プロローグ
「本当に? せっかちすぎるのではなくて?」
「よいのです」
かつんかつん、と音を響かせ迷う素振りもなく大理石の床を進んでいく。
純白のドレスを覆う大きな網目のマントの前面部を握り、頭には白銀の王冠を乗せたその娘は女王陛下だ。
ここは陛下の住居である純白の王城。
水は重要なので室内に噴水付きのため池があり、陛下に話しかけている陛下公認の侵入者の主犯モリーユ・エスクレンタは仲間と共にその脇に寝そべっていた。
左肩部分が切りとられたような妙に色気のある白いドレス姿の娘である。
複雑に絡んだ黄土色の髪を揺らし、穏やかな笑みを晒す。
「あらあら、残念です事」
陛下の後姿を見送って微笑むのは暗褐色の髪を尖らせた娘。
網笠茸の姉貴である。
こちらは茶色いスカートに切り込みが腰まで入っている。
姉妹揃って妙な色気を放って危ないが、春のアミガサ三人娘の暴れん坊だけは物理的に危険な要注意きのこ。
「ふっはー。これじゃ俺様が女王になっちゃうじゃねーか!」
そんな娘達の会話を背に、護衛を引き連れた女王は自分の背丈の倍ほど高い白色の扉を潜り抜ける。
城の二階にあるテラス。
重要な知らせがあると発表があったので、下には沢山の娘達が集まっていた。
「私に残された寿命はそう長くはないでしょう」
女王は短命な種類の娘だった。だからといって、切羽詰まった状況では全くない。
ずらっと並んだ娘達もそれは十分知っていた。
何かにつけて焦り過ぎの傾向がある陛下の言葉は誰も不安にしない。
むしろ透き通った声にも気品があり、重い話にも関わらず集まった娘達の眼をうっとりさせていた。
「次の女王は私のように儚い存在ではなく、強く逞しい娘が相応しいと考えます」
穏やかに見上げる住人達とは対照的に、とても真剣に女王は語っている。
「私はここに次期女王決定戦の開催を宣言します!」
女王の優美な姿と声に魅せられていた娘達も事態を飲み込み慌て始めた。




