四十三枚目 四つの難題『聖域防衛線』 中編
ここからは比較的ダイジェストでお送りします。
―――『聖域』作成開始から十二時間経過。黒の森外縁部にて怨霊とブラックバードの戦闘が開始。
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「派手にやってるなあ」
三交代制で全員で休憩しながら食事。ギルドが用意してくれた戦闘糧食を全員で貪り食う。
「意外に美味しいじゃんか、戦闘糧食」
「マズ過ぎると士気に関わるから結構必死に味の改良をしたって話は聞くな」
今私が食べているのは麺に味をしみこませて乾燥させた乾麺、それをお湯で戻したいわゆるインスタント麺だ。
「昔はこの麺も味なかったそうだぜ?」
「ほんと、時代の進歩ってすごいわね」
獅子騎士団壊走後、『爆導索』による焦土作戦によって戦線を盛り返し、何とかこうして休憩にこぎつけることができた。
幸運だったのが、『爆導索』の影響でブラックバードがこちらをターゲットにせず怨霊狙いに動いてくれたことだ。
「おー、ああやって屈服させた怨霊を吸収するのか」
なぎ倒された怨霊がブラックバードの羽に吸い込まれる。そうやって強化された羽を羽ばたかせながら、再び怨霊の群れに突っ込んでいく。
「で、アケノにリリ、この膠着はいつまで続くと思う?」
「この怨霊を指揮している立地がブラックバードをうまく封じるまで、かな?」
「司令官、もりのなかに大きいまりょくのあつまり見つけたよ!」
手に持っている地図を指差して、この辺と教えてくれる。
「立地は森の外縁部手前に陣取っている感じだね。で、今は戦力の拡充とブラックバードの足止め中って感じ?」
「それで概ね問題ないわ。リリーズによると今あそこに見えているものはせいぜいが露払い程度の数だから、もう少し数を集めたら来るんじゃないかな?」
現在の怨霊の数は少なく見積もって千くらいというのがリリの見立て。おそらく集められるのはこの倍くらいが精いっぱいだろう。
「その根拠はどこにある?」
「レマの街に現れたサモンリッチに比べて二段は格落ちってところ。だから最低限こちらを圧殺できる量、せめて十倍の量はって考えると思う」
だから最低限でも二千の怨霊を集めるのだろうが、こっちはその間に準備を整え終えるだろう。
「で、アケノは準備できた?」
「まあ、何とかできたって感じ。三十分以内には準備終わるかな?」
準備をしているのは『爆導索』なのだが、今回は間に『狐火』と書いた符を混ぜており。爆発した瞬間に狐火があたりに巻き散る寸法だ。
「私の見立てが正しければ後一時間かそこらで相手が来るはずだから、皆準備しておくように」
うっす、と冒険者集団が動く。騎士団側もせわしなく準備を整えている。どうやら聖水を準備しており、いざとなれば後ろに置いてあるポンプでまき散らす予定だろう。
「いいなあ、あの聖水一樽で俺らの今回の報酬くらいはかかるぞ?」
それがいくつも用意されていることから、聖域防衛に臨む意志が感じられる。
「さてさて、どうなるか」
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―――『聖域』作成開始から十三時間経過、怨霊たちが数十匹がこちらの最前列へ突貫、ブラックバード数体を引き連れて混戦状態へ。
さらに十五時間経過。ブラックバード撃退完了、黒の森に控えていた怨霊群が突撃開始。推定数二千とされる。
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ひたすら光の剣を振るう。数体の怨霊をまとめて切り落とし、返す刀でさらに切る。
地脈の上で戦っているからか、非常に力が湧いてくる。
「まったく、切っても切っても終わりが見えないのは結構しんどいぞ!」
「はいはい、まだそんなに疲れてにゃいんでしょ?」
隣では逆手に構えたナイフ二本で怨霊どもを効率よく切っていくリンクス。
「くそっ、私は本来机仕事が基本だぞ!」
その後ろで必死に魔法を連打するクラップ。気軽に火球や雷を連打する姿はやはり宮廷術士という肩書に恥じないと思う。
「そー、れっ!」
魔力を剣に込めて刀身を形成、サイズはおおよそ五メートルほどか。
これを振り下ろしてからの横薙ぎでガストやゾンビどもをなで斬りにする。
「振るなら振るって言うにゃ! 危うく真っ二つにされるところだったにゃ!」
「いや、お前見えてただろ」
こっちの掛け声に合わせて素早く攻撃範囲から逃れたガストを刈り取っている。
「毎度のこと合わせるこっちの身にもなるにゃ!」
横合いから飛び出してきたガストを裏拳で沈め、その隙に迫って来たゾンビの首を一撃で刈ってくれる。
「お前たち、本当はすごく仲いいだろうに」
「いやいや、ただの腐れ縁ですにゃ」
俺の頭に向かってナイフを突き出すリンクス。そのリンクスのナイフを首の動きだけで避けて、光の剣をリンクスの足元に突きを放つ。
お互いの後ろと足元に迫っていたゾンビとガストが頭を貫かれる。
「本当に息ぴったりだな」
クラップがそう言いながら、向かってきたゾンビを氷漬けにする。
「俺の感覚だとそろそろ相手が重い腰を上げてくるはず……」
そう思っていると、森の外縁部に見覚えのある鎧を着た男たちが立っていた。
「なあ、あれって獅子騎士団の団章だよな?」
「ああ、あのいけ好かない獅子の団章だな」
「なんか猛烈に嫌な予感がするにゃ」
男たちが剣を抜く。そしてこちらに向かってくる。
「あの顔色……! 気を付けろ! ゾンビだ! ゾンビにされてるぞ!」
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―――『聖域』作成開始から十七時間目。獅子騎士団の死体よりゾンビナイトが作り出され、劣勢になる。
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「やっば、指先の感覚無くなって来た」
後方からの投擲援護を行ってたけど、投球数は優に百球を超えた。握力も下がって来たし、魔法をメインに切り替える。
「おいで、タロ、ジロ、レディ、トランプ!」
レマクラフト付近で待機していた四頭が私の周りにつく。
『以心伝心』の符に魔力を通し、リリ先輩へ交信を行う。
「私もこれから前線に出ます!」
タロにまたがり、私の周りを三頭が周りを固める。
「ゲームでよく見る騎兵の魔法使いみたいに、やってみますか!」
タロが走り出す。それなりに離れていた最前線へあっという間に到着。
「あいさつ代わりの『大理石の槍』!」
大理石の槍を繰り出してゾンビの集団を薙ぎ払う。ほかの三頭も周囲の魔物に襲い掛かる。
「かーらーの、『大理石の棘』!」
ゾンビたちの足元から大量の棘を出し、足止めを行う。
「おまけの『大地のつぶて』!」
拘束したゾンビたちに向かって棘が発射、拘束したゾンビたちをずたずたに引き裂く。
「よし、なかなかにいい威力」
「よくない! 死ぬかと思ったわ!」
おや、ヒースさん。なんか声を荒げてどうしましたか?
「あんな極悪な広域魔法いきなり使うな! 危うく巻き込まれそうになったぞ!」
「いや、そこまで極悪じゃないと思うよ?」
極悪度だったら『爆導索』とか先輩の符の方が上のような気がする。
「あれは例外。あんな符術士がいる方が常識疑う」
まあ、先輩って比較的規格外な人だし。学生時代の爆走伝説が懐かしい。
「まあ、いいじゃん。今後気を付けるから、さ!」
地面から槍を創り出して、迫って来た鎧姿のゾンビを貫く。
「あー、これが噂の騎士団ゾンビ?」
胸を貫かれてじたばたしているゾンビを見ていると、なんか死にかけのセミを見てる気分になる。
「問題はこの騎士団ゾンビの中に魔術師が結構いることだ」
あちらこちらで火柱が上がったりしている。規模が小さいことから先輩たちの魔法でないことは確かだ。
「で、あそこで詠唱してそうなローブ姿のゾンビも?」
「その通りだ!」
ヒースさんの爆発魔法がゾンビをなぎ倒す。
「さて、残り時間も短くなってきたし、私ももう少し張り切りますか!」
再び『大理石の棘』からの『大地のつぶて』を準備するのだった。
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―――『聖域』作成開始から二十時間経過。騎士団ゾンビのうち、三割を駆逐、しかし怨霊軍団の数が減らず劣勢。
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『爆導索』もすでに三回使用。周辺は焦土と化しているけど、怨霊は減らず。相変わらず戦力の逐次投入、行ってしまえばゴリ押しである。
「ゴリ押しも数が多ければ本気で有効だからなぁ……」
ひたすらファイアストームを連打し、並行で狐火を撒いてひたすら怨霊とゾンビを焼き続ける。
「いっせーしゃー!」
前列後方のリリーズが一斉に炎の矢や雷の矢を放つ。
その数実に二百本、赤と黄色の矢が敵陣に降り注ぐ。
「ぜんぶあたったよー!」
よしよし、少しだけでもこれで楽になればいい。
「なあアケノ、この間のサモンリッチみたいに怨霊の集合体になるようなことってありそうか?」
隣で軽く息を荒げながらマイスさんが剣を担ぎなおす。
「たぶんない。相手の格がサモンリッチよりも低いと思う。あれ曲がりなりにも貴族の体使ってたし」
ただの怨霊を圧縮した集合体とだと、ベースの肉体がない分能力差が出る。
「じゃあ、あれは俺の眼の錯覚か?」
森から立ち上がる巨体、目測で七メートルくらいの大きさだ。
「注目の、鑑定結果は!?」
なんか久しぶりの鑑定魔法を使用しての相手の解析。
―――ジャイアントリッチ・巨人の死体に怨霊とともに融合した魔物。
この世界に来てから、おっきいのと戦ってばっかりだな、と。
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―――『聖域』作成開始から二十一時間経過。騎士団ゾンビの駆逐を完了、同時にジャイアントリッチが参戦。
最終局面は巨大リッチ。




