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15 シイノトモシビタケ…… 私の心の故郷!

「これでしばらくお別れですね。寂しくなります」

 ゆかりは寂しそうにうつむいた。

 無言の少女、眞白ましろは目に涙を浮かべて首を振っている。

 おばさん毒美ぶすみは保護者のように後ろで見守っていた。


「また会えるわよ! なんてったって秋からは私が女王なんだから!」

 静峰は腰に手を当て、残った片手の拳を突き出した。

 にこやかな笑顔の袋鶴茸ヴォルヴァタとツンと静かな微笑の毒鶴茸ヴィロサは後ろに控えている。


 ゆかり達はアンミン洞窟を抜けトキポキ林の豪邸じっかへ帰るのだ。

 早朝に女王シルキー一行は山登りを始めたので、料理人ポルチーニはもういない。

 静峰は南へ向かう。

 当然行く先はひとつしかない。


「静峰様、袋鶴茸ヴォルヴァタ様、それに毒鶴茸ヴィロサ様。お体に気を付けてっ!」

「ごきげんよう」

「うんっ、またね!」

「また街探索でもするだー」


 鹿執事や毒美ぶすみ達とも挨拶を済まし、別々の道へと旅立った。


 あっさりしているようにも見えるがそうではない。

 物足りない気持ちはいっぱいあった。もっと一緒に居たい気持ちもあった。

 本当は朝出発の予定だったのに、昼まで話し込んでしまっていたのがその証拠だ。


 しかし、日常に戻らなきゃいけないのだった。


「私の槍壊したの貴女ですよねコン……」

「え、えへへ」

 

 何はともあれコンコン村を出発するのだった。



 結局、狐野槍から説教されてさらに遅れた次期女王と護衛達が目的地に着いたのは夜だった。

 丁度良かったとも言える。


「帰って来たよ!」


 闇夜に浮かぶ満天の星。

 地上を包む星屑ほしくず達。


 カンテラを持った小さな少女が待っていた。

 静峰と同じ緑の眼をした発光少女。


「本当に帰って来てくれたのね」

 白いワンピースを小さな左手でぎゅっと握りしめている。

 眼には涙があふれ、流れていた。


「当ったり前でしょ!」

 ゴスロリ娘は右手の人差し指をちょこちょこ揺らす。


「き、綺麗だー」

「さすがは次期女王ですわ、こんな風情ふぜいのある場所を知っているなんてっ」

 袋鶴茸ヴォルヴァタ毒鶴茸ヴィロサも一緒だ。

 白い天使の方は最終試験で倒されて以来、静峰を完全に認めているようだ。

 まだ一日しか経ってないが、余計な事も言わず勝手な事もせず付き添っている。


「あ、私、次期女王になったんだ! 紹介するね。私の護衛! 袋鶴茸ヴォルヴァタ毒鶴茸ヴィロサ!」

「うん……」


 わずかに眼を反らした少女は少しだけ寂しそうな声を発していた。


「それで! ここにいるのが私の親友! 椎野灯しいのあかり!」


「よろしくだー」

「じょ、女王様の……! 毒鶴茸ヴィロサですっ!」

 袋鶴茸ヴォルヴァタはにこやかに手を上げ、毒鶴茸ヴィロサは片膝をついた。


 椎野は顔を上げ、心持ち柔らかい顔になった。

 友達が静峰しかいない発光少女は会話経験が若干少ないので、表情の変化がわかりにくいが、これは最上級の安堵の顔だ。親友と紹介されて嬉しいのである。


「よろ……しく」


 ◇


 夏の終わり、静峰は椎野も連れて城へと向かった。


 新しく次期女王によって相談役に任命された椎名の部屋が用意された。

 女王交代の準備もどんどん進んでいく。


 それから、静峰の悪戯で砂糖と塩が入れ替えられたり、それで作ったケーキが(驚くところは何もないが)静峰の物だと判明し涙ながらに完食したり、いろいろな事があった。


 式では、科学者シロシベ龍谷りゅうこくから悪戯道具をもらい、料理には緑の美味しいスープが提供され、街ではゴスロリが流行っていた。


 個性的な服のきのこも残っていたが、新しい服に挑戦しようとしてゴスロリ服を選ばなかったのは第四試験で火群ほむらに助けられた蜘蛛女くらいだ。

 彼女だけは火群ほむろと同じへヴィメタファッションだった。


 ここは今日も平和です。


 そして、ここは愉快です。


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