2-2.
智樹は帰り道の一つである畦道を通っていた。
一人の時は、あの四人で集まっていない時は少し安心して過ごせていた。頭の中にこびりついている一種の問題も、この時だけは忘れられた。
だから、智樹はゆっくりとこの景色を味わっていた。
いつものように歩いていると、誰かが智樹の横を通り過ぎた。
気づくのが遅くなったが、目を凝らすと誰かわかった。
「……芽衣!?」
なんだか様子がおかしい。
それに気づいた智樹は彼女を追いかけ、そのまま彼女の腕を掴んだ。
体を振り返らせると彼女の顔は虚で、目線もどこを向いているのかわからなかった。
「……芽衣?」
「……離して。痛いよ。」
「っごめん!」
そう言われ、パッと手を離す。
芽衣は離しても歩き出さず、その場に居続けた。
「芽衣、どうしたの?何かあった?」
「……呼ばれて。」
「誰に。」
智樹が聞くが、芽衣は黙ったままで何も言わなかった。
「……芽衣?」
「ごめん、行かなきゃ。」
芽衣はそう言い、再び早歩きで歩き出した。
すかさず智樹も彼女を追って歩き始める。
「待って!どこに行くの!」
「あの子が待ってるの!行かなきゃ!」
その声色はどこか切羽詰まっており、何かに追われている様だった。
いつの間にか芽衣は走り出しており、ずっと早歩きで追っていた智樹とはどんどん距離が離れていく。
芽衣をまだ目視で追えている頃、智樹はスマホを取り出し耳に当てていた。
「……っもしもし、大和!?芽衣が……!」
視界がぼやける。
平衡感覚を失い、どこを歩いているのか、走っているのかわからなくなる。
そんな、泥沼の中に芽衣はいた。
「……っ芽衣!」
しかし、その一声で芽衣の視界が晴れる。
声がした方を振り向くと、そこには結奈たちがいた。
「……みんな?どうしたの?」
「いや、智樹から芽衣のこと聞いたから、何かあったのかなって……。」
大和がそういうと、芽衣はそう?と言って笑った。
その笑みはどこか不気味で、いつもの芽衣が浮かべる笑みではなかった。
三人がその笑みにゾッとしていると、芽衣が話し始めた。
「大丈夫だよ。私、そこまで何かあったわけじゃないし。」
「でも、さっきあの子が待ってるって言ってたよな……?そいつは――。」
「智樹?」
そう智樹が言い切る前に芽衣が静かに遮る。その冷酷な様に智樹は口をつぐんでしまった。
「何もないなら行くけど……?」
「……っでも、帰り道あっちじゃないでしょ?」
「結奈……。私、寄り道しちゃダメなの?」
結奈の発言に芽衣はこてん、と首を傾げる。その言葉に結奈は反論ができなくなった。
そうして三人が何も言えなくなって立ち止まっていると、芽衣はその様子を無視してズンズンと歩いていった。
「……待っ、」
反応が一瞬遅くなった大和は彼女を追おうとした。
しかし、先は草木生い茂る何も管理されていない森であり、するすると歩いていく芽衣に追いつくのは困難だった。
そして、やっとのことで追いついた時、芽衣はとある大きめの石の前で止まっていた。
「……芽衣?」
後ろから結奈と智樹もやってきて、そのおかしな様子に三人は困惑していた。
「……結奈、大和、智樹」
するりと彼らの方を振り向く。
「……何で、助けてくれなかったの?」
その顔は焼け爛れていた。




