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四十枚目 四つの難題『聖域の鍛冶場』

半分以上問題解決している難題です。

「で、なんでロイヤードがこんなところにいるのさ、脱走とか言ったらリンクスにこの場所チクるよ」


 お互いにテーブルをはさみ、頼んだ食事を食べる。


「いや、この場所にいるのは内緒だが、レマ入りは公式の内容だ」


 ここだけの話、とテーブルに置いてあるメモを見せてくる。


『魔王の復活場所が北の大森林に現れることが判明した』

「そりゃ難儀な話で」


 表面上は深刻な表情で頷くが、内心は大混乱だ。いくらなんでも勇者側の感知が速すぎる。

 こっちの仕込みは終わっているとはいえ現段階で魔王復活となる場所を見つけられると、困ったことになる。


「できれば、魔王復活の地点を見つけて、その地点を封印すれば魔王を復活することが無くなるからな」


 今頃は騎士団がどうやって攻めようか考えている最中だ、と明るく笑うロイヤード。


 その封印が問題だ。


 今現在、わずかな穴の開いた蓋、楔を打ち込んで地脈の流れに沿う魂の流れを制御している。

 で、一か所だけ意図的に蓋をしない場所を作り、意図的にその場所の圧力を上げている状態を作っているのだが、


 Q,この状態で開いている場所をしっかりと封印するとどうなるか?


 A.楔が吹っ飛び、世界全体が爆裂した地脈と魂の奔流に包まれて、人が住めなくなります。なお、冥府と地上の境界が無くなります。


 つまり、地上に地獄降臨。なんというか、ハルマゲドン。


「ま、実際に封印は不可能だろうな、人間の手で封印できるような物であれば太古から続く魔王との戦いはなくならないだろうさ」


 そこのところどうなの、フェネ君?


「ほう、確かに一度も成功してないけど、やられると魔王の城がどこに出るかわからなくなるから厄介、と」


 頭をなでて、パンを一切れあげる。それを受け取るや、私のスープに浸して齧っている。

 フェネ君は賢いなぁ。


「それに、魔王との戦いに備えて俺用の新たな装備一式を作るって意気込んでるしな、正直そっちが楽しみだ」


 勇者サイドも、封印できれば御の字程度に思っているだろう。やはり、最大戦力に対抗して最大戦力をぶつけることを主軸とする様子。


「ま、偵察に出てるリンクスや、宮廷術士殿がいない間、俺はこうやって酒と飯でも堪能しながら待つさ」

「残念なことに幸せはそう長く続かにゃいんだけどね」


 ロイヤードの背後に立つのは、リンクスともう一人、いかにも魔導士ですと言わんばかりのローブ姿の男。


「俺の仕事は特にないはずって思ったんだが……」

「いえ、この後ギルド長への面会や採寸、周辺貴族とのパーティなどやることがたくさんありますゆえ」


 そのまま二人に首根っこを掴まれ、引きずられるロイヤード。


「おいクラップ! そこにいるのサポーティアのアケノだぞ!? あいつは連れて行かなくていいのか!? 仕事依頼してあるんだろ!?」


 となると、今クラップと呼ばれた魔導士さんが宮廷術士殿ということになるのだろう。

 というかナチュラルに私のこと売ったよねこの勇者。


「依頼には明日からと記載しておきましたので、彼女は今すぐにどうこうしなくても問題ないので。それではまた明日よろしくお願いします」

「ええ、また明日」


 ハンカチを出して手を振る。恨めしそうにロイヤードがこちらを見てくるが、自業自得であり、私を売ろうとした点からギルティ。

 素直に連行されてください。


「さーて、それじゃあ私もゆっくりとして英気を」


 養おうとしたところ、腕を誰かにつかまれる。


「ちょうどよかったアケノ! 符が足りないから手伝ってくれ! 報酬は弾むから!」


 そのままシェーブさんに拉致られるのであった。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「確か、このあたり……」


 アケノとフェネ君、トライに描かせたこの周辺の地脈地図を頼りにここら一体の地脈を探す。


 アケノが言うには、複数の地脈が合流している場所で、瘴気溜りのようになっていない場所を探す必要があるといった。

 その条件を満たす場所について、真っ先に思いついた場所はあったが、あの場所はあまりお勧めしたくない。


 以前にアケノが結界を張った、黒の森付近のあのレンガ小屋である。


「いかんせん黒の森に近すぎますからね、あそこ」


 ピアはピアでダメなの? と言わんばかりに首をかしげている。


「お仕事してるときに悪霊がいっぱい来たら、危ないのよ」


 森を出たブラックバードや、同じく森からあぶれた悪霊が近くをうろつく危険性がある場所だ。

 できれば避けたいと思い、必死に候補地を探しているのだけど、


『ここも駄目だな。瘴気はないがあふれ出る地脈の量が足りない』


 はい、十三か所目も駄目。残る箇所もこのままでは望み薄だろう。


「やはり、あの場所が一番いいんでしょうか?」

「アケノの結界を信じていないわけじゃないけど、今このタイミングで報告をしてもしょうがないというところなのよ」


 調査期間数日で発見された場所など、だれが信じられるか? という話。なので私たちは半分無駄骨とわかりつつもいろんな場所を回らないといけない。


「おかげでピアの訓練になっていいですが」


 さっきまでその辺で遊びまわっていたピアが、こちらに襲い掛かろうとしたビックバイパーという巨大蛇の魔物に向かって槍を刺してから、ファイヤーボールで顔を焼いている。


 たまらないとばかりにビックバイパーが暴れるが、負けじとさらにもう一本出した槍で突き刺す。


 しばらくそうやって格闘を続けていると、ビックバイパーの動きが鈍くなり、最終的にそのまま動かなくなった。


「よしよし、あれくらいなら安定して仕留められるようになったね。えらいよ?」


 ピアの頭をぐりぐりとなでているフィアナと、それを気持ちよさそうに受けるピア。

 本当の姉妹のように見えるが、それ以上にビックバイパーの返り血で真っ赤になっているのをどうにかしてほしい。


 そんな二人を尻目に、私もリリーズを呼び出して、手分けしてこの周辺にあるポイントを探る。

 人海戦術こそこういった状況で役に立つものなので、出し惜しみはしない。


「これ終わったら次の場所に行くよ」

「わかりました」


 ピアも魔力で一気に汚れを弾き飛ばしてから頷いた。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




 そうして、調査から一週間が経過した。


 騎士団の人や、宮廷術士のクラップ様、アケノ様と協議した結果、

 レマ周辺の三十か所近くで、やはり一番いい場所は黒の森手前、休憩用の結界上にチカ様が作ったあの建物。


 チカ様曰く『末っ子レンガハウス』で作ったあのレンガの休憩所だ。


「まあ、元の建物もあるし、ここからはみんなで寄ってたかって準備ってところかしらね」


 そうして報告を上げた私たちは、そのまま鍛冶場作成のための護衛要員として出発した。


「しっかし、さすが王族の依頼だからみんな気合入ってるわね」

「勅命ですし、もしかしたらそれがきっかけで王室御用達なんかに採用される可能性もありますから」


 大工の人たちが細部にまでこだわった鍛冶場を作る中、私たちは持ち込んだテーブルと椅子に座りながらお茶を楽しんでいた。


「……チカもアケノの後輩ってことすっかり忘れてたわ」


 ギルドに届けられたサポーティア宛ての手紙をひらひらと振るリリ様。


 チカ様達の手紙によると『今必死にオリハルコンを土から変換してる最中』とのこと。軽く言っているが、オリハルコンは変換するものではない。


「普通、オリハルコンは掘り起こすものでしょうが……」

「そこは、まあ、アケノ様の後輩ですし」


 とりあえずアケノ様関連であれば、有り得なさそうな出来事もあるように思えてくるので非常に便利だ。

 今のところ結界が順調に働いているので私たちが特に何かをする必要がない。正確に言うと鍛冶場の設置が終わった後、トライが『聖域』を作るために火をともす必要がある。


『しかし、『聖域』を作るとなると、今この結界に回している魔力を一時的にすべて『聖域』作成のために回す必要がある』


 時間にして一時間、それも大量の魔力を垂れ流しにするため、黒の森に棲む悪霊怨霊の類が一気に寄ってくる。

 高密度の魔力はそれだけで莫大な力を霊体にもたらすとのこと。


「その代り、ピアも強くなるんでしょ?」

『然り。我もピアもその分能力が高くなる』

「案外体が大きくなったりして」


 ピアの方に視線を向ける。今は呼び出したリリーズと一緒になってそのあたりを駆けまわっている。


「ピアちゃんはやーい!」


 よく見ると微妙に浮き、スライドするように移動している。


「じゃー次は、ピアちゃん、へんしん!」


 リリ様の分身ながらすさまじい無茶な振りを見た。

 ピアが頷くと、全身から光を放ち、青い羽をモチーフにした鎧を着た姿になっていた。


「ブフォッ!?」


 私とリリ様が同時にお茶を噴く。


「うんうん、うまくいったみたい」


 何度か頷くリリーズに、普段はやや濁り気味の白い槍ではなく青い光の槍をもつピア。


「ちょっ!? フィアナ!?」

「ぴ、ピア! その姿はいったい?」


 私その姿初めて見ましたよ!?

 ピアもこっちに駆け寄ってきて、みてみてー、と鎧を見せびらかす。


「え? 最近幽霊さんの力の一部を借りることができるようになった……って、これピアを構成する幽霊の力?」


 その通り、と言わんばかりに大きく頷くピア。


『バンシーは幽霊の集合体、主人格としてのピアも存在するが、その内側には様々な幽霊が存在する』


 それくらいは問題なく扱えるだろう、となぜか自慢げなトライ。

 いやいや、私そんなことをした覚えはないのですが。


『貴様もそれくらいのことならこなせるぞ。現に我の翼を生やすことができるだろう』


 そういえばそうだった。


「で、これ以外にはなにか変身できるの?」


 待ってました、とばかりにピアが一回転すると、黒いとんがり帽子とマント、赤いシャツとスカートという魔法使いルックに変身する。


 光の槍が赤い杖状になっているのも特徴だ。


「どうも、魔法を使うときはこっちの姿のほうが魔力を動かしやすい、と」

「うん、可愛いからいいじゃない」


 私の見ないうちに、ピアも成長しているということだろう。


「うん、よく頑張ったね、よしよし」


 ピアが頭をなでられながらくすぐったそうにしている。

 この分だと、守護者の私以上にピアが強くなりそうな気がする。それと成長した姿というものが現実味を帯びてきた気もする。


「私も頑張らないとね」


 手に持つ愛用の槍を見て、そう決心するのだった。

なので、ややあっさり目に終わります。

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