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一枚目 白いお部屋

初めまして、藤野千歳と申します。

こんな話ですが、気楽に読んでください。

 ―――これより、世界を起動します。プレイヤーは準備をお願いします。


 いきなり聞こえてきた声に私はむくりと起き上がる、目の前に広がる景色は真っ白。上下左右どこもかしこも白。


 ―――対象生物の認識を確認。三次元ベースに世界を組み直します。


 今まで何もかも白い世界に、地面が出来て、立体が出来上がる。


 ―――世界生成完了。これより対象者のチュートリアルを開始します。


 なんだろう、私は昨日いつも通りに帰宅してチューハイ飲んでチーカマ食べた後にホットアイマスクして寝ていたはずなのに、いつの間にかこんなわけのわからない場所にいる。


「夢かな?」


 空川明乃は、現在の状況をそう分析した。きっとその方が幸せだ。


 ―――ようこそ、あなただけの世界へ! これからあなたの能力を説明します!


 なんか聞こえてくる声が遊園地のアトラクションのお姉さんチックになっている。ハイテンションでいるのは大変そうですね。


 ―――ここはあなたがこの先生きていく世界で、生き残るために技術を習得する場所です! 習得することで生存率が上がりますので、気張って覚えましょう!


 よくわからないけど、わかったことにしよう。


 ―――これからあなたが向かう世界は、剣と魔法の世界です。運動不足の現代もやしっ子では逆立ちしても生き残れないでしょう!


 何気に辛辣だな、この夢の中の声。ともかく、まだ付き合おう。明晰夢のようなので起きるのはいつでもできるのだろう。


 ―――これまで旅立った人数は三人、三人とも己の力を磨いて旅立ちました!


「ところでその三人はどうなったの?」


 ―――その質問には回答できません。


 さいですか。


 ―――あなたの習得する能力は、力のカード化です! セットで魔法習得もついてきます!


 ありがたい能力ですね、セットでついてくる魔法も魅力的ですね。何よりもセットで安いのがいい。

 よくわからないけど褒めとけば悪い結果にはならないだろう。


 ―――まずは、わかりやすくカード化を試しましょう!


 目の前に現れる白い立方体。それが私の手に落ちる。


 ―――この立方体を思いっきり握ってください!


 感触は石の様で、握っても壊れない。


 ―――では、試しに自分の握力をカードにしてみましょう! 方法は対象を指定してカードになれと念じるだけです!


「ふむふむ」


 握力よカードになれ、と念じると目の前にタロットカードくらいのカードが現れるのだが、


「なぜに握力と見事な行書体で書かれているのかな?」


 それはもう、見事な毛筆で書かれていた。非常に力強い。


 ―――では、カードを自分の胸に押し当ててください! その微妙に貧相な胸に!


「やかましい! これは貧相じゃなくて体に対してのバランスを取ってるだけだい!」


 Bあるもん。身長は155cmだけどBあるもん。

 カードを胸に押し当てると、そのままカードが体の中に溶けるようにして消える。

 その瞬間、私の掌に淡い光が宿る。その光に従うように先ほどの立方体を握ると、そのまま握りつぶせてしまった。


「わお、これは便利」


 ―――成功したようですね! 自身の身体能力に関わることであれば持続時間は2時間となっています! 加えて様々な力をカード化できます!


 なるほど、自身の体であれば2時間効果を発揮か。他人の場合はどうなんだろう?


 ―――相手方の能力にもよりますが、目安1時間です! 効率よく使いましょう!


 補足ありがとう。試しに自然治癒のカードを作ってみる。そしてわざと唇を噛んで傷を作った後に自然治癒を使う。


「おお、すごい勢いで傷が治ってく。でも体力使うな……」


 少しだけ怠くなった体を支えつつ、さらに試す。


「じゃあ、加速!」


 言葉と共に自分の体が早くなるイメージを込める。そして出来上がったカードを使ってみる。

 しかし何も起こらずにカードが消えてしまう。


 ―――概念系のカードは使用する際にその概念に則した行動をしていない場合は、そのままカードが消費されます! 無論カードは戻ってきません!


 なるほど、また加速のカードを作り、今度は走りながら使う。するとあっという間に普段のトップスピードを超えて、際限なく加速を続ける。

 足の動きは変わらないのに速度だけは上がっていく感じ。側から見たらすごい違和感なんだろうけど、残念ながら見てくれる人がいない。


 ―――それでは、魔法の説明に入ります! あなたが覚える魔法は炎、氷、雷、鑑定の四魔法です。それぞれ使い込めば進化していくので大切になさってください!


 なんか微妙に育成物になっている様な気がする。


「これもイメージってことなんだろうけど、とりあえず」


 指先に火が灯るイメージをすると、ライターで点火したような火が出る。同じ要領で指裂きに冷気が集まるイメージと電気が集まるイメージで魔法を作成する。


 ―――鑑定の魔法は物体の鑑定はもちろん、相手の身体状況や種族などを確認することができます。無論自分にも使用可能です。


 自分の掌を見て意識すると、現在の状態と表示される。体調は良好で、魔力はそこそこと表示されている。

 筋力など数値化されているわけではないが、大体どれくらいの物であれば持ち上げられるなどの基準が自分に伝わる。魔力の付いてそこそこと表示されるのはおそらくカード化と魔法を使ったことが原因だろう。


 ―――カード化には作成に応じた魔力を使用します。魔法に比べて多く魔力を消費するものの、カード使用時は魔力を消費しないので、休日に作成するといいでしょう。


 ライフスタイルまで言及してくるとはマジパネェです。


 ―――鑑定魔法をかけるときは何か結果がわかるというイメージで構築するといいでしょう。


 目の前に急に現れる銅像。

 とりあえず何か結果がわかるというイメージでいればいいが、目の前に出てきた銅像にそれを求められても困る。

 しかし、この銅像は筋骨隆々ながら、芸術品に通じる物を感じる。

 ものは試しか。


「注目の、鑑定結果は!?」


 結果がわかるというイメージで今の言葉を叫んだところ、銅像についての説明が表示される。


『試しの銅像。鑑定魔法の練習用の物体。価値はない』


 どうやら、私の審美眼は大したことないようだ。

 その後、しばらく魔法をカード化したり、魔法を練習してみたりと繰り返しているとMPが切れてしまった。


 ―――これでチュートリアルは終了です。お疲れ様でした! それでは新たな世界でも頑張ってください!


「やっと目が覚めるのか.……長かった」


 右太ももにはカードホルダーが巻かれ、そこには先ほど作成したカードが差してある。今さっき何か特典ということでもらった。

 そして白い世界が一気に黒く染まり、次の瞬間には緑色の世界が広がっていた。


「はい?」

はじめてのいせかい(サバイバルの練習付き)

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