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2-1.

 白蛇様とは、この町に伝わる神様のことである。白蛇様は何の契約も交わさず、ただこの町の為に災害から守り、作物の豊作を約束した。

 しかし、江戸時代が終わり外国から蒸気機関などの機械が輸入されたせいで、白蛇様の手を借りずとも作物が採れ、人の手で、無骨な機械の力で、この町が守られることが確約された。

 白蛇様はずっと信じていた。白蛇様を思い続けてくれる人がいると言うことを。

 しかし、祀られた神社は寂れ、いつしか荒い墓の様な風貌へと変わってしまった。

 白蛇様は忘れ去られ、消え去った。そして、永遠に語られなくなる。そう言う存在になるはずだった。


「――みんな、私が高校の頃を思い出そうとすると止めてくるんだよね。なんでだろ。」

 講義が終わり、帰ろうとしていた芽衣は、人気のない土手道を通っていた。

 うんうんと考えながら歩いており、その足取りはなんだか遅い。

「まさか、私守られてる!?みーんな過保護ってコト!?あらやだ私ってば罪な女っ☆」

 そう言い、あざといポーズをした後、はぁ、とため息をついた。

「……でも、なんでそうなってるのかわかんないよ。なんでなの〜!」

 芽衣は両手で自分の頭をわしゃわしゃとかき混ぜた。

 

 その瞬間

 全ての音が遠くなる

 見ていた景色がぼやける

 体と心が分離する様な感覚に陥る


 その感覚に一瞬戸惑っていると、何かが首を這う感覚に襲われた。誰かの腕だ。

「……芽衣」

「……誰?」

 その腕はぎゅうっと、首が絞まらない程度に力が入れられる。芽衣は拒絶しなかった。できなかった。

「……忘れてるんだね。まあ、私のせいだけど。」

「……?どういうこと?」

「めーい。私、芽衣の友達だから、何でも知ってるの。例えば……ほら、高校のこととか。」

 そう言って、声の主は頬ずりをする。

「……私、本当になにかあったの?」

「もちろん。んで、忘れたいって望んだのは芽衣なの。」

 その発言に芽衣はハッと驚く。

「……忘れた方がいいんじゃないの?それは。」

「えー?でも、」


「思い出したいんでしょ?だって、それが()()だもん。」


 そうだ、と芽衣は自分のやらなければいけないことを思い出した。

「芽衣、私、()()()()()()で待ってる。」

 声の主はそういうと、首に纏っていた気配も、頬にあったあったかい空気も無くなった。

 けれど、そこに恐怖はなかった。あったのは、やらなければいけないという強迫観念のみだった。

「――行かなきゃ」

 芽衣はさっきの足取りが嘘だったかの様に早足でどこかへと去っていった。


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