10 ウィニーと海水浴
夏休みになり、少年は師匠と旅に出ました。
魔法使いの弟子として、少年は師匠に付いて世話をするのも修行なのです。
「海沿いの道を行こう」
師匠は暑い街道を離れて、海沿いの道を旅することにしました。
ウィニーは竜を人々が怖がるので、バスケットの中に入れていますが、寝ている時以外は外に出たがります。
海沿いの道で人気が無い海岸で、師匠と少年は少し休憩を取りました。
ウィニーも窮屈なバスケットから出て、羽根をばたばたさせて喜びます。
「泳いできても良いぞ」
師匠は木陰にゴザを敷いて、休憩しています。
夏の海は青く煌めいて、泳ぎにおいでと少年を呼んでいます。
師匠の許しを得た少年はシャツを脱ぎ捨てて、ウィニーを抱き上げると海へ駆け込みます。
『水浴びが好きなぐらいだから、海も怖くないだろう』
波打ち際に置いてやると、ウィニーはばしゃばしゃ嬉しそうに羽根をばたつかせます。
少年は海に入り、ひと泳ぎしました。
『きゅるるるる』波打ち際のウィニーが一緒に泳ぎたいと少年を呼びます。
『ウィニー、泳げるの?』
ばしゃばしゃしているウィニーを抱き上げて、腰の辺りまでの深さまで連れて行きます。
『ほら、泳いでごらん』
ソッと手をはなしたら、ばしゃばしゃと水を跳ねとばしました。
泳ぐというより、溺れるとしか見えません。
『いっぺんに泳いだら疲れるよ』
海水の上のウィニーを抱き上げると
『きゅるるるる』不満そうな声を上げます。
『明日も泳ごう』と声をかけと、きゅるるっぴ! と喜びました。
夏休み、師匠との旅の間にウィニーは泳げるようになりました。
毎日、人気の無い海岸で海水浴をしているうちに、ウィニーはばしゃばしゃするのじゃなく、海水の上をすべるように進む方法を見つけたのです。
少年は夏の青い空に浮かんだ白い雲を眺めながら、海の上でぷかぷか浮いています。
横でウィニーはすぃすぃ気持ち良さそうに泳いでます。
『ウィニーも夏休みの間に大きくなったね~』
この1ヶ月で子猫ぐらいの大きさになったウィニーが、どのくらいまで成長するのかが、少年の今の悩みです。
寮の部屋は狭いので、犬ぐらいの大きさまでしか一緒にいれません。
『あともう少しチビ竜でいてね』
すぃすぃ気持ちよさそうに泳いでるウィニーをお腹の上に乗せて、ぷかぷかと海の上に浮かびながら夏休みの終わりを楽しみました。




