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12 力持ち! タマゴテングタケ!

 白壁の立ち並ぶ城下町。

 そこの中央広場で最終試験の場所の発表がある。


 そこに集まるのは、次期女王を見ようと集まる民衆、第四試験に納得いかない元女王候補、試験の実行委員、そして女王候補だった。


「次期女王はあのどっちだろう! 気になるなー」

「くっそ、本当なら私があの大理石を独り占めにできたのに」

「私は赤いきのこを応援するわ」

「あんな試験認められっかよ!」

落ち着きなさい(カーム トア)。負けは負けよ」


 静峰は緊張していた。

 対する火群ほむらは落ち着いている。


 護衛役の猛毒御三家ロイヤル ナイツ毒鶴茸ヴィロサは微笑んで集まるきのこを見渡していた。


 そして、猛毒御三家の白卵天狗茸ヴェルナ卵天狗茸ファロイデスを引き連れた女王シルキー陛下が登場する。


 場に緊張が走る。

 さっきまでの声が消えた。


「突然の次期女王決定戦に参加してくださりありがとうございます」


 女王シルキーは軽く頭を下げる。

 溢れる気品に目を奪われるきのこ達。


「最後の試験はゲンエイ林とコンコン村の間で行います。向かいましょう」

 相変わらずせっかちな女王シルキーは白く大きい荷台に乗り込み、次期女王候補と実行委員を誘い入れた。


 女王シルキーの後ろの席に白卵天狗茸ヴェルナ

 そのさらに後ろの席に静峰、火群ほむらゆかり、鹿執事、紅天狗茸ムスカリア科学者シロシベが乗っている。


「コンコン村かー。そういえば、眞白ましろと出会ったのはその村を出てすぐの所だったな」

「その節はありがとう」

 静峰はゆかりと思い出話に花を咲かせていた。


 荷台を引いて運ぶのは卵天狗茸ファロイデスだ。

 黄色い髪、ネクタイとジーパンが印象的な長身のきのこだ。

 進む度に大きな胸が揺れている。


 彼らの背中を見送る他の一団と共に毒鶴茸ヴィロサは残っていた。

 観戦希望者も元女王候補も現女王シルキー陛下に魅了されて固まっていたのだ。


 風が木を揺らす音が聞える。


「最後の試験内容を教えるわ」

 きのこ達はようやくハッと我に返った。

 ここまでの試験に不満顔の集団に毒鶴茸ヴィロサが微笑む。


「それは私に勝つことよ」


「……」

「……」


 最強のきのこに勝つ、それが最終試験だったのだ。

 女王交代を支持していない猛毒御三家ロイヤル ナイツに負ける気は全くない。


 最初から腕っぷしの強さが重要視されていた。

 当然、これまでの女王審査に不満を抱いていたのは強者ばかり。


「けっ、それじゃ最初から無理じゃねえか!」

 だからといって、猛毒御三家ロイヤル ナイツの強さを知る者は戦う前から勝負の結果くらい想像できる。


「さて、ここで私に挑戦してもいいわよ?」


 ここで挑めるのは、相手の力量を測れない怖いもの知らずか、知って尚戦う信念を持つ者だけ。

 酒をごくりと飲んだ黒肥地。


「わ、私が行きますわ!」


 かつての繁栄を取り戻したい彼女は果たして前者だったのか後者だったのか。

 風がひゅうひゅう流れる。


「そう」

 彼女たちの距離は一瞬にしてなくなった。

 黒肥地と周囲のきのこ達の眼が大きく見開かれた。


 それから、ぽたりぽたりと黒い液体を垂らす黒肥地の眉間をひと突き。

 黒い着物のきのこは倒れた、一滴の黒もつけることができずに。


 ◇


 一方の女王シルキー達は農村で一休み。

 お日様は頭上高くにあり、明るい。


「あんれー、女王シルキー様が、こちらにいらっさるのは、なんでだべ?」

 淡い褐色のつなぎ姿の娘がくわを下ろし、一行を眺めている。

 農作物の九割を生産するというこの村の長だ。


「次期女王を決める試験をしに北上しているのだ」

 卵天狗茸ファロイデスは北を指さした。


「そうかー。それは大義だべ」

「今日はここで一泊したいのだが、宿はあるだろうか?」

 まだ昼だが、ここで休憩するらしい。

 女王シルキーが朝型だからそれに合わせてるのだ。


「わかったべ。こっちくるいいさ」


 ◇


 その夜、再三試験の後静峰と別れた袋鶴茸ヴォルヴァタはトキポキ林にいた。

 正確には、トキポキ林東南部で戦っていた。


 なぜか?

 それは闘技場の工事するきのこ達を守る為だ。


 何から?

 緑青色の娘とその同志からである。

 現在そこは、腐女子であり一度静峰に集団を半壊させられた緑青姫乃ろくしょうひめのの腐女子増量作戦による被害を受けていた。


 袋鶴茸ヴォルヴァタ相手に個の力では全く勝ち目はないはずだが、数の力は圧倒的で工事を守るだけで精一杯だった。


「ほもほもほもほもほも」

「落ち着くだー」


腐腐腐ふふふ、貴女ももうすぐ同志」

 昼夜関わらず雪崩のように攻めてくる娘達に袋鶴茸ヴォルヴァタも限界が近づいていく。

 ついに片膝をついてしまう袋鶴茸ヴォルヴァタ


「あらっ、貴女こんなところにいたの?」

「お前、は……」


「え? 何、私の同志たち、どうしたの?」

「ほもっ……」

「ほもほ……」

 次々倒れる腐女子達。 


 やってきたのは別行動中だった白いきのこ毒鶴茸ヴィロサだ。

 最強と言われるきのこは昼から休憩中だった女王シルキー一行を通り過ぎ、夜まで走って闘技場の下見に来たのだ。


「早く戻ってくればいいのに」

 毒鶴茸ヴィロサ袋鶴茸ヴォルヴァタを見つめる。

 どちらも苗字みょうじはアマニタ。

 テングタケ属だ。

 そして、南を避けていた袋鶴茸ヴォルヴァタのかつての居場所は王城である。


 王城の一般兵。

 名も知られぬ強者の揃う王城護衛隊のただの兵だった。


「兵など無意味だと思っているくせに何言うだ!」

 珍しく袋鶴茸ヴォルヴァタは声を張り上げた。

 毒鶴茸ヴィロサは笑って肩をすくめる。


「そんな事ないわ。今回だって、貴女のおかげで闘技場が無事完成したのよ」

 手の足りない部分を補ってもらえるという意味だ。

 因みに、まだ工事中であるが、それは重要ではない。


「女王……、本当に次期女王を決めるつもりだか?」

「そんなわけないじゃない? あの赤い火の粉の御嬢さんは一応猛毒種スプリームだけど女王の器じゃないわ。もう片方なんて赤い光の欠片もなかったわ」


「まさか、緑眼のきのこだか!」

 疲れのせいか、座り込む袋鶴茸ヴォルヴァタの顔が明るくなる。


「ん? ああ、そうよ。最後の試験は私を倒す事だから無理に決まってるけどね」


「よかっただー」

「わかってるの? 最後の相手は私なの。ここまで誰が残ってても意味なんてないのよ?」


 ◇


 そして、同じ頃の農村。


「ふふふ」

 静かにほくそ笑むきのこがいた。

 手には赤いリボンを持っている。


 そっと歩いていく彼女の先にあるのはドアのないわら小屋。

 眠る女王シルキーがいるところだ。


 距離がゆっくり縮まっていく。

 あと八歩。

 あと七歩。


「おめー、何やってんだ?」

 白いロングコートの少女、白卵天狗茸ヴェルナだ。

 女王の護衛がここにいないわけがない。そんな事は誰にでもわかる事だ。


「それはリボンをつけて可愛くしようと……。え?」

 いや、静峰にはわからなかったらしい。


 そして、随分護衛の白卵天狗茸ヴェルナにきつい説教されるのでした。


 ここは今日も平和です。

毒鶴茸ヴィロサにやられたきのこ達は気を失っているだけで、命に別状はありません。

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