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四十五枚目 魔王の傘

魔王と勇者。

 現在位置、黒の森外縁の結界内。

 騎士団は早々に引き上げ、後に残ったのは最低限の警備兵と私たちくらいだ。


「あれから二週間、か」


 そんなこんなで私はレマクラフトの中で、リリとクラップと一緒に倒れていた。


「……さすがにぶっ続けでいろいろ作業するのは限界があったみたい」


 あたりに転がっているのは大量の羊皮紙と、何本もの羽ペン。そしてリリとリリーズ。


「全員終わって寝ちゃったか……」


 行っていた作業は、今回作る勇者用の装備に関する資料と製造方法、それに加えてオリハルコンの精製方法や私とクラップで考えた新


術の術式。

 私も作業終わった後にそのままぶっ倒れたからだ。


 なお、一番枚数が多かったのは新術だったのは言うまでもない。


「……まだ戻ってないか」


 テーブルの上に置かれている、一人分の食事。ロイヤードの分だ。


「おはようございます、アケノ様」


 入り口から入って来たのは、フィアナとピア。神官服であることから、聖域の巫女としての仕事だろう。

 どうも、鍛冶の聖域としてこの場所は取り扱われるらしい。今後黒の森を少しだけ切り開いて土地を確保し、ここに鍛冶の街を作るら


しい。


「やはり戻られていませんか」

「あの戦いでリンクスがいなくなってから、ずっと探し回っているらしいし」


 黒の森を見る。相変わらず深く黒い森が広がっている、が。

 その一部が爆ぜた。


「少なくとも生きてるみたいね」

「そのようですね」


 まあ、あのロイヤードがそう死ぬことは考えられない。

「おーい! 俺の分の飯あるか?」


 レマクラフトに飛び込んできたロイヤードがダイナミックに飯を集りに来た。


「少しお待ちいただけますか? 今用意しますので」

「いや、そこにある奴でいいから。すぐ出る予定だからな」


 とりあえず二日帰ってこなかったおバカに対して、速攻で『簀巻き』を使って拘束したうえ、フィアナとピアが槍を突き付ける。


「今ごはん作りますから、少し待っててくださいね?」


 ピアもうんうん、と頷いている。


「置いてあるご飯に関しては、私たちの晩御飯だった物だからさ、ね?」


 両手に構えた『空川コレダー』を見せつける。


「わかった、大人しく待つから勘弁してくれ!」


 うむ、素直でよろしい。


「とりあえず、ご飯で来たら起こすから少し眠りなさいな」


 もう一枚、『快眠さわやか』の符を貼ってやり、そのまま強制的に眠らせる。


「ま、その意思を汲んで一時間だけにしておくから。その間に回復しなさいな」




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「それで、どうだった?」

「ああ、それがさっぱりだ。せいぜいあいつのナイフの片方が見つかったくらいだ」


『快眠さわやか』からロイヤードを『寝てる最中に足つった』の符で叩き起こす、その後ものすごく怒られたのはなんでだろうか。

「当たり前だ、普通に痛い思いして起きたかねーわ!」


 フォークで人を指さないように。


「ようやく得た手がかりだ。ナイフがあった場所はマークしてあるから、後はあのあたりを探すだけだ」


 意気込んでいるところ悪いが、そこまでする必要がない。


「その人の持ち物があれば、私とフェネ君で位置を確認することができるよ?」

「はい?」


 だから、できるって。


「探し物用の『ダウジング』符を使うんだけど、フェネ君の持ってる探知術を組み合わせれば、結構な範囲で失せもの探し可能だけど」

「……頼む、協力してくれ」


 差し出されるのは、短めのナイフ。

 年季の入ったその刃、切っ先には血が付着している。


「フェネ君、どう思う?」


 少し冷ましたスープを飲んでいるフェネ君に見せる。

 少し首を傾げた後、頷く。


「大丈夫みたい。少し時間かかるから待ってて」


『ダウジング』符と地図を取り出す。フェネ君も横につく。


 私とフェネ君で『ダウジング』に魔力を注ぎ、ナイフの持ち主の位置を特定する。

 ところでフェネ君、この血って魔物の血じゃないよね?


 返答は頷くだけ。回答は是。なので、今回の探知は二重で行う。


 ナイフの持ち主と、血の主。この二つを同時に探知に掛ける。


「相変わらずお前の符術は出鱈目だな」

「自覚は少しある」


 だからと言って自重はしないが。


 符の力がナイフと地図に染みわたる。同時にフェネ君が別の術を地図に向けて使用する。


 私の予想が正しければ、結果は―――


「あ、出た出た」


 地図に光の点が灯る。赤と白の光が点滅している。


「この点滅は?」

「ああ、私が分かりやすいように符を作ったからね」


 無論、嘘だ。白い点がナイフの持ち主、つまりリンクス。


「光っているのは生きている証明ってことで」


 赤い点は血の持ち主。

 同じ点で点滅ということは、同じ場所にある、いや、正しくいえば同じ人物の物であるということ。


「より詳しい地図と合わせてみると、北の大森林のかなり深いところみたいね」

「あいつ、なんでそんなところに……!?」

「おそらくだけど、何らかの理由で地脈に乗っちゃったんじゃないかな?」


 地脈に乗り、そのまま噴出する口で吐き出されたといった感じだろう。


「場所が分かればこっちのものだ。感謝する」


 ロイヤードが出て行こうとした瞬間、空が黒一色に染まる。


「な、何だ!?」


 私も外に飛び出す。


「……伝承にあった、魔王の傘、だと思う」


 さっきまで屍のように寝ていたクラップと、リリが同じく出てくる。


「魔王が生まれ、その城が出来たとき、空が暗黒に染め、魔王の時代が始まるとあった」


 その方角は、北の大森林の方向に行くにつれて濃い黒へと染まっていた。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「世界が魔王の傘に入るまでかなり時間があると思われる、というのも北の大森林上空を一気に覆った後、目に見えて浸食速度が遅くな


った」


 再びレマクラフト内部。現在はレマの街に向かって走っている。現在御者なしのオートで走らせている。


「なんかそれくらいなら問題なくこなせるくらい育ってるよ、タロジロ達」


 とは千果の言。マジ進化早いんですが。


「これは一応機密なのだが、先ほど北の大森林を監視していた部隊から連絡があったんだが、魔物もその傘の侵攻に合わせてじりじりと


進んでいる様子だ」


 報告によると普段見ないような黒い体表の魔物が、群れを成してじりじり進んでいるとのこと。


「侵攻速度を計算すると、これから侵攻が加速しない限りはレマまで一か月ほどかかるというのが騎士団と宮廷術士の間で立てた予想だ


「大体、俺の装備一式ができるのと同じくらいか」


 現在オリハルコンを精錬し、不純物を完全に取り除く作業中とのこと。鍛冶師の人の話によると意外に不純物が少ないとのこと。

 千果曰く結構苦労したとのことなので、事前にある程度は除去したのかもしれない。


「今は市民の避難準備や騎士団による大森林側の要塞化準備を急ピッチで行ってる最中だ。その準備にサポーティアの面々も力を貸して


ほしい」


 クラップは思いっきり千果の方を見ている。絶対要塞化のための土木工事要員として求められてる。


「ところで報酬は?」


 がめつさの数値があれば確実にメーターカンストしてるであろうリリの一言。ちなみに四つの依頼に関して何か報酬を交渉していたの


だが、触れるのが怖いので深く関わっていない。

 そう無茶な要求はしていない、はずだと思う。


「今回は主に土木工事なので歩合制だな。恐ろしいことにサポーティアは全員がそれなりの専門技術があるからかなり高給取りになるは


ず」


 私は符、リリはリリーズ、千果は言うまでもなく、フィアナとピア、クロックも戦闘要員としても使える。


「ああ、クロック君のあの光についての解析があるから一週間ほど借り受けることになるからそこのところよろしく」


 クロックの方を見ると、少し引いている。

 悪かった、謝るから。もう無理に迫ったりしないから。


「それじゃあ、街に着いたら全員行動開始ってことで」




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「それで、俺に話ってなんだ、アケノ」

「あの場じゃ話せないことなんだけどね」


 大分かっ飛ばしてレマの街に着き、一息つこうとしたところで呼び出しをくらう。

 路地裏に連れ込まれ、周囲に人払いや盗み聞き防止の符を大量に撒いてまでする話とは何だろうか?


「あの時の符、『ダウジング』で探してたのは二つあるんだ」


 二つ、となるとリンクスと、


「ナイフについた血の持ち主、だろう?」


 おそらくだが、あいつは何かに抵抗して、その後あの大森林の奥地にまで行ってしまったのだろう。


「ご明察。あの時の点滅はその二つが同じ場所に存在している場合に起こる反応なの」


 なるほど、あいつはその相手と同じ場所、何の目的かはわからないがリンクスをさらったわけだ。

 そして二週間経過しても反応がそのままなところから、殺せない事情でもあるのだろうか?


「つまり、魔王の城攻めしてぶっ倒して、ついでにリンクス持って帰って凱旋すればいいか」


 気合入って来た。そうと決まればしっかり準備して、


「違う」


 その目は、今までの見せていた明るい人間ではないものだ。


「あの『ダウジング』の反応は同じ場所に二人いるんじゃなくて、同じ人物であることを示している」


 一瞬、理解が追い付かなかった。


「魔王についてフェネ君から聞いた。勇者の力が高まると魔王も同時に強くなる。勇者と魔王の因子は誰にでも存在し、勇者の因子に反


応して魔王が誕生する」


 この女は何を言っているんだ?


「魔王は覚醒すると、魂のよどみが最も集まっている地点へ呼び出されて、そのよどみの力を持って本格的に覚醒する」


 じゃあ、それじゃあ、リンクスは、あの血は。


「たぶんだけど、リンクスは決着をつけようとしたんだと思う、でもそれは間に合わなかった」


 聞きたくない。俺に想像が正しければ、リンクスの奴は。


「たぶんだけど、結構な期間耐えてたんだと思うけどさ、結論を言うよ」


 やめろ、聞きたくない。


「魔王、今この世に現れた魔王の正体は、リンクスよ」


コインの裏表。

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