3.
「っっっっっあぁ゙ぁ゙ぁ゙あぁ゙ぁ゙あぁ゙ぁ゙あ゙!!!!!ぎぃっ!!ぎゅ、あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙あ゙!!!」
芽衣はその場に倒れ、痛みに悶えるかの様にジタバタと足を振っていた。
焼き爛れ続ける顔を掻きむしるように抑え、枯れ始めた声を出し続けた。
声は段々と掠れていき、呼吸も出来なくなったのか芽衣の動きは段々弱くなっていき、とうとう止まってしまった。
――そして、その様子を三人は唖然とした様子でただただ見届けていた。
「……芽衣?」
大和が発した声はあまりにもか弱く、誰の耳にも入らずに消える。
現実を受け入れられず、彼らは芽衣のことを見続けていると、森の茂みから誰かが歩いてきた。
その人は白髪で、白のワイシャツと藍のデニムを着ている、可憐な女性だった。
「……助けなかったんだ。助けてあげたら、少し猶予とか与えようかなって思ったのに。」
「……え、湖白さん?」
結奈に湖白と呼ばれた女性は、三人に向けて微笑んだ。
「この一年間、どうだった?楽しかった?辛かった?」
「ど、どういうことですか!?湖白さんだって、芽衣のことをまもりたかったんじゃないんですか!?」
「ええ。でも、最初から決まっていたことだもの。"タイムリミットは一年間"って。」
「タイムリミット……?聞いてないッ!」
「言ってないからね。」
そんな湖白の反応に彼らはどこか恐怖を感じていた。人と違う、私たちと違う。価値観や倫理観、そもそも生きてきた経験値が違う。
「私、別に貴方達に協力しよう、助けてあげようだなんて思ってないからね。」
「なっ……!」
「これは復讐。お前らが芽衣を助けなかったことへの復讐。芽衣を使うのは忍びなかったけど……。まあ、賛同してくれたからいいよね。」
一瞬引き出された湖白の殺気に、彼らは怖気付く。そうだ、彼女は神様なのだ。人の生死くらい、どうってことない。
唖然としていると、湖白はすでに動かなくなっていた芽衣の側に近寄り、焼け爛れた頬を慈しみを持って撫でた。
「ごめんね、芽衣。側にいてあげられなくて。」
そう言うと、湖白は芽衣を横抱きし、そのまま大きな石の前で立ち止まる。
すると、湖白の体は下から溶けて無くなっていく。
「なっ……!どこへ行く気ですかッ!?」
結奈がそう言うと、湖白は微笑んだ。
「……お前らの知らないところだよ。」
そう言って、湖白と芽衣は消えてなくなった。
昔神社だった場所。
その場所は寂れ、ただ大きな石がある荒い墓場の様な所になっていた。
白蛇は力が弱まったことで体が小さくなり、子供の様な風貌になっていた。
白蛇は人を恨まなかった。それ以上に、人に興味がなかった。
消える運命を受け入れ、消滅することを待つ、ただそれだけであるはずだった。
そんなある日、白蛇は謎の少女と出会う。
派手でどこか海外から来たかの様な服装。しかし、顔立ちは確かに日本のものだった。
「……え?誰?」
「そっちこそ。」
少女からの質問に、白蛇は質問で返す。
それを聞いた彼女は、笑いながら答えた。
「私、芽衣!ここの近くに住んでるの!貴女は?」
「私、は……。」
白蛇は焦った。名前がないからだ。
彼女はずっと、ただ"白蛇様"と呼ばれていたからだ。
白蛇は考えた。
考えて考えて考えて……。
考えた末に、思いついた。
「……湖白。私、湖白って言うの。」
「湖白……。綺麗な名前だね!」
芽衣はそう言って笑った。その顔があまりにも純粋で、眩しかった。
――ああ、人間の中にもこんな奴がいるのか。
その時初めて、白蛇――湖白は、消えたくないと思ってしまった。
「もう、その服なによ。」
「そっちこそ、あんまりみたい服だけど……。」
「え、着物もう着られてないの!?」
「うーん。日常的には着られてないかな〜……。」
湖白は、芽衣に着ていた服に対して聞くが、逆に、芽衣に湖白の服について指摘されてしまった。
「もう、湖白は世間知らずなんだから……。あ、そうだ!」
そう言って、隣に座っていた芽衣は立ち上がり、湖白の向かい側へと歩いていく。
そして、両腕を掲げてこう言った。
「私、湖白に色々教えるよ!んで、大きくなったら一緒に外に出て、買い物しよ!」
その笑顔はあまりにも煌びやかで、湖白には眩しく思えた。
「……うん。教えてよ。」
湖白がそう言うと、芽衣はにっこりと笑った。
しかし、彼女達が出会えるのは、一ヶ月間だけだった。芽衣が夏休みの時間を割いてここに来ていたのだ。
そんな来なくなった芽衣に湖白は焦ったくなり、芽衣に取り憑いてしまう。
そうして、湖白は芽衣がいる限り死ななくなり、湖白は定期的に夢の中で芽衣と遊ぶので、芽衣は湖白のことを忘れなくなった。
ただ、この日常が終わらなければ、なにも変わらないはずだった。




