09 私が主役のファッションショー
「さぁ! やってまいりました! 女王候補のファッションショー! 司会は私、鹿ノ舌洋子がお送りします!」
完全にのりのりの鹿執事である。
「まずは、二三河アミ様! 真っ黒アフロと網目状のスカートが個性的! ヘソ上までの花柄シャツの可愛さと見た目のかっこよさがうまく調和しています。身体も細いのに胸は大きい! 羨ましいです!」
腰に手を当て、スカートを手繰ってポーズを決める娘。
審査員は紅天狗茸と観客全員。
真剣に見入っている。
「シャロン・ウスタ様。橙色の短髪に緑の帽子が柿を連想させる! スカートも同じく柿です! かわいらしい!」
「そしてそして、お次は火群カエン様! 燃えるような紅い髪、胸元しか隠さない短いシャツ、ジャケットと短パン、ブーツは黒くかっこいい! 橙色の眼鏡も似合っています!」
へヴィメタルファッションである。
「どんどん行きましょう! お次は露吹乳子様。け、けしからん胸です! こんな大きいのは見た事がありません! 橙色のワンピースもところどころ破れていて卑猥です!」
「ここまで毒種や猛毒種ばかりでしたが、ここまで食適種も残っています! 橅占地! 白いタンクトップに白ジーパン、素朴な娘です! ブナの葉のネックレスと茶色く尖ったひらひらのスカートが唯一の個性! 幸せそうな笑顔もいいですね!」
「次は黄色い幼女、苦栗・I・マロン! 五つ子のお姉さん役! 黄色いワンピースにちょこんとした靴、栗のネックレスが全て可愛いです!」
観客席には第二試験で落ちた娘もいる。
「けっ、あんなの子ども(ガキ)じゃねえか」
例えば、春のアミガサ三人娘の赭熊網笠茸は料理で失敗していた。
料理というより……包丁で切っただけの素材だったと言う方が正しいかも知れない。
「それでもここまで残ってるけどね!」
苦栗姉妹の残り――長女以外は脱落していた――も観客席にいた。
全員猛毒種なので、春のアミガサ三人娘とは直接戦うには数も強さも分が悪い。
「落ち着いて! 赭熊網笠茸。戦いに来たんじゃないのよ」
「わー、怒られてるー」
手足に防具装備の幼女も混ざって観客席の一部は少し荒れていた。
こうしている間にも娘の紹介は続いていく。
かつては名家の娘だった黒肥地、もこもこ服の袋鶴茸……。
そして、ついに静峰が登場する。
「最後は静峰月夜様っ! ……っ!?」
「わぁぁぁぁあああああ」
「貴女が優勝よぉぉぉぉ」
「素敵ー!」
「私の槍壊したのお前かコ~ン?」
「きゃーー」
「え、ええと……」
困惑する鹿執事。
「月夜! 月夜! 月夜!」
観客は手を上げて叫んでいる。
白熱し過ぎである。
静峰は呆気にとられていたものの、すぐさま頭を切り替え様々な恰好で観客を魅了する。
これがきっかけでゴスロリ時代が巻き起こる事になるらしい。
◇
試験結果発表が終わって一息。
「落ちただー」
見事な体型がもこもこ服で隠れてしまったせいか、袋鶴茸は第三試験を通過できなかった。
「ここまで残っただけでもすごいですよ」
「お嬢様の仰る通りです。何と言っても次期女王決定戦ですからね」
「そうそう。元々は私が強引に誘っただけなのに、ここまで残るなんて!」
拍手喝采だった静峰は次の第四試験がある。
「次はどこ行くだー?」
「次はトンカン村ですわ」
開催地はカワモテ街から南下した所にある。
城が見える村だ。
「トンカン村っぺ? そうだかー」
どこか悲し気に見える袋鶴茸。
次期女王には興味なさそうだったが、自分も受けれたかもしれない試験の開催地に行くのはつらいのかもしれない。
「物造りで有名な村で、発明や開発の中心地です」
新たな発明品はトンカン村で生みだされ、西にある工場で量産化されるのだ。
村の東には王城、南には城下町がある。
「陛下様も来るかもしれないね!」
「そうだなー。でもー、私はついていけないだー」
袋鶴茸は少し暗い。
静峰は驚いて仰け反る。
紫と鹿執事は黙って見守っている。
「え? どうしたの?」
「それは秘密っぺー。最後の試験はどこでやるだー?」
「まだわかりませんわ」
紫が肩を落とす。
静峰も寂しそうだ。
「そんな悲しい顔しないで欲しいだー。女王になれるよう応援してるっぺー」
いつの間にかいるのが当たり前になっていた袋鶴茸。
彼女との別れがきゅっと静峰の心臓を締め付けた。
しかし、旅は続く。
静峰、紫、鹿執事は南下する。
トンカン村へ。
◇
「えっと、ここだよね?」
「そのはずですわ」
集まっている女王候補や観客も混乱している。
村があるはずなのに何もないのだから驚くだろう。
「けっ、何もねーじゃねえか!」
「どうしてかしら? すぐそこに城も城下町も見えますのに」
「そうですわね。え? な、何でしょうか、これは? 地面がおかしいですわ!」
地面がたたたたーんと開いて、出てくる巨大茸。
眼を閉じて体育座りをしている。
「あら、来ましたわね」
いや、もしかしたら、鬼なのかもしれない。
座っていても静峰の背より高く、頭に角が生えている。
「あれー、お姉さん、重そうだねー!」
「うっ……、うふふ。試験会場は下ですわ」
気にしていたのか、顔に悲壮感が漂っている、
娘のあまりの存在感に気づかなかったが、娘の前には階段が出来ていた。
地下へと続く階段である。
「い、行っても大丈夫なのかな?」
静峰も、他の娘達も心配そうな顔をしている。
「行きましょう」
「いえ、お嬢様、私が先に確認してまいります。静峰様、お嬢様をお願いします」
紫を手で制し、鹿執事が階段へ向かう。
しかし、先に猛毒種達が進んでしまった。
良くも悪くも彼女らに敵は殆どいない。
「うわっ! なんだ、こいつ!」
「ヒャヒ、もう来タの? ここが、そう、第四試験の会場だよ?」
声が聞こえてくる。
ここは今日…… は不穏です。




