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五枚目 新たなる仲間と力

借金はしっかりと返しましょう。

「それじゃあ、あんたの借金返済のためにキリキリ働いてもらいましょうか」


みなさん、借金をするときはしっかりと契約内容を確認し、両者同意の下で行いましょう。


「ちなみに宿代っていくらなの?」

「聞いて驚かないでよ? なんと500クレジよ!」


 当面は私の借金返済に奔走してもらうことから始めましょうか! と高笑いをするリリに対し、

 私はそっとお金の入った袋を差し出す。


「なにこの袋?」


 ギルドのマークの入った布袋をそのまま渡す。


「借金の500クレジです。お納めください」


 中身には金色の硬貨が五枚。100と刻まれていることから一枚で100クレジといった感じか。

 怪我とかも酷かっただろうし、結構な苦労を掛けたのだろう。こっちとしても命の恩人だ。


「とりあえず借金は返し終わったけど、クランには所属しないといけないみたいだからそこのところよろしく」

「……いや、私が悪かった。ほんとは300クレジあれば十分だから!」


 冗談だよ冗談と言って、金貨2枚を返却してくれるリリ。貨幣価値がわからないから真に受けてしまった。

 早いうちに貨幣価値調べて最低限騙されないようにしないと。


「やっべ、この子このままじゃただのカモだわ。これ本当に面倒見ないとまずい」

「ところで、クラン作ったって言ってたよね?」


 何か呟くリリをよそに、私はクランについて確認する。


「ああ、所属はアケノと私の二人、だけ。しかもどちらも後衛系というバランス悪いパーティ!」


 少しだけ言いよどんだ後に開き直ったかのような宣言。

 いわゆる特化型パーティか。まあ、私はその気になれば前衛もできるけど。


 キツネツキ状態は伊達じゃない。今までの身体能力から見ても倍の能力になってる、はず。


「その名もサポーティア!」


 まんまですね。


「ところで、リリは何ができるの?」

「いやまあ、マジックハンターだからさ、私」


 ―――マジックハンターとは各種属性魔法の矢を放つ狩人である。魔法の心得と近接用のナイフが主な武器になる。


 うん、解説ありがとう鑑定の謎ボイスさん。


「なるほど、確かにバランスが悪い」

「ナイフは、まあ、できなくはないんだけどね」


 きっと触れられたくないところなのだろう。しょうがないので仕事の話をしよう。


「それで、私たちサポーティアは何をするの?」

「ほかのクランに補助戦力を提供するのが仕事。つまり、私の場合は遠距離火力だし、アケノの場合は符での補助ってところかな?」

「つまり、雇われのサポート要員ね」


 部活の助っ人感覚で正しいだろう。となると家事関連で考えると料理はできるが洗濯と掃除は全く駄目だ。

 日常生活の部分もサポートに含まれるのであれば、だが。


「これから忙しくなるわよ、ガンガン稼いでこの町の伝説となるのよ!」

「おー」


 リリの背後で炎が燃えているように見える。というか実際に燃えている。


「おっといけない、魔力が漏れた」

「そこはしっかりしてほしいな、正直怖かった」


 世間に疎い異世界の自称田舎物娘と、わがまま暴走気味魔法使いコンビの誕生だった。

 この時点で祝福をするものは、受付担当のシェーブさんのみだった。



○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○



「さて、それじゃあ最初の依頼だけど、三日後に封印球の洞窟に発生したミリタリーラットの駆除作業、その補助要員として参加することになっています」


 宿屋に戻り、近くの酒場で芋の煮転がしをつつきながら今後の予定を話す。


「はーい、封印球の洞窟ってどんな場所ですか?」


 今後の予定のために情報収集。とりあえず目の前の人物から聞けるだけ聞いておこう。

 早い話がリリへの質問タイムだ。


「元々は何らかの魔法を封印された封印球があった洞窟なんだけど、

 今はその封印球が失われているためお宝の無い魔物生息地の洞窟です」


「はーい、封印球って何ですか?」

「符のように魔法を封じた水晶球ね。魔力を流すと球に封印されている魔法が効果を発揮する仕組み。

 何回使ってもなくならないけど、持ち歩くには少し大きいわ」


 世の中そうそう便利にはならないか。


「はーい、ミリタリーラットの注意すべき生態はありますか?」

「一体のコマンダーラットから分裂したソルジャーラットの集団をミリタリーラットと言うんだけど、毒性の強いモンスターだから、毒に注意かな?」


 それと、増える速度が速いから火力が足りなくていたちごっこになることもあるとのこと。


「それで、今回合同で対処するクランは『暁の剣士団』と『炎の巨人』の二つ。

 『暁の剣士団』が前衛で相手の侵攻を食い止め、『炎の巨人』が魔法で薙ぎ払う感じ。

 私は前衛の後ろから援護射撃。アケノは補助符で身体能力の強化を実施するってところかな?」


 三パーティ合同とはいえ、私たちの貰いは少ないだろう。


「ま、新米クランだし儲けはあまりないけど、顔つなぎがメインかな」

「今後ともご贔屓に、ってやつかな?」


 そういうこと、と芋をフォークで突き刺しつつ、リリが答える。


「それじゃあ、私はこの後情報収集に出かけるからさ、アケノも準備しておいてね?」


 特に符はしっかりと準備しなさいよ、と忠告し、そのまま酒場を出ていく。


「とりあえず符の作成でも試すかな……あ」


 余りにも自然で、今気が付いた。


「リリ、食事代一切置かないで行っちゃった……」


 こういうところが、わがままと呼ばれる所以なのかもしれない。

 食事代30クレジが財布から消えていくのだった。



○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○



 ペラリ、とページのめくる音と、外の喧騒だけが部屋の中に響く。

 今読んでいるのは、シェーブさんからもらった『スライムでもわかる符術入門』という本だ。


「なるほど、符に魔力を込めて、それを解き放つ技術なのか。自然現象の再現は難しく、基本は身体能力の強化や結界を張るなどサポートに秀でている、と」


 やはり、符術士はサポート職であり、積極的に前線に出て戦う職業ではないということか。

 後衛をするにしても、攻撃用の符が破魔符という精神体に効く物しかないので使いどころが難しいと。


「一定の相手以外にはサポートしかできない職業って需要あるのかな?」


 なんにせよ、困った。これでは堂々と攻撃用の符を使うことができない。

 現在は結界のカードのみでそのほかのカードは作っていないが、

 身体能力強化のカードくらいしか見せられる手札がない。


「うーむむむ……」


 悩む。開き直って符を使うべきか、それとも使わないべきか。悩みながらも本を読む速度は緩めない。

 基本的な符の作り方は、筆に魔力を込めて文様を描くことが基本となっており、その魔力と媒介となる墨の力で符の出来が変わるとのこと。


 つまりまとめると、この職業は金食い虫であり、直接攻撃できないサポート要員であるということ。


「だったら、状態異常のキツネツキはどうなんだろう、注目の鑑定結果は!?」


 自分に向けて鑑定魔法をかける。


 ―――状態異常:キツネツキ フェネクが憑りついた状態。身体能力の向上と狐火が使用可能。


 よし、火力は狐火で行こう。フェネ君がやっていた時をイメージして、炎が出るイメージを思い描く。

 すると指先に青白い炎が灯る。さらに力を込めると符で出した時と同じくらいの炎の規模が指先からあふれ出る。


「って! 住宅火災の放火犯で牢獄行きー!?」


 一瞬で浮かぶ未来予想図!


 このまま宿屋は全焼、宿屋のオーナーから町の衛兵に突き出され、そのまま犯罪奴隷となって若い花を惨めに散らすところまで一気に流れる。


 グッバイ我が人生!


「……あれ?」


 これだけの勢いで燃えているのに、宿屋の床や壁は燃えていない。試しに片手を突っ込んでみるも、熱くもない。

 それでもって部屋の隅にあった綿ぼこりを摘んで投げ入れると、一瞬で燃え尽きた。


「燃やしたいものを区別できる?」


 ―――狐火 肉体と魂に作用する炎。指定した対象のみを燃やすことができる炎。

    威力は高くないが、ゴーストなどの死霊に特に効果がある。


 謎ボイスさんの説明は少し遅いと思った。危うくR18な展開になることろだった。

 とりあえず狐火を引っ込めて、入門書と向き合う。


「攻撃の目途は着いたから、とにかく符を作ってみよう」


 本に書いてある通りに筆を持ち、指先から何か出るものを筆と墨にいきわたらせる。

 その際に何かこそばゆかったので魔力は出ていたと思う。


「で、これをこの通りに書いていくと」


 間違えないようにゆっくりと書き上げていく。そして体感で三十分くらいかけて出来上がる。

 作成した符は腕力強化の符なのだが、いまいちよろしくない。


 カード化で作った符を十とするならこれは精々三がいいところ。


「本の通りならもっとしっかりとしたものができるんだけど……」


 そのままもう一枚、今度はより丁寧に作ってみるも結果は変わらず。


「むむむ……やっぱりイメージなのか?」


 カード化の時は強く思い描いて作成することが秘訣だったが、どうもこの模様から力の沸き立つイメージが浮かび上がらない。

 ここの魔法で大切なのはイメージだと思うのだが、このミミズの走り書きのような模様がなぜ腕力強化なのかが理解できない。


 だったらと、符にカタカナでプロテインと書いてみる。ついカッとなってやってしまった。


「まったく、紙資源の無駄を……!」


 いや、符が出来ている。それも腕力強化じゃなくて全身強化の符が。


 ―――プロテインの符が完成しました。新たな能力『符術作成』を入手しました。あなたのイメージを世界に広めましょう。


 何かさらっとすごい技術を入手した気がする。


 三枚の符を見比べる。

 二枚はミミズ大暴れな感じの符。魔力は宿る物のランクは低い。

 そして三枚目がプロテインとはっきり書かれた符。結構な魔力が宿り、先の二枚より効力がある。


「うわ、違和感満載」


 とりあえずカタカナは我が家に代々伝わる秘伝の符文字ということにしよう。

 師匠は居ないと言っていたが、秘伝書はあったということにしよう。


「だったら、切り札は何枚か作った方がいいね」


 とりあえず毒が怖いって言ってたから毒対策として解毒の符をイメージして、『漢方配合』と少々崩した字で書く。

 鑑定で調べると毒を受けた相手に張り付けることで発動する解毒符が出来上がった。


「おお、これは便利」


 ひとまず解毒符を十枚ばかり作成する。カード化の能力を使うとすさまじい効果の符を作ることは可能なのだが、

 符を直接書く方が魔力消費が少なくて済む。量産はこっちの方が向いている。


「やば、ノッてきた!」


 さらに『立入禁止』と書いた符で結界の効果を、『ばんそうこう』と書いた符で傷の回復力を高める符を作り出す。

 そしてトドメに『狐火』と書いた符を書き上げ、買ってきた符を使い切る勢いで書き続ける。


 それから時間は流れ、


「そして、この有様である」


 外は完全に夜。部屋の中は天井に貼った『LED』の符で煌々とした明かりが灯っており、床には書き上げた札が所狭しと並んでいる。


 一枚一枚丁寧に回収して、カードホルダーに収める。しかし、このカードホルダーはどうやら符に関してだけは収納能力が見た目以上にあるようだ。

 そして、そこで気が付いてしまった。


「切り札の札しか作ってない……」


 ええい、こうなりゃヤケだ。このまま押し切ろう。自分でもどうかと思う行き当たりばったりだが、やってしまったものはしょうがない。


 そしてこの後帰宅したリリに『LED』の札を見咎められ、貴重な符で何をやっているのかと怒られました。

説教は一時間に渡った模様。

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