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教師が死にかけた

 教師が三日、無断で休んだ。


 マァそれ自体は別に珍しくない、この学園の教師はどちらかというと人に教えるより研究してたい奴が多いので。

 急にアイデアが沸いたから実験室に数日閉じこもったり、実験に必要な物がないからと自ら確保しに向かったり、書かないといけない論文が全然終わらないあから自室に缶詰して書いたり、普通に実験で死にかけてたり。

 原因は色々だ。やめさせろ。


 そんな奴らを雇うのはどうかと思わないこともないが、学者としては素晴らしい。

 人に教える才能はあったりなかったりだが、知識と能力と名声と権威はあるので、トータルのプラスマイナスはプラスって感じで非難とかはしづらい。教師の人格には文句はあるが。

 そもそも人格がまともなら私的な理由では無断で休まない。


 ではなぜそんな、教師の無断欠勤なんていう大して珍しくない事を話題に出したのか。

 ロエルにその教師の様子を見てこいって仕事が寮長経由で回されたのだ。

 別にサボってもいいが、無断で休んでる教師というのがロエルが蝶を植物園に放った事件の余波を受けて倒れた教師だったので、その後どうしてるのか少し気になったから様子を見に行くことにした。


 そして。

 なんと。

 その教師は。


 自室の床で死にかけていた。


 青白い、血色の悪い顔。

 焦点の合わない目、痙攣する手足。

 呂律が回ってないのに何かを呟いている口は、緩い笑みの形。


 控えめに言って死にかけ、死体一歩手前、留め刺してやるのが優しさかもしれない。

 そんな死にかけのオブジェを見たロエルには、少しばかりこの症状に覚えがあった。


 ロエルが放った魔蝶はオーソドックスな軽い毒を持つタイプ。

 魔蝶の性質として、環境に影響を受けて能力が変化する。

 そしてそんな魔蝶を放ったのは、精神に影響する植物が植えられている層の、幸福感や酩酊感を感じたり幻覚症状が出るようなものが集まっている区画。


 そして最初の校内新聞で小さく映っていた写真の先輩の顔。

 恍惚とした、幸せそうな表情だった。

 マァ大部分は見たことない蝶の毒をその身で体験できたことへの喜びだろうが、それでも毒による影響は出ていたから保健室で治療されたのだろう。


 そして、保険医はその先輩に色々検査していたらしい、つまり先輩の体内の毒も調べていた。

 何なら抽出までしたと思われる、あの保険医ならやる。

 そもそも保険医の興味の対象が先輩から毒の方に移ったから、先輩は対して入院することなく数日で保健室から退出、ではなく脱出、でもなく退院出来たのだとしたら。

 保険医ならば毒を色々いじったら誰かに投与して出来を確認したくなるだろう、人用なら人間で実験するのが一番効率がいいし。

 そして丁度、イラついてる状況で、さらに煩い教師が一人いたわけだ。

 否教師がそこまで煩かったわけじゃないが、煩い生徒相手にはそこまで好き勝手出来ないから手近な教師を選んだのかな。


 この学園の保険医は普通に生徒のこともモルモットだと思ってるので、教師相手ならさらに遠慮しないだろう。

 学園長にスカウトされて学園で保険医なんてやってるのも、当時結構な事件を起こしたからその問題の事後処理と隠蔽を対価にしたとかいう話がある。

 真偽不明。


 だが、火のない所に煙は立たないものだ。

 この学園の学園長なら多少の事件なら揉み消せるし、出来なくとも犯人を用意するくらい簡単だろう。真実は闇の中ってやつだな。

 マァ生徒なら保健室の利用は多少安心して出来るだろう、死なない程度の実験しても、最終的に健康な状態にしてくれるので。

 そう、問題ないのだ。


 今だってきっと生徒相手の処置を幾らか優しさと思いやりを持って行っている、はず。

 試しに覗いてみても問題ない、そうだろう。


「手足を減らすのは禁止されてるけど増やすのは別に止められてないんだ、お前も腕が四本、脚が三本あったら便利だろ? 大丈夫だ、神経はつなげる。ア腕を付けるのは背中側がいいか、それとも脇側か? 個人的にはおすすめは背中だ、ホラ人体の筋肉や骨格はこんな風になってるから背中側の方が違和感なく動くし利便性はいいんだ。でもお前が脇側がいいっていうんならこちらも最善を尽くして──」


 問題。


 マァ気にしないことにしよう。

 正直ロエルとしてはストレス発散で人体改造することについて、何か言えるほど真っ当じゃない。

 それに、こういう人間がいるから文明は発展していくのだろう、いつか自分の発明に殺されそうな人間の事は珍獣だと思って眺めておけばいいさ。

 なのでロエルは自分に被害はないので対岸を眺めて指さして笑っておくことにした。


 死にかけの教師を見てそんな憶測を重ねたロエルは、それが当たってたら流石に、少しばかり申し訳ないなぁと思ったのでベッドに寝かせて布団をかけ、保健室からくすねてきた魔法薬をベッドサイドにおいてやることにした。

 ないとは思うが、コレで死んだらロエルとしても困る。


 マァ、教師は当たり前にバケモンなので数日後には完治して元気に酒を飲みながら教壇に立ち、授業をせず自習を宣言して眠りについた。

 何しに来たんだろうか一体。


 因みに、元気すぎる教師による保険医襲撃が起こったのでしばらくは保健室は閉鎖されることになった。

 暫くの間、学園が少しだけ平和になったってわけだ。




 以上が、今回の事件の顛末である。

 今日も学園は平和に狂っている。

これにて完結

いくつかロエルに関する裏設定とか、この話の裏話的なのはあるんですけど、入れなくても話は成立するので完結です

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