ブラコンな姉×弟
ジャンルは【自主規制】
佐藤 香奈には10歳離れた弟がいる。その弟の名は佐藤 和樹4歳だ。
「ただいまー」
学校から家に帰って来るとリビングには画用紙にクレヨンで絵を描いている弟と、家計簿を付ける母親の姿があった。
「あら、おかえりなさい」
「おねぇちゃん、おかえりー」
「うん、ただいま〜。和樹は何を描いてるの?」
「おねぇちゃん!」
「おーそうかそうか。絵、上手いね」
香奈は絵を見ながら和樹の頭を撫でる。絵を褒められて嬉しかったのか和樹は白い歯を見せて笑う。
(かっわえええ!なんと言う破壊力!可愛すぎだろ!なんで私の弟はこんなにもかわいいの?ねぇ、誰か教えて!あっ、愚問でしたね!私の弟がかわいいのは当たり前だよね!むしろかわいいは正義だよね!このにぱーってした顔とかさ、どう?上手く描けたでしょっていうドヤ顔とかさ、もうもうかわいいよ!あー今すぐ写メ撮りたい。でも、まだ私、中学生だから携帯を持ってないんだよね…はぁ携帯さえあればこの天使の笑顔が撮れたのに。しょうがない今はこの目に焼き付けておくか)
表情は絵を描く弟を微笑ましく見ているメガネにおさげと文学少女な香奈だが、その裏の顔は変態かつ警察に行かなくてはならないレベルのブラコンな姉。
「あっ、そうだ!きょうはハロウィンだよね?おねぇちゃん『とりっくおぁとりーと』」
思い出したように声を出し、満面の笑みで香奈に駆け寄り、両手を突き出す和樹。
(ぐはっ!や、ヤバイヤバイヤバイ、かわい過ぎて鼻血出そう。本当に何この天使。…ご、ごちそうさまでした)
「おねぇちゃんだいじょうぶ?」
首をコテンと傾げる和樹を見た瞬間、香奈は口元を覆った。
(首コテンって、なにそれ反則だよ⁉︎落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け…えーと、まず私がやらなくてはいけないのは弟にお菓子を与えること!でも、ちょっと待って!まだ弟のこの首コテンをまだ見ていたい!見させてください!お願いします!)
そんな願いも虚しく、和樹は首を元に戻してしまった。
「うん、ごめんね。今日はちょっと疲れたみたい。でも、はいこれどうぞ」
和樹が首を元に戻したことで、ようやく平常心を取り戻した香奈は和樹の好きな色でラッピングしたチョコチップクッキーを渡す。もちろん、このクッキーは深夜、弟のためだけに作った手作りクッキー。
「ありがとう!」
ここで、香奈は気付く。
(あっ、そう言えばハロウィンってお菓子をあげないと悪戯されるんだよね…もし、弟にお菓子をあげていなかったら、今頃の私はきっと弟に悪戯をされてたのかも)
「それは、それで良い!」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
(本音は弟に悪戯されたいけど、お菓子をあげないと悲しい顔をするんだよね。だから、ここは我慢するか)
「この、クッキーおいしい!」
「良かった」
(当たり前さ!弟にまずい品を食べさせるわけにはいかないよ!それに、チョコチップクッキーは弟の大好物だからね!よし、来年からはお菓子のクオリティを上げて弟の胃袋を掴むぞ!おー!)
こうして、香奈と和樹の10月31日は終わりを告げた。