるのはペットとかでいいんじゃないかって思っちゃいますけどね。ペット禁止とかなら絨毯になるのかなぁ」
「どうでしょうね。絨毯の触り心地も結構癖になりますけどね」
「すぐ飽きるって言ってましたけどね」
「そうでした」
「忘れないでください。でも、そうですね。絨毯愛されてるんですねー」
「絨毯があるのが当たり前みたいな感覚で改めて絨毯の良さを知ったって感じですね」
「僕も帰ったら絨毯愛でます」
「ありがとうございます。これを機にソファから絨毯に乗り換えてみてはいかがでしょうか」
「恐ろしく雑なまとめに入りましたね。ただまあ、今日は帰ったらソファより絨毯に寝転がるとします」
「僕も絨毯で寝転がってテレビ見ます」
「ぐうたらですね」
「ですね」
「それじゃあ、ありがとうございました。今回のエアラジオはこれで終わりにします。またあるかは分かりませんが続いてたらまた呼ぶかもしれません」
「そんな日が来たらいいですね。少しだけ期待してます」
「エアラジオ第一回目はマーチさんにお越しいただきました。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ではまたお会いできる日を」 完
まとめ:すっごく暇