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寮長に問題が丸投げされ

 園芸部の顧問が学園長室殴り込みかけたらしい。


 らしい、というのは実際にロエルが見聞きした情報ではなく、人のうわさを聞いたからだ。

 学園長室周りはガード硬すぎて近寄れないので、そこら辺の話となると人のうわさくらいしかいい情報源がない、もっと隠密性を上げたいところだがマァ今はそんなは別にいいだろう。


 兎角、園芸部の顧問が学園長室に殴り込んだ。

 恐らく部全体の判断だろう、殴り込んだ理由は、最近植物園で生徒が何かに襲われることが頻発しているからその件に次いでだろう。

 つまりロエルによる襲撃が原因だ、保健室送りにした生徒の中に園芸部の部員がいたのだろう。

 途中から数が増えて取り敢えず全員襲ってたからなぁ。


 否マァ確かにロエルが襲ったせいだが、もっと言えば先輩が勝手に蝶に不用意に近寄ったのが発端だ。

 そしてその件を新聞部が新聞に載せて校内に広め、そこから興味を持った生徒が複数見物なり接触なりしに行ったからで、そして生徒が何者かに襲われて保健室送りにされた事件も新聞に載せたことが更に生徒の興味を煽った。

 つまり新聞部が原因だな。


 この学園の新聞部は過去、プロパガンダとか情報統制とか情報操作とか色々やらかして何度も廃部になっていて、それでも何度も新しく設立されるろくでもない部だ。因みに新聞部の現部長は深淵寮の生徒だし、所属してる部員にも深淵寮生の比率が多め、ろくでもない寮だな。

 学園長も生徒の自主性がどうので許可してるし、ろくでもない学園だこと。


 新聞部が今回の件に全く関りがない、というのは断言できないし、むしろ証拠残ってない上記憶を消してるのに、ここ最近保健室に送り込んでる生徒が植物園で襲われたって書いてるあたりどっかで入れ知恵されてる可能性がある。


 園芸部ってのは植物をこよなく愛する狂人集団だ。

 自分の寮の自室よりも植物園で過ごす時間が長い、もはや植物園を自室だと勘違いしてるような連中。

 植物園を自宅だと思ってるから、自宅の治安を維持しようと勝手に巡回するような、面倒な連中だ。過去に何回か生物研究部と争いになったことがある。


 そんな連中が今回の件に関わりを持った、それを聞いたのが約三時間前。


 そして今、深淵寮の寮生が寮長により寮の地下講堂に集められた。

 恐らく園芸部からの苦情に学園長が解決を約束し、そのまま寮長を呼びつけて問題を丸投げされたのだろう。

 うちの学園長は生徒の自主性に任せると言っておけばいいと思ってる節がある、生徒としても制限が少なくて便利なので文句を言うのは少数だ。


 深淵寮の建物は塔の形をしている。

 外見は群青色でキラキラと光っている、夜空を固めたような塔。

 内部は中央が空洞で、壁に沿っていくつもの部屋があり、青い板が螺旋状に浮かんだ階段がある。

 魔法で拡張されているので外観以上に縦に広い、使ってない空間が大量にあるのにそこ潰さず増やしてるので、寮長すら普段使用する場所以外は何があるのか殆ど把握しきれてない。

 上も下も肉眼じゃ階段の終わりが見えないほど。

 徒歩じゃ目的地にたどり着けないので階段があっても魔法で移動してるし、共用部屋のいくつかには転移門が設置されて飛べるようになっている。

 便利だけどそこまでしないといけないのかぁ、とロエルは入学したばかりの頃はとてもびっくりした。


 学園長に問題解決を丸投げされた寮長が寮生を集めた、その時点で今回の事件の原因が深淵寮生だと寮生は確信を持った。

 珍しくもないので誰も大きく反応しないが。

 コレが入学間もなければ新入生がざわついたするが、入学からそれなりに経ち、いくつもの事件が学園内で発生し、その内二割位の確率で犯人側に内の寮生がいるので皆慣れたのだろう。

 因みに、二割っていうのは犯人が分かっている事件だけで数えた場合だ、分かんなきゃ犯人がどの寮かもわからんもの。隠蔽が上手きゃ事件自体表に出てこないのがこの学園だ。

 そして、犯人が分かっている事件の内、半分ほどが深淵寮と翠影寮の寮生が原因だったりする。だって目的を果たしたら後始末せずに次に行くので、他人に興味がないからどんな被害があろうとも気にしないし。


 そして、学園長に問題を丸投げされた寮長が寮生を集めるのもいつももよくある事だ。面倒ごとに巻き込みたいんだろうな。


 とはいえ、集まりはいつもあまりよくない。

 まず何かやった心当たりのある生徒は行かないし、出歩くのが面倒な生徒も、学園外に勝手にいってる生徒も、もっと重要なコトがある生徒も行かない。あと単純に寮長嘗めてる生徒も来ない。というか行かない奴は大体寮長嘗めてる。人望。


 マァ寮長の人望なんてどこも七割位が精々なので。

 深淵寮は現寮長になってから毎年寮生袋叩き期間が存在するので、それ以降は人望が上がる、というか寮長に逆らえなくなる、それでも全員じゃないあたり生徒の人間性がよく見える。


 因みに、この集まりで犯人探しは行わない。

 ある種の決まりというか、伝統というか、寮生の総意というか。

 マァそんな意見に行き着くまでに幾らかの紆余曲折があったらしいが、それを説明するのは長くなる上、ロエルも詳しくは知らないのでわかりやすく一言でお伝えしよう。

 今寮長が座っている席の後ろの壁に『明日は我が身』という格言がデカデカと飾られている。つまりはマァ、そういう事。

 やってたらキリがないのだ。


 多分今この瞬間も学園の何処かで深淵寮の寮生がすれ違った生徒に魔法を掛けたり、手に入れた魔法具の効果を試したり、悪戯に精を出したりしている。

 半分以上の寮生が問題を起こしてるのだから一々やってられないのだ、あと自分が犯人になるかもしれないから。

 人間自分に都合がいいことは大歓迎だから、珍しくみんなが自主的に現在まで続けている。


 さて、そんな感じで始まった作戦会議は、全く決まらなかった。

 否流石は『探求』をテーマと掲げるだけあって、みんな早々に事の発端がちょっと前に起こった生徒が植物園で蝶に襲われた事件だということには辿り着いたし、他の被害者がその蝶に興味持ったからってのと、その後の被害者が事件自体に興味を持ったからと巻き込まれだって事にも辿り着くのは早かった。

 そして、その蝶がロエルの手持ちと似ている事にも気付いた奴はいたのだろうが何も言わなかった、ありがたいな。

 この会議が終わったらそこに至るまでの全部忘れさせる予定だから、知ってる奴が少なければその分負担が減る。


 それで、そこまで分かってて何が決まらないのか、解決策である。

 このまま放置でいいんじゃないかが四割、その蝶気になるが一割、どうでもいいが二割、残りは寝てたりしてて話聞いてすらいない。

 コレがこの寮の実態である、全く実に愉快だ、見てる分には面白い。


 そんな訳で、このままだとらちが明かないので、灰燼寮に全部ぶっ壊してもらおうという結論に至った。

 というのもどうやら、寮長は灰燼寮の寮長に少しばかり貸しがあるらしく、そこまでデカいわけでもないので何か買わせようかと思っていたそれを、丁度いいので返させるために寮生を一人借りるつもりらしい。

 発端となる蝶が無ければいいってのは確かにその通りなので、いささか乱暴だがロエルとしては賛成したい。


 ついでに、恩も売れるし。

 そう口が動いた寮長は視線を講堂の隅の方に向けた、ありえないのに目が合ったような気がして、ロエルは反射的に視界を閉じた。


「……見てた?」


 見てたな、アレは。

 息を吐きながらベッドに飛び込んで、頭を抱えて布団に潜り込んだ。


 どうやら今回の事件の発端がロエルにあることは、それこそ最初から寮長にはバレてたらしい。

 マァ察してはいたが、この様子じゃ結構色んなとこにバレてそうだ。

 新聞に事件の事が乗ってるの見てから植物園に近寄ってすらいなかったんだが、やっぱ最初の新聞が原因だろうな。


 ところで寮長は、恩を売って何をさせるつもりなのだろうか、ただの一般的な生徒に無茶振りはしないと信じたいロエルは、講堂に集まってないので普通に寮長を嘗めてる側の生徒だ。


 枕に顔を押し付けて呻き声を出す。

 余計なことをし腐りやがってと新聞部に恨み言を吐き、絶対に廃部にしてやる、出来なくとも部長を失脚させてやると決意した。


 そもそもロエルとしては、今回の件は最初から気に入らなかった。

 正直引っ掛かるとしても一年生くらいだったのに三年が自分で飛び込んでくるし、それを新聞部が広めるし。

 おかげで事が広まるのが速かったし、必死に隠してるのにロエルに辿り着く人間が多すぎる、本当ならもう少し様子見する予定だったし被害者も出る予定だったのだ。

 自分の存在がバレないよう、かつ早々に事態を収束させる為に頭を悩ませていたのにとっくにバレてたらしいし、そもそも寮長にはいつ目を付けられてたんだ。

 ここまでくると先輩の件も疑わしくなる、否あの先輩はほぼ確実に自分の趣味で襲われたんだろうが。

 先輩まだ意識が戻ってないらしいから詳しくは知らないけど。なんなら、ホントに意識が戻ってないのか保険医が意識失わせてるのかは定かじゃないけど。


 想定外が多過ぎる、もうやってられない。

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