4-2.
最初の内は、あの三人も芽衣を信じていた。なんなら、助けようとしていた。
結奈は自分の顔にコンプレックスがあった。
大きな鼻と分厚い唇が、あまりにも醜くて、マスクで隠した。
芽衣を貶めたい女子達はそこに目を付けた。
女子達は結奈に近づき、結奈のマスクを無理やり剥がした。そして、その後こう言った。
もし芽衣を守ろうとしたら、結奈の顔写真を教室に貼り出す、と。
自らを犠牲にすることも、相手に立ち向かうことも出来ず、引っ込み思案な結奈はただ頷くだけだった。
智樹は結奈のことが好きだった。
自らを主張できない智樹と、引っ込み思案な結奈、どこか似ていると勝手に思い、親近感が湧き、勝手に思慕を抱いていた。
あの女子達は、そのことを知っていた。
だから、智樹に近づき、結奈の顔写真を見せてこう言った。
もし芽衣を守ろうとしたら、この写真をばら撒く、と。
自らを主張出来ず、迂闊に発言も出来ない智樹は、ただ頷くしかなかった。
大和はたった一人、いじめを止めようとした。
しかし、先生や警察に頼っても、陰湿ないじめであった為、証拠が出ず、なにも出来なかった。
その行動が女子達にばれ、大和にも釘を打った。
これ以上相談するもんなら、お前の噂も広めてやる、と。
大和は諦め、芽衣と関わることをやめた。
すべて、悪い方向へと向かっていった。
芽衣のいじめは徐々にエスカレートしていき、ついには暴力も振るう様になった。
しかし、そのときは既に周りは芽衣を悪役としており、その様子を遠巻きに見て安心していた為、通報をする人はいなかった。
空気は段々と変容していき、芽衣がどんなに傷ついていても、誰も気に留めなくなった。
しかし、芽衣はずっと学校に来続けた。
どんなに噂を流布されても、実害が出続けても。
そんな様子に、とうとう女子達の堪忍袋の緒が切れる。
――アイツをめちゃくちゃにしたい。二度と歯向かえないようにしてやりたい。
そうして、女子達はとあるものを持ち出した。
一つは、制汗スプレー。もう一つはライター。
女子達は芽衣を連れ出して、その二つを掲げる。
そして、芽衣が抵抗するまでもないまま、芽衣の顔面にそれらが噴射された。
湖白は人の悪意に触れた。
湖白は自分自身の悪意には疎かった。人に捨てられることが悪意だと思わなかったから。
しかし、芽衣が傷つく様子を見て、なんとも言えない感情に支配された。
そして、芽衣の顔面に炎が放射されたとき、初めてそれが怒りだと気付いた。
芽衣を傷つけた、芽衣を救わなかった、芽衣を見放した、そんな奴らへの怒り。
そして、感情に疎く、芽衣を見ていながらも気づかなかった自分自身への怒り。
――丁度、芽衣のおかげで湖白には力がある。今はもうすっかり大人のお姉さんだ。
だから、この力を、芽衣のために使うのだ。
湖白はそう、決意した。




