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覇道戦記  作者: ガンマニ
7/12

第六話 強襲の闇

城下町パスティア

そこの一角にある家

小さい民家の狭い部屋で男は夢にうなされる・・・

「ぐぅ・・・あっ・・・父さん・・・母さん・・・ユーナ!」

マオ・アマツ

不幸な末路に行き着き、復讐を誓った狩人

しかし、寝ている時に見た悪夢のせいで、顔に大量の汗をかいていた

「(まただ・・・また・・・家族と故郷が奪われる夢)」

ここ最近、毎日のようにうなされているマオは

自分に近付いている危険な何かを感じとっていたのであろう

「(・・・奴等に近付く事は出来なかったが・・・奴等の手掛りは掴んだ)」

マオはある一枚の用紙を手に取る

そこには、ホルバッグ討伐の時に模写した奴等のマークであろう髑髏の不気味な絵があった

「(奴が倒され、情報を探る事によって奴等との決戦も間近になる。今は力を蓄えるしか無い)」

そして、横の写真立てに目をやる

「・・・みんな」

そこには、家族全員で取った集合写真が入っていた

みんな笑顔で、このような事態になるとは想像も付かないと思えるような普通の家族の平和な光景

マオはそれを見る度に、胸の中にある感情が辛くなる

「大丈夫だ・・・今の俺には・・・仲間がいる」

信じられる仲間が・・・

そう考えながら再び眠りに着いた


「ホルバッグがやられてこっちの情報も探られている…だァ?」

そういい柄の悪い男が振り向く

「・・・いかがなさいますか?」

顔をマスクで隠し喋る白衣を纏った研究員が男に問う

「俺らを狙うとしたらよ?・・・あのクソ餓鬼だな?」

「はっ、聞けば、ホルバッグ様は元被検体のマオ・アマツにより殺害されたと」

「へっ!あんな出来損ないの意地汚ねぇクソは死んでもいいんだよ、ただ、こちらの情報が漏れるのは不味いな」

「何をぶつぶつ言っているグラド?」

男が機嫌悪く言うと、眼帯を付けた女性が現れる

「・・・シーヴィか?」

「こちらの所在を突き止められるというのは問題だな、だが・・・」

「問題…無いよね♪」

二人の会話に長髪赤髪の男が空中から降りてくる

「首領!」

「ルシエル様!」

そう、この男こそ

カースキラーの首領 ルシエルであった

「僕達を狙ってるのは「果テ無キ欲望」の子でしょ?」

「はっ!」

シーヴィは深々と頭を下げる

「だったらさ、面白そうだしさ・・・試してみない?」

「試す?一体何をですか」

グラドが疑問に思いルシエルに問う

「うん、君達に伝えるのが遅くなったね。新しい薬の実験に手伝ってもらった子の紹介をしよう♪」

ルシエルが指を鳴らして研究員の一人が鎖に繋がれた一人の少女を連れてくる

「マオ君もさ?・・・この子を見たら僕達に逆らった事を心の奥底から後悔するよね~♪」


「おお~!マオ!Sランク!Sランクの依頼があるぞぉ!」

ギルド「セイクリッド」

そこでは、朝からテンションの高いダンがマオに依頼表を持ってくる

「・・・龍の谷だと?お前こんな仕事に行くのか?」

「うん?なんか問題でもあったのか?」

「見ろ、任務内容に『パトロール』と書いてあるぞ」

「いいじゃん別に、簡単そうで」

「あのな、こういう依頼ってのは危険な生物がいるから来る訳でだ。お前みたいにSランクのクエストの経験が圧倒的に少ない奴がやって生き残れる仕事じゃ・・・」

「大丈夫だよ!なんてったって・・・セイクリッド最強コンビの俺達が行くんだから!」

「・・・最強?」

「おう!」

その言葉にSランクの面々が集まる

「聞いたぞいマオ!お主達だけであの呪具所持者を退治したというのを!」

「・・・負けられない」

「ホント凄いよね~私もしかしたらダン君と戦って負けるかも?」

「あぁ、俺も負けられないな!」

上から順にヨシナガ、シガラ、ハルナ、ガロンの順で話しかける

「・・・マオ」

「カリンか・・・何か良い情報でも入ったのか」

「気を付けて・・・」

カリンは少し怯えたように言う

「ホルバッグを倒した事でカースキラーは貴方に目を付ける。つまり、直接貴方が狙われる可能性がある」

「・・・そうなった場合奴等を消す。だけど、ありがとうな」

「・・・別に」

「よっしゃぁ!今から「龍の谷」のパトロールに行って来るぜ!」

みんなが喋っている間に依頼の受付を済ましたダンは意気揚々でタクシーバードに乗る

「・・・マオ、気をつけて」

カリンはマオに対してそう言う

「・・・心配するな、俺にはあいつがいる」

こうして二人は今日も旅立つ

しかし、この任務が

二人の運命を左右するとは

この時、誰も想像だにしていなかっただろう


龍の谷

そこは荒れた渓谷で

時々、人の手に負えない強大な力を持った龍が現れるという

「ここで三日のパトロールか、まあ大丈夫だろう」

「どこからその自信が来るんだ。全く・・・」

マオは笑いながらダンにツッコム

「お!マオってさ、最近笑うようになったよな」

「・・・そうか?」

「おう!初めて会った時は無愛想で連れない奴だったけど・・・人って変わるんだな!」

「あぁ・・・自分でもそう思うよ」

本当に・・・

この男には色々教わったと思うよ

マオはそう思いながら寝泊りをする為のテントを張る

「じゃあ俺食材集めてくるよ」

「あぁ・・・気をつけろよ」

「なんだよ気持ちわりぃな・・・大丈夫だよ!」

「・・・・・・」

マオはダンに感謝していた

もし、一人でいたら

きっと、ホルバッグに対しても勝てるかどうかなど、難しい話であった

「(今度なんか奢ってやるか・・・)」

などと考えていると・・・

「へぇ・・・地獄みたいな人生送ってきた割には幸せそうな顔してるじゃねぇか?」


グラドとシーヴィはマオを追って龍の谷に来ていた

無論、目的は敵対する愚かな実験体(モルモット)の始末をする事

「見つけたぞグラド・・・」

「本当か・・・へぇ、意外と人間みたいな生き方してるな?」

「そうだな、しかし、奴の息の根をここで止める・・・いや?」

「どうした・・・」

「・・・もしかしたら、利用できるかもしれんぞ?」

「・・・へっ、なんか面白そうな事でも思いついたか?」

「首領から預かった・・・例の小娘を使えば・・・あいつを篭絡する事が可能かもしれん」

「たっはぁ!そいつは良い!やってみようぜ!」

そう言い、二人はマオに近付く

グラドが口を開きマオに向かって喋る

「へぇ・・・地獄みたいな人生送ってきた割には幸せそうな顔してるじゃねぇか?」

マオはそれを聞き振り返る


「・・・誰だ?」

「おいおい、もしかして忘れちまったのか?寂しいね~」

「何・・・まさか!?」

「そうよ、お前の故郷を焼き払った張本人様よ」

その言葉を聞き、マオの目付きが豹変する

「きっさまぁぁぁ!!!!!」

「へっ!そりゃそうだろうな、復讐相手が来てちゃ、まともに感情をセーブ出来ねぇわな!」

「・・・計画通りだ」

「殺す・・・殺してやる!」

マオは輝力による変化で翼を形成し天照を構える

一気に近付きグラドに斬りかかる

「殺してやるあああああああああああああ!!!」

「ははっ、流石に手に負えねぇや」

「あぁ、ここまで進化しては我々の力だけでは余りそうだ」

二人はマオの攻撃を避けながら、黒い渦のような穴から鎖で繋がれた何かを引き寄せる

「来い・・・被検体『Una』!」

そこには・・・

死んだ筈の・・・

「なっ・・・」

なんで・・・

なんでお前が・・・

「なんで・・・」

嘘だろ・・・

本当にそうなのか・・・

「・・・ユーナ?」

「・・・お・・・に・・・ちゃん」

そう

そこにいたのは

殺されたと思っていた実の妹

ユーナ本人であった


「ユーナ・・・なのか?」

マオは目の前の事実に混乱している

「おいおい冷てぇな、実の妹にその態度は」

「この娘は正真正銘貴様の妹、ユーナ・アマツだ」

「馬鹿な、あの時村は燃えて・・・」

「だがよ、こいつは実験道具としてこっちで引き取ったのよ」

「マオ・アマツ」

シーヴィがマオの名前を呼ぶ

「・・・取引をしよう」

「・・・なんだと!」

「今から貴様に選択肢を与える」

シーヴィは人差し指と中指の二本を立てる

「一つ、このままここで妹と私達に殺され朽ち果てるか」

そして、とシーヴィは続ける

「・・・二つ、妹を解放する代わりにこちらに付いて貴様の所属するギルドと街を潰すか、だ」

「なに!」

マオはシーヴィの言葉に驚愕する

「さあどうする?戦うのならば構わんが、下手をすれば兄妹揃って死ぬハメになるぞ?」

「逆に言えば、妹と一緒にこっちにくりゃ、妹と生活が出来て永遠に幸せになれるって訳だ」

「そんな事っ!・・・」

「・・・お兄ちゃん」

「くっ!・・・」

「ほらほら、妹もお兄ちゃんがいなくて寂しそうだぜ~?」

今のユーナは正気じゃない

恐らく、奴等のせいで何かおかしくなっているのであろう

「さあ・・・どうする!」

「・・・決まっている!」

マオはグラドとシーヴィに斬りかかる

「・・・ユーナを取り返してお前等を潰す!」

「・・・愚かな選択だ」

「はっはぁ、まあこっちの方が暴れられていいけどなぁ!」

グラドは手に装備された巨大な篭手に輝力を纏わせて

シーヴィは黒い双剣を構えてマオに突っ込む

激しい攻防

およそ常人では目で捉える事すら不可能な領域の殺し合いが繰り広げられる

だが・・・

「ちっ!!!」

「こいつ、圧倒的に強い!」

やがて実力の差が出始め、グラドとシーヴィの二人はマオに圧倒され始める

「これで決める!」

マオは天照に輝力を込め、必殺の「欲望覇刃」を繰り出す

「死ねぇぇぇぇぇ!!!」

「くっ!」

「マジかよ!」

二人に攻撃が直撃する刹那・・・

「・・・絶望の(ディスペア・コート)

二人と欲望覇刃の間に黒いバリアーのような物が現れる

「お兄ちゃん・・・やめて・・・一緒に暮らそうよ」

「ユーナ!正気に戻れ!今のお前は何かオカシイ!」

「おかしくないよ、私はずっとお兄ちゃんと暮らしかたかったもん」

「だからって!母さんや父さんの命を・・・村の人達の命を奪った奴等の仲間にはなれない!」

「別にいいよ、家族はお兄ちゃんだけ、大切なのはお兄ちゃんと腐り逝く世界の結末だけだもの」

「(やはり、ユーナは何らかの方法で操られている・・・)」

「余所見はいけねぇなぁ!」

考えているマオにグラドの篭手が炸裂する

「く・・・は!」

「うらうらうらうらぁ!獣人百殴打!」

まるで巨大な狼の手のようなそれは、マオを何度も何度も殴り続ける

「か・・・く・・・けはっ!」

「退けグラド!サザンクロスブレイザー!」

「・・・ぐあああああ」

グラド、シーヴィと二人の強力な技を受けたマオの体は、既に行動不能な状態にまで陥っていた

「・・・・・・・・」

「ふん、大人しくなったな」

「このまま処理した方が良さそうだな・・・まあ、それが当初の目的なのだからな」


このまま・・・死ぬのか?

こんな・・・

ユーナが目の前にいるのに・・・

憎いあいつ等が目の前にいるのに・・・

何も出来ずに・・・

・・・あいつなら

・・・あいつならどうする?

諦める?・・・

・・・いや

・・・あいつなら

ダン・バスティーという男なら・・・

ここで・・・

絶対に諦めたりしない!


「畜生があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


「あいつ・・・まだ何かするつもりらしいぜ」

「まさか・・・マズイな」

「何がだ?」

「奴の呪具が・・・完全に覚醒する」

「・・・んだと!」

「このままでは、奴は破壊の限りを尽くして我等を殺しに掛かる」

「ちっ!とっととズラかるぞ!」

「無駄だ、覚醒した奴は、一度記憶した輝力と魔力を絶対に逃がしはしない」

「転移しても無駄ってか?」

「多分・・・世界の正反対へ行っても奴は追ってくる」

「まさに復讐に取り付かれた鬼だな・・・」

「だが、それでこそ!・・・この娘の能力を最大限に発揮できる!」

「あん?どういうこった」

「こういう・・・ことだ!」

シーヴィはユーナの頭部を掴んでマオに向かって投げる

「何しやがるシーヴィ!」

「いや、これでいい!」

すると・・・

「く・・・ああああああああああああああああ!!!」

ユーナは急に苦しみ始め、体から黒い瘴気をマオに向かって放ち始める

「が・・・ああああああああああああああああ!!!」

マオはそれを吸収し、徐々に徐々にと体の所々が黒く染まる

「奴の呪具「絶望ノ誘惑」は、究極の闇属性呪具であり他人に移す事で、乗り移った者の意識を自由に操ることが出来る」

やがて、瘴気を全て吸い取ったマオは、その場に倒れる

同じく、力を全て吐き出したユーナもその場にパタリと倒れる

「これであの娘は呪具を失い、奴に新たな呪具が植え付けられ我々の下僕として生まれ変わったという訳だ」

「マジかよ、それを早く言えよシーヴィ!」

「どうやら作戦は成功したらしいね・・・シーヴィ?」

そこに、新たに現れる首領ルシエル

ルシエルは二人の間に降り立ちその場を観察する

「ふむ、いやはや、君ならしっかりやり遂げてくれると思っていたよ」

「は!有り難きお言葉!」

「グラドも・・・」

「は!」

「君がいなければこの作戦は難しかった、感謝してるよ」

「いえ、俺は何もしていません」

「また謙遜を・・・」

「首領、被検体二人をどうしますか?」

「マオ君はウチで回収しよう、もう片方の雌犬は放っておいていいでしょう」

「しかし首領・・・」

「なんだいグラド?」

「何故・・・こいつにそこまで固執するのですか?」

「・・・言ってなかったね、君たち二人には言っとこうかな」

「はぁ・・・」

「・・・(ゴクリ)」

「彼・・・マオ・アマツの持つ呪具はね?この世界における呪具でも最強であり最凶と言われる物だからさ」

その言葉に二人は驚愕する

「なっ!」

「何故被検体のコイツにそんな物を!」

「簡単さ、この呪具はピーキーでね、使い手が気に食わないと細胞を暴れさせて殺しちゃうんだよ」

だから、とルシエルは続ける

「適合者が現れたと聞いた時はね?心躍ったよ、まるで、やっと巡り会えた運命の人との出会い・・・人間の言葉ではそう言うのかな?」

「では、こいつにあの計画を?」

「そうさ、今の世界を朽ち果てさせる、無こそ最高の美、僕は美しい物が何より好きなのさ。人の血や死に際に挙げる断末魔の叫びを聴くと快感の余り肉体が奮える、沸き立つ、絶頂する・・・そんな感じかな?」

「はぁ・・・」

「勿論、君達には無となった世界の支配権を与えよう、僕はその間、世界の美しさの余韻を感じさせてもらおう」


第六話 完

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