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11 御三家登場! 最強のドクツルタケ!

「あ、あの……」

 予想外の和やかな雰囲気に思考が止まった静峰に小娘りゅうこくが声を掛ける。

 小さく可愛らしい声は誰にも届いていない。


 上の階から降りる為にさっき使ったばかりの階段がいつの間にか消えている。

 ここ地下三階にも天井が空に見える仕掛けがあるらしく、宙まで階段が続く奇妙な光景だった。


「あ、あの!」

「え?」


「静峰さんは何かしにトンカン村に来たんですか?」

「そ、そうだった! 地下四階に行きたいの」


「あ、村長さんに用事なんですね。こっちです」

「そう……なの、かな?」

 ぴょんぴょん跳ねる小娘りゅうこくの後ろを、釈然しゃくぜんとしない表情で走り、笑って騒ぐ村娘きのこ達の間を抜けて行く。

 小娘りゅうこくに驚いた様子はないので、これが村の日常なのかもしれない。


 そして、古びて今にも崩れそうな小屋に辿り着く。

 村外れにある木とわらでできたこれが村長宅。

 どう見ても村八分です……。


「もしかして、村長嫌われてる?」

「そんな事ないですよ!」


 その反応に少し安堵あんどする静峰を置いてけぼりにして、小娘りゅうこくは無言で小屋に入る。

「挨拶いらないんだ……」


 中は空っぽで生活感もない。

 ちりが積もっているのがいい証拠だ。

 村長は失踪しっそうしてしまったのではないかと疑うには十分すぎる。


 がちゃがちゃぽよんへろへろぱー


 変な音を響かせながら、小屋の中に階段ができた。

 今回は螺旋らせんではなく直線だ。


「行きましょう!」

「え……うん」


 どうやら村長の家は地下だったらしい。

 それにしても、この村の技術力はさすが王国の開発局と呼ばれるだけある。


「ヒャヒヒ、よく来たね。嬉しいヨ」

 全身が痙攣けいれん状態のきのこ、シロシベである。

 地下一階にいたはずなのに、隠し通路でもあったのだろうか。


 見た目は家具も装飾もない白い部屋だった。

 村長の家というより牢屋と呼ばれる方がしっくりくる。

 やっぱり村八分……?


「来たわよ? これでいいの?」

 いぶかし気な視線を向けた。


「合格ダよ。簡単だっただロ? ヒャヒヒャヒヒ」

「このきのこのおかげだけどね」


「あ、あの! 何がどういう……」

 小娘りゅうこくは困惑していた。


「いヤ、この緑の、ヒャヒ、きのこがね。女王選抜の第四試験キョヒハヒ、を通過したダけだよ」


「ええ!?」

 小娘りゅうこくは目を丸くして尻餅をついてしまった。

 一緒にいたのが女王になるかもしれないきのこだと聞かされれば驚くのも仕方ない。

 静峰は照れている。


「さて、もう片方もキチャッたね。ヒヒ」


 その言葉に振り返る。

 そこには下半身が蜘蛛くも、上半身は着物姿のきのこがいた。

 綿菓子のようにふわふわした下半身に乗せられているきのこの姿も見える。


「つ、つきました」

「あー、やっぱり火傷になってんだろ。」

 走ってきたのか蜘蛛女は顔を赤らめている。

 その後ろから出てきたのは女王候補の火群ほむらだ。


「だ、大丈夫だから……」

 蜘蛛娘のふわふわ綿菓子は少し焦げていた。


「さてと、イッてみよう」

 その言葉が鍵だったのか。

 床が、いや、部屋が少し振動した。


 身構える静峰。

 笑って見上げる龍谷りゅうこく


「え? えええ!?」

 がたがたと部屋に振動が走った直後、部屋が動いた。

 上へ下へ、右へ左へ揺れる揺れる。揺れまくる!


「うわー、これ絶対、秘密基地や隠し部屋持ってるよ……」

 静峰は白い部屋中を転がりながら呟いた。

 村八分どころか、村長のシロシベは豪邸や隠し研究所を持っていて日夜研究(おあそび)している。


「そろそろ着物から洋服にしようか悩んでたけど、こういうのも……」

 蜘蛛女は火群ほむらの服をちらちら見ている。

 度胸があるのか無警戒なのか、部屋が動いてる事には気づいてすらいないようだ。


 そして、天井が消え、壁が消えて行く。


「静峰様!」

 鹿執事、ゆかり、そして地下一階にいた他のきのこ達が揃っている。

 きょとんとする静峰、その後ろに隠れる小娘りゅうこく、眼鏡をくいっと動かす火群ほむらに顔の赤い蜘蛛女。


「試験の通過者、ダ、よ?」


 音はない。きのこの動きもない。

 まるで時間が止まったかのように、静寂が場を支配していた。


 しかし、それも一瞬の事。

 すぐに言葉の意味を理解したきのこ達は顔を見合わせ始め――

「おおおぉぉぉぉ」

「ね、姉さん……」

「かっこいい~!」

 数々の声が上がった。


 歓喜の声も、他の女王候補応援者の悲しみの声も。

 第四試験の通過者は静峰と火群ほむらだけだった。


「最終試験の場所ハ城下町でヒャヒ、発表だよ?」

 トンカン村から城下町までは川を渡るとすぐだ。


「お見事です。静峰さ……」

 しんっ……。


 場が凍るように静寂に包まれた。

 猛毒種スプリームも臨戦態勢で動きを止めている。


 ぽとっ。

 誰かの汗が落ちる。


 圧倒的な存在感をたずさえたきのこが現れていた。


 死の天使と恐れられる真っ白いきのこ、アマニタ・ヴィロサ。

 白いワンピースに長いつばの帽子を身に着けた最強のきのこ


 女王直属の護衛団『猛毒御三家(ロイヤル ナイツ)』の一員でもあり、王国の忠臣でもある。


「貴女達が残ったのね。私は毒鶴茸ヴィロサ。次期女王候補である貴女達の護衛よ」

 猛毒種スプリームの、その頂点にいる猛毒御三家の前には殆どのきのこは対抗できない。


「行きましょう。候補さん達」


 ◇


 一方、その頃の王城。

 女王シルキー陛下は夕食を食べていた。

 その側には猛毒御三家ロイヤル ナイツ白卵天狗茸ヴェルナが立っている。

 真っ白いロングコートと卵形の帽子が特徴的なきのこだ。


「最終試験の準備は順調かしら?」

「ぼそぼそ」

 白卵天狗茸ヴェルナは声が絶望的に小さかった。


 しかし、問題はない。

 白い帽子がぱかりと開き、ギザギザの歯を見せる。


「当たり前だろー。でも、合格できる奴がいるとは思えねーな!」


 女王シルキーは微笑む。

 白卵天狗茸ヴェルナは表情を変えない。


「でも、合格したら認めてくれるのでしょう?」

「ふはっ、まーな。できたら、な」


 最終試験で確かめられるのは強さだ。


 ◇


 つんつんっ。


「もう、静峰さん! つんつん禁止って言ったじゃないですかー」

 じたばたする龍谷りゅうこくを眺めて静峰はにやにや笑っている。


「言ってた?」

「い、言ってなかったかもです……」


「ちょ、ちょっとさっさと付いてきなさいよ!」

 毒鶴茸ヴィロサが叫ぶ。


 ここは今日も平和です。


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