表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました  作者: 黒崎隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/12

第4話「モフモフの神獣(子犬サイズ)を拾いました。この子の能力もチート級でした。」

 仲間が増え、村での生活はますます活気に満ちていた。


 シルフィは畑仕事を手伝ってくれるだけでなく、薬草を栽培してポーション作りを始め、ガンツは俺のクワが掘り出した鉱石で、生活に必要な道具を次々と生み出していく。ミミは、その驚異的な身体能力を活かして村の周りを偵察し、危険な魔物を事前に察知・排除してくれるようになった。


 俺はと言えば、相も変わらず神農具を振るい、畑を広げ、食料を確保するのが主な仕事だ。皆がそれぞれの得意分野を活かし、協力し合う。理想的な共同体が、少しずつ形になりつつあった。


 そんなある日のこと。


 俺はミミと一緒に、少し離れた森まで食用のキノコを採りに出かけていた。


「ダイチ、あっちにすごいいい匂いのする木の実があったよ!」


「あんまり遠くに行くなよ、ミミ。はぐれるぞ」


 ぴょんぴょんと木々の間を飛び移るミミの後を追いながら、俺は苦笑する。彼女の体力は本当に底なしだ。


 しばらく森の奥へと進んでいくと、不意に、茂みの奥から「クゥン、クゥン」というか細い鳴き声が聞こえてきた。


「ん? なんの音だ?」


「犬……かな? でも、すっごく弱ってる匂いがする」


 ミミが鼻をひくつかせる。獣人である彼女の嗅覚は、非常に鋭い。


 俺たちは顔を見合わせ、音のする方へ、慎重に近づいていった。


 茂みをかき分けると、そこにいたのは、一匹の小さな子犬だった。


 雪のように真っ白な毛並みをしているが、泥に汚れてしまっている。生まれたばかりなのか、手のひらに乗るくらいの大きさだ。親とはぐれてしまったのか、体は小刻みに震え、その瞳は不安げに揺れていた。


「わぁ、かわいい!」


 ミミが駆け寄ろうとするのを、俺は手で制した。


「待て、ミミ。下手に匂いをつけたら、親が迎えに来なくなるかもしれない」


「でも、このままじゃ死んじゃうよ! あたしの鼻でも、近くに親の匂いはしないもん」


 ミミの言う通りだった。子犬はひどく衰弱している。このまま放置すれば、夜を越すのは難しいだろう。


 俺は覚悟を決め、そっと子犬を抱き上げた。驚くほど軽い。


「……仕方ない。俺たちで面倒を見よう」


「うん!」


 ミミが嬉しそうに頷いた。


 村に連れ帰ると、シルフィとガンツが驚いた顔で出迎えてくれた。


「まあ、可愛らしい……ですが、この子、ただの子犬ではないかもしれません」


 シルフィが子犬の額にある、小さな菱形の紋様を指さした。


「これは……伝説に聞く、神狼の紋章……? まさかな」


「神狼?」


 俺が聞き返すと、ガンツが重々しく口を開いた。


「この世界を守護すると言われる伝説の神獣だ。成獣になれば山一つを動かすほどの力を持つという……。だが、もう何百年も姿を現していないはずじゃが……」


 神獣、ねぇ。


 目の前でプルプル震えているこの小さな毛玉が、そんなすごい存在だとは到底思えなかった。


「まあ、神獣だろうが何だろうが、腹が減ってることには変わりないだろ」


 俺は温めたヤギの乳(これも村で飼い始めた家畜から搾ったものだ)を、指につけて子犬の口元へ運んでやった。


 子犬は最初、おびえていたが、やがてぺろぺろと乳を舐め始めた。その姿は、あまりにも愛らしく、俺たちは自然と笑みをこぼしていた。


 俺たちは、その白い子犬に「コロ」と名付けた。単純だが、呼びやすいのが一番だ。


 コロは驚くべき速さで元気を取り戻した。そして、どういうわけか、俺に一番懐いた。俺が畑仕事をしていると、いつも足元をちょこちょことついて回り、夜寝る時は、俺の布団に潜り込んでくる。モフモフの感触が、一日の疲れを癒してくれた。


 ***


 そして、コロがただの子犬ではないという事実は、数日後に証明されることになる。


 その日、俺は村の近くに温泉でもあれば最高なんだがな、などと呑気なことを考えていた。前世では、仕事の疲れを癒すのは決まって温泉だった。


 すると、足元にいたコロが、突然「ワン!」と吠え、地面を前足でかき始めた。


「どうした、コロ? 何かあるのか?」


 コロは俺のズボンの裾をぐいぐいと引っ張り、森のある方向を指し示すようにして、また「ワン!」と吠える。何かを伝えようとしているのは明らかだった。


「もしかして、あっちに何かあるのか?」


 俺が指さすと、コロは嬉しそうに尻尾を振った。


 俺は半信半疑のまま、コロの案内に従って森の中を進んでいった。ミミとシルフィも、興味津々でついてくる。


 しばらく進むと、少し開けた岩場に出た。コロはそこの地面の一点を、くんくんと嗅ぎ、またしても前足でカリカリと引っ掻き始めた。


「ここか? ここに何かあるのか?」


 見たところ、ただの地面にしか見えない。


 だが、コロは確信があるように、俺を見上げて「ワン!」と一声鳴いた。


「……分かったよ。掘ってみるか」


 俺は半ば冗談で、『潤水のスキ』をコロが示した場所に突き立てた。このスキには、水脈を探すだけでなく、地中にあるものを探る機能もあるのだ。


 スキを地面に差し込むと、いつもとは違う、温かい感触が手に伝わってきた。


「……ん? なんだこれ……熱いぞ?」


 そして、次の瞬間。


 ゴゴゴゴゴ……!


 地響きと共に、スキを突き立てた場所から、勢いよく湯気が噴き出した。


「うわっ!?」


 俺たちが慌てて後ずさると、そこから熱いお湯がこんこんと湧き出し、あっという間に天然の湯だまりを作り出した。紛れもない、温泉だ。


 俺とミミとシルフィの声が重なり、森にこだました。


「お、温泉だー!!!」


 コロのお手柄だった。この子は、ただの犬じゃない。その嗅覚で、大地に眠る特別なものを見つけ出す能力があるのだ。


 その日から、コロは俺たちの最高の探知機になった。温泉だけでなく、ガンツが狂喜乱舞するほどの高品質な鉱脈、シルフィが喜ぶ珍しい薬草の群生地など、次々と新しい資源を発見してくれたのだ。


 モフモフで可愛いだけの存在じゃなかった。コロもまた、この村にとって、かけがえのない仲間の一員となった。


 俺は湧き出たばかりの温泉に浸かりながら、空を見上げた。


 仲間が増え、温泉まで湧いた。


 こんな幸せなセカンドライフ、罰が当たるんじゃないだろうか。


 まあ、いいか。今はただ、この温かさを満喫しよう。そう心に誓うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ