7 ウィニーを躾なきゃ!
遊び盛りのチビ竜ウィニーはとても可愛いので、少年は少し困っています。
『あと一回だけだよ!』
ボールをキャッチして小さな手で持って来られると、少年は宿題をしなければいけないのに、ウィニーの期待に満ちた目に負けてしまうのです。
「もう、宿題をすませたから代わるよ」
少年が宿題や期末テストの勉強をしている間は、先に済ませた友達がウィニーの相手をしてくれます。
『わぁ! ウィニー、すごいジャンプだね』
『きゅるるっぴ!』
ボール遊びが一番のお気に入りですが、近頃はジャンプもよくします。
少年はさっさと宿題を済ませて、ウィニーと遊んでやろうと必死でした。
夏が近づき、部屋で留守番のウィニーの為に少年は窓を開けたまま、期末テストを受けに行きました。
ウィニーは少年が好きなので、置いてきぼりは気に入りません。
『会いたい……』ドアには外から簡単なつっかえがしてあり、開きませんでした。
ウィニーは開けてある窓枠までジャンプしました。
窓からは下の芝生までは、飛ぶというより落ちました。
『どこにいるのかな?』
校舎の前をよちよち歩きながら、チビ竜は少年を探します。
『あっ! ここにいた!』
チビ竜は少年の気配を感じました。
しかし、チビ竜には校舎の窓は高くそびえる壁の上に見えます。
『きゅるるるる……』
まだ、こんなに高い窓まで飛べるかウィニーは少し迷いました。
『会いたい!』
芝生の上を思いっきり走って、羽根を力いっぱい羽ばたかせます。
『ウィニー!』
大好きな少年がいた!
突然、飛び込んできたチビ竜でテスト中の教室は大騒ぎです!
『こら! ウィニーを連れて出なさい!』
『先生、すみません』
頑張って少年に会いに来たのに、飛べたことを褒めてくれません。
『きゅるるるるん……』
廊下にチビ竜を抱いて出た少年は、不満そうな鳴き声で、ハッとします。
『ウィニー! 飛べたんだね!』
やっと褒めてもらえてチビ竜はくるるっぴと喜びました。
少年は窓を開けたままで部屋を出たのを後悔します。
落ちて怪我をしたかも!
「テスト書き終わったから、ウィニーを寮に連れて行って遊んであげるよ」
友達にチビ竜を預けて、少年はテストを受けに教室へ戻りました。
「ウィニーを躾なきゃ!」
今はチビ竜だし可愛い盛りだけど、竜がどのくらい大きくなるのか師匠も知らないのです。
『あんな本に書いてあるような悪い竜にはならせない!
でも、ウィニーには躾も必要だ』
苦手なテストを受けながら、少年は可愛いチビ竜にどうやって躾をすれば良いのか考えていました。




