1.
――そういえば、昔不思議なことがあったんだよね。ほら、ここ小さな神社あるでしょ?でっかい石が置いてある神社。
高校一年生――まだ四人が普通に話せていた頃、芽衣がそう言った。
自己肯定感が高く、自分も、友達も大好きな彼女は、いつもの明るい様子とは違い、どこか大人っぽい表情で語り始めた。
――その神社で同い年くらいの子と出会ったんだよね。白い髪で、着物着てた。
――湖白、だっけ。可愛かったなぁ……。まあ、数週間しか会ったことないんだけどね。でも、時々夢に出てくるくらいには覚えてる。
すると、友達の一人が芽衣に問いかけた。
――また会えたら?えー?何話そう……?ああ!あの子現代に疎かったから、色んなこと教えたいな!一緒にお買い物して、おしゃれして……、沢山遊ぶの。えへへ、きっと楽しいよ!
そう言って、芽衣はさっきの雰囲気とは打って変わって太陽のような明るさで笑った。
○大学一年生
食堂にて。
芽衣とその親友である結奈、智樹、大和が机を囲んで楽しく話していた。
食事も終わり、食器も片付け終わり、ただただ楽しく話している途中、芽衣がいきなり結奈に抱きしめた。
「――だーかーら!結奈はマスクを外した方が可愛いんだって!そりゃ友達も沢山だよ!」
「芽衣、落ち着いて……!」
芽衣のいきなりの行動に智樹が狼狽えていると、大和が立ち上がり向かい合わせに座っていた芽衣を結奈から剥がした。
「こら、そうやって無理やりマスクを外そうとしないの。結奈のコンプレックスのこと知ってるだろ?」
「で、でも……!結奈の可愛さを知って欲しくて……!」
「私、友達いなくても大丈夫だよ。」
「結奈……?」
芽衣は大和の方に向けていた視線を結奈の方に向ける。
「それに、芽衣たちがいるから私寂しくないもん。」
結奈は親指を挙げそう言った。
「ゆ、結奈〜!」
芽衣は再び結奈に抱きついた。
男子二人組は驚きあっと声を上げるが、芽衣はお構いなしに結奈のほっぺと芽衣自身のほっぺを擦り合わせる。
「そうだよね!寂しくなんかないよね!私たちがいるもんね!ごめんね!こんなこと言っちゃって!」
「……もう一回剥がした方がいいか?」
大和が智樹にそういうと、智樹は二人を見てうんうん唸ってから答えた。
「結奈からヘルプが来てからでいいんじゃない?ほら、結奈ちょっと嬉しそう。」
「……お前って、結奈が楽しそうだと許してるよな。我欲?」
大和がニヤつきながらそう問うと、智樹は狼狽えた。
「な、んの話だよ……。僕は結奈と芽衣のためを思って……!」
「た、助けて……。」
智樹が言い訳をしようとしたとき、結奈からヘルプがかかり、二人がかりで芽衣を剥がす羽目になった。
剥がした後、結奈は痛そうに頬を擦っていた。
「あ、なんか連絡きてる」
講義が終わり、片付けをしていた四人は大和の一声で一旦止まった。
「なになに?」
「同窓会の連絡。ほら、来年の。」
「は、早くない?」
大和の話に結奈が突っ込むと、大和は笑い、そうだねと言った。
「まだ7月だもんね。まあ、それくらい力入ってるってことでしょ。」
大和が笑うと、結奈は納得してないながらに食い下がった。
すると、智樹が彼に声をかけた。
「……それ、高校のときの奴ら?」
「……ああ、うん。」
大和がそういうと、智樹は顔を顰めた。
「……本当に?」
「そうなんだよなぁ。」
「……いないはずだよな?」
智樹がそう言うと、大和は頷いた。
「……みんな?どうしたの?」
空気が重くなった頃、芽衣が声をかけた。すると、弾かれたように皆が芽衣の方を見た。
「……本当にどうしたの?」
「ああ、いや、なんでもないんだ。それで?行く?」
芽衣が怪訝そうな顔をすると、話を変えるように大和は芽衣に問うた。
「い、くよ!行く!みんなも行くでしょ?」
芽衣がそう言うと、結奈は頷いた。
「芽衣が行くなら、私も行くよ。芽衣がいるからね。」
「ゆ、結奈〜!」
「じゃ、じゃあ僕も。」
「決まり。じゃあ連絡返しとくから。」
そう言い、大和はスマホを操作し始めた。
その様子を見ながら芽衣は話し始めた。
「懐かしいな〜、高校。えー?何があったっけ?」
その瞬間、空気がひりついた。
そんなことは露知らず、芽衣は続ける。
「あ、そういえば、私その時誰かに呼び出されてた様な――。」
「芽衣。」
芽衣が何か思い出そうとしてた時、結奈が芽衣の肩に手を置き、声をかけた。
「え?」
「思い出すの難しかったら、思い出さなくてもいいんじゃない?」
「そうかな?」
「うん。どうでもいいことだったんだよ。」
「そうかな……。そうかも。」
芽衣が納得すると、空気は散漫となり、智樹に至っては息をしていなかったのか、はあ、とため息をついていた。
「連絡し終わったから、ここから出るか。」
「そうだね!帰ろ帰ろ!」
大和がそう言うと、声もかけれぬうちに芽衣は一目散に走り出す。
それを追おうとした時、大和が結奈に話しかける。
「……さっきはありがとう。俺、何もできなかった。」
「別にいいよ。こう言う時はお互い様でしょ?」
結奈がそう言うと、大和は笑った。その様子を見ていた智樹が二人に話しかけた。
「……芽衣追いかけなくていいの?」
「あっまずい。」
そう言って、三人は芽衣を追いかけることにした。




