中二病な兄×可愛い妹
ジャンルは【コメディー】
私の名前は楠原 莉音小学5年生です。背は低くて見た目は童顔、黒髪ツインテール、自分はいかにも妹属性だなーと思う。でも、年の割りには大人びた考えの持ち主だと親や友達や先生から言われます。
それもそのはず、実は私には3つ年上のお兄ちゃんがいます。お兄ちゃんは中学2年生、名前は漆黒の覇者アレース…ごめんね私のお兄ちゃんはちょっとあれだから。こう呼ばないと返事すらしてくれないの。
さて、気を取り直してお兄ちゃんの本当の名前は楠原 リヒト。現在、邪気目系の中二病を患っております。だから、まともな私は大人びた考え方を持っていると言われるんだ。
「ふははは、神に選ばれし聖なる巫女よ。今宵の月が赤く染まる時、なにが起こるか知ってるか?」
はい!お兄ちゃんの痛い発言を訳すとこうなります。
意味『莉音、今日はなんの日か知ってる?』
「ハロウィンだよね」
ちなみにお兄ちゃんは、今、両親は買い物に出て行っていないけど普段、両親のいる前でもこの痛い発言をする。多分、友達の前でもやってるんだと思う。それでも、お兄ちゃんを友達だと言ってくれる友人Aさんには感謝しないと。逆に言えばお兄ちゃんの友達はこのAさんしかいないっていうことになるよね。
あっ、お兄ちゃんの友達の少なさに涙が出てきた。
「そう、今宵は人ならざる者が冥界から現世に這い上がり狂喜乱舞する祭日。聖なる巫女よ、悪魔から己の身を守るためには神より伝わる伝説の呪文を言わなければならない。今からそれを伝える。良いか、それはだな【我が身に宿る8つの眷属よ!主の手と足となり天の光をもって闇に潜む悪魔を蹴散らせ!】言わなければ刑罰を与える!」
意味『だから、トリックオアトリート。お菓子くれないと悪戯するよ』
「飴ならあるよ。はいどーぞ」
よくもまぁ、息継ぎなしにこんな長いセリフを言えるよね。ある意味すごいよ。私は心の中でお兄ちゃんを賞賛しながら事前に用意していた大きな袋から飴を数個、渡しました。
「私からもトリックオアトリート」
「ふはは、オレは漆黒の覇者アレースだ。そんな呪文など必要ない。この魔剣さえあればオレは無敵なのだよ」
意味『ごめんね〜用意してなかったや』
「じゃぁ、悪戯するね」
私は飴と共に用意していたビデオカメラを大きな袋から取り出し、電源スイッチを入れました。そして頭に、はてなマークを浮かべるお兄ちゃんにカメラを向けて笑いかけます。
「なんだ、その黒いフォルムの機械は。まさかそれは伝説のチートアイテムか!」
意味『悪戯がビデオカメラ?』
「そうだよ。このビデオカメラで今の痛いお兄ちゃんを撮影して、将来お兄ちゃんの結婚式で流すの!」
「………」
あれ?お兄ちゃんが固まっちゃった。でも、まぁ良いか。
「では、どうぞ!」
「………」
「どうしたの?ほら、いつも通りにさ!」
「……」
「ねぇ、言ってみなよ。かわいい妹の頼みだよ?ほらほらほら〜」
「…」
「それとも、あれかな?お兄ちゃんの部屋から黒いマントとお年玉で買った大きな剣と片目だけの眼帯を持ってきてお兄ちゃんを変身させれば気分も乗っていつも通りに痛い発言をしてくれのかな?」
おやおや?お兄ちゃんの顔が真っ青になってきたよ。
「莉音、怖い」
「あはははは!これに懲りたらもう外で痛い発言するのやめてくれる?私、妹としてすっごく恥ずかしいんだけど」
いつもの作ったかわいい声で話すんじゃなくて地を這うような低い声で脅してみれば案外、お兄ちゃんって言うことを聞いてくれるんだね。
ハロウィンの日に大発見だよ!
こうして、にこやかな私と青ざめた顔のお兄ちゃんとの素敵なハッピーハロウィンの幕は閉じました〜