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掌編小説

名前も知らない星

作者: 斎藤康介

 たぶんあまりに夜空がきれいだったから感傷的になっていたのだと思う。そして、都会では見ることのできない光景に年甲斐もなく興奮もしていた。星の名前やましては星座の名前もまったく分からないが、古代のギリシャ人が星空を見て数々のストーリーを想起した理由はわかった。天を覆う壮大なパノラマは心に訴えかける何かがあった。

 ただ本当はそれだけでないのかもしれない。例えば、今日が今年一番の冷え込みのせいかもしれなかったし、昼間に祖父の十三回忌があったせいかもしれないし、酔い覚ましのために一人で外に出ているためかもしれなかった。

 そんなとりとめのない思いに浸りながら、手はいつの間にか携帯電話を握りしめていた。ディスプレイが夜空の星以上の明るさで輝いていた。指は何十回も繰り返し手慣れた動作で、一人のアドレスを呼び出した。バイト先で知り合った女性だった。二歳年上で、最近彼氏と別れたらしい。寒さに指先が(かじか)みながらも一通のメールを作成し送信ボタンを押した。


『夜遅くにスミマセン

今度、もしよければ一緒に御飯に行きませんか?』


 たぶん酔いが覚めた時か、朝目が覚めた時に僕は後悔をするだろう。

 そんな僕を名前も知らない星たちが見ていた。

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