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他寮にそのまま横流しし

 三分。


 蝶が全滅するのに要した時間であり。

 植物園の八層第三区画の六割が壊滅するに至った時間であり。

 騒ぎを聞いた教師が駆け付けるまでにかかった時間でもある。


 いやぁ実に早い、カップ麺を作るにも時間が足りないんじゃないか。


 なんせ下手人は学園屈指の魔力を持ち、馬鹿みたいな火力してる灰燼寮期待の一年生である。

 一年生の癖に生徒の中でもとりわけ酷いと教師が頭を抱える問題児の一人だ。


 因みに当然ながら本来手のかかる度合いは学年が上がるごとに上がるはずだが、今年の一年は結構色々凄いのが数人入学してきたらしい、色んな話が聞こえてくるのでロエルはあの代じゃなくてよかったって心底思っている。

 この間なんて図書館の禁書庫ぶち抜いて、持ち出し禁止の魔導書を無理矢理持ち出して召喚した良く分からん石が、実は異界の怪異の欠片で複数の生徒が精神汚染されて、良く分からん儀式の為に何人か生贄にしようと人間狩を執り行っていた。

 下手人の一年は高みの見物貫いた挙句、どうやってか無理矢理引きずり出した怪異の精神汚染について探ろうとして、他の一年に止められてた。


 マァそんなやべぇ今年の一年の問題児どもの一人、リオンが親切心とわずかなおふざけで植物園まで遥々お越しくださった。


 その結果がこのお手軽三分焼失ってわけ。


 因みに三分で終わったのは教師が無理やり止めたからで、リオンは軽い慣らしのつもりでやったんだろうな。

 正直遠くから眺めてただけなのでリオンがどんな感情だったのか詳しくは分からないが、止められて残念がってたのは遠くからでも分かった、肩慣らしが終わったばかりで消化不良だっただろうな。


 マァ分かり切った結末と言える、なんせ一部じゃ破壊神とか言われてるのだ。

 ロエルが知っているだけでもリオンの被害はまず教室の大爆発から始まり、図書館の一角が発火して出禁になり、教師の研究室が三つ爆発し、ついでに教師が火だるまになり、校庭は今までの累計で約一割が燃えてた。

 入学から一か月の出来事である、そこから先は何の情報もないので多分揉み消す方法を学んだんだろうな。

 学園という場で成長出来てるようで何より、破壊活動を抑える方向の成長もした方がいい気がしないでもないが、マァロエルとは関係ない事だしな。


 灰燼寮の寮長は何を思ってリオンを派遣したのだろうか、多分何も考えてないんだろうな、無視できないけど乗り気じゃない案件に適当に寮生に応募かけたらリオンが来たんだろうな。

 優しいらしいからな、あの一年。

 爆炎とか火柱を背景に満面の笑みを浮かべる奴が優しいらしい。


 最初に植物園に入り、蝶が近くを通り過ぎた瞬間燃えた所から破壊活動は始まった。


 リオンが行ったことは単純だ。

 見ればわかる、アレはただ魔力を放出しただけだ。

 故の、ただただ純粋な熱。

 目的も意味もない。

 もう魔法という形にすらなっていない。


 リオンのやったことが魔法じゃないと言ったが、じゃァ魔法とはなにか。


 魔導士にそう問えば色々な返答がされるだろう、パズルとか彫刻、積み木、料理と答える人もいる。

 全て間違いではない、人によって色々な感覚で魔法を使うので、その人にとってはソレが正解だ。

 たが、そういった個人の感覚や見解を無視して魔法について説明するのなら、こう説明するのが正しい。


 魔法とは事象の書き加えである。

 目的の為に、世界を改変するのだ。


 簡単なものだと、例えば水を出すとする。

 そのためにはどこに、どのように、どのくらいの水を出すのか、そしてその水を出した場合の世界にどんな変化が起こり、その変化の補填をどうやるのかを魔法式とする。

 その内のどれか一つでもミスると魔法は発動しないし、起こる事象が大規模であれば反動も魔法行使者に帰ってくる。


 灰燼寮の寮長なんて失敗しすぎて、今までで合計して肉体の七割が吹き飛んだと言う話もある。真偽不明。


 マァ、むしろ失敗してそのまま発動する方が悲惨だろうな。

 例えば転移なんて失敗してみろ、体の複数パーツが消失し、さらに右腕の肘から左足首の先が生えたりするかもしれない。人体パーツシャッフル。


 魔法ってのは基本、万能のようでそうではなく、けれど人によっては万能に近いことができるというモノなのだ。基本。出来ると面白いけど、出来ないとやってられねぇってなる。


 さてではリオンはどうなのか。

 勿論そんなことはしていない、なんせ魔力をただ放出しただけなのだ。


 魔力とは本来、形なんてない。

 温度も感触もなく、純粋でまっさらなエネルギー。

 物理界におけるエネルギーは熱だが、魔法界におけるエネルギーは空気に近い。 それなのに、体内の魔力を体外に放出する、それだけで破壊力があるのがあいつだ。


 マァ勿論、魔力が形や熱を持つことはありえないのかと言うと、必ずしもそうではない。

 魔力が質量を持つほど練り上げて放ったら普通に破壊力があるし、魔力に何かしらの外力を付与する方法もある。

 魔力を同行する系の術はロエルと相性が悪いので授業受けてないので詳しいことは知らない。

 魔力とは人によって若干違いがある、得意な魔法にも魔力が関係してたりするらしい。


 けれどその上で、何かしら人でないものの影響を受けたり、長いこと受け継いだ魔法の影響を受けた場合、普通の魔法に支障がでるほど特殊な魔力をもつこともあり得る。

 なんならロエルも少しばかり変わっていたりする。


 長いこと魔蝶を飼ってきた影響とも言えるし、あるいは効率的に魔蝶を繁殖させることための変化とも言える。

 少しばかり普通の魔法が使い辛い。

 古い家系にはままあることだ。

 ロエルは家系で継承してきた魔法に特化しすぎて他の魔法が扱いずらい、他の生徒が一発で成功する魔法が中々成功しない、他の生徒に馬鹿にされてうっかり乱闘騒ぎになる事数十回。

 魔法より拳の方が先に出ちゃうんだよなぁ。


 とはいえ、リオンのように魔力だけであそこまでのことが出来る人間は基本いない。

 あいつは魔道具使ってると溶かすレベルだから別物だ。もはや本人が人外。多分昔にガチで力のある人外の血が入ってる。多分。


 なお、見学してた生徒の二割が重症、三割が中傷を負い、保健室が満員となった。

 ここの保健室はあまり広くないのだ、怪我人が出ることをあまり想定していないとも言える。

 生徒全員、多少の怪我は自力でどうにかできるし、学生街に行けば医者だっている、本格的な治療はそっちが対応するのだ。


 このままだと怪我人が投げ捨てられる事態となるので、急遽翠影寮から空間拡張の魔道具を借りて一時的に凌いだ。

 因みにその魔道具は研究途中の未完成品なので何人かが行方不明になったが、数日後無事(ギリ生きてる状態で)発見されたそう。


 件の魔道具はいくつかの欠陥が見つかったので翠影寮が回収していった。

 満足げだったので近いうちにどっかに論文が載る、ロエルは実験に付いてどう誤魔化すか見ものなので読もうと決めている。


 勿論だが、ロエルは行かなかった。

 用もなかったし、リオンとは相性悪いので、今まで何度も被害に遭って流石に学習した。

 事実今回も見学してただけなのに蝶が何頭もダメにされたのだ、もう少しどうにかならないのだろうか。


 今回ロエルは行かなかったが、リオンが志願したって聞いて急いでその騒動の前日にこっそり蝶を数頭回収した。

 多分一頭残らず塵にされると察して。


 自分の犯行に付いて頑張って隠していたが、結構バレてるようなのでもう開き直って直接植物園に出向いた。

 怒られたくないというより、ロエルは人の記憶には余り残りたくないのだ。

 蝶を直接使役しないので、痕跡だけじゃロエルにはたどり着けないところもこの手法のいいところだ。


 でも正直回収するだけなら別にそこまで問題はない。

 なんせ蝶は直接の親である女王には攻撃しないのだから、いくら使役できなくなったとしても女王を使役しているロエルなら簡単に近付けるし、素手でだって捕まえられる。

 今までは直接植物園に出向かない方向で考えていたから回収できていなかったからどうしたもんかと悩んでいたが、そろそろ解決しそうだし。

 新聞部に話つけらから他のニュースが近いうちに広まる予定だからこの話ももう風化するさ。


 ロエルの前に保険医も一頭回収したらしい、普通に攻撃されたがこの学園の教師陣はバケモンなのでしっかり無傷だった。自信無くす。

 けれどもその後、蝶が数時間で死んですぐ塵になったので研究には使えなかったらしい。

 マァ魔蝶は魔力を糧に生きてるのでね、植物や生物から魔力を得ることができないとすぐに死ぬのだ。

 保険医の手に渡った時点でロエルもその蝶との繋がりも切ったからそこから魔力の補給もないし。

 否。


 否違う、元々繋がりは切れていたので。そういうことにするので。植物園から出した時点でそうなることは必然だったのだ。


 マァ、そんな感じで、今回の植物園でのひと騒動はひとまず収束した。多分。

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