世界共通の闇
…これ以外にも、いろいろと気になることはあるので一つずつ情報を集めなければならない…。
この世界の事に関して、マリアとしては分かっていたとしても私は何も知らないに等しい…。
とりあえずお父様に聞いてみるために一つ咳払いをし、丁寧に質問を始める。
そのまえに私の好きな甘いお菓子達があったので、ちょこっとだけ頂いた。
甘いものは正義!これ常識!
ホントは、もうちょっとゆっくり味わいたい。
だけど…やるべきことを終わらせなくては。
………お菓子…のため…に。
「…まず一つ目、お父様が“普通では突破できることはない”とおっしゃっていましたがこの家は特殊なことでも行っているのでしょうか?」
「ああ、そこに気づいたのか…。そうだね。マリアの言う通り…我が家では少し特殊なことしていてね……ねぇ、マリア。精霊について、マリアはどれくらい知っているかな?」
「せ、精霊ですか?…そうですね、私の知る限りであれば…我が国の認識は魔法の各属性自然を司る神秘的な存在。昔は精霊使いも数多くいたそうですが、今となっては存在していれど日常的に目にすることはなくなった…とある遠くに存在する異国では、天使や悪魔はたまた妖魔や悪霊など別次元での存在と認識されている…ですよね?」
お父様から問いかけられたなら答えねばと思い、頭の記憶からひねり出してマリアは答えた。
彼女の知識はあくまで本から得た知識の一部にすぎない。
だが、公爵の口元には優しげな微笑みが浮かんでいた。
「ああ、よく勉強したね。大方その認識で間違いないよ、マリア」
「大方?というと…まだ何か…」
「…精霊は見ることができなくなったが、あくまで認識できなくなっただけで彼らは確かに存在している。同時に精霊使いも実在する。しかし精霊自体が少なったことや好みの傾向があるせいか昔よりも数少なくなってしまった。精霊使いとなった人間は基本このことを隠して生活するか、国に保護してもらう選択肢を選ぶ。だが、稀に人身売買をする輩がいてな…精霊使いは特に狙われる対象だ」
「え……」
正直にいって、心のどこかで納得していた。
やっぱり闇の世界って、どこにでもいつの時代も存在しているのね…。
彼らが囲んでいるテーブルは無地のはずなのに、まるでそこにとても難しい模様でも描かれているみたいに、じっと下を向いている。
そんな空気の中、公爵はまた一つの事実を口に出す。
「そして、買われた先で暗殺を生業として生きていかなければならないのが多い…」
「あ、んさつ……まさか!?」
「ああ、そのまさかだよ。我が家はね、精霊によって守られている家で通常では入ることすら不可能なんだ。今回の特殊な暗殺…彼は間違いなく精霊使いだろうね。しかも、人身売買によって買われた暗殺者だ」
「…………」
「マリア、改めて聞くが…ホントに会いに行くのかい?一応、魔法も精霊すらも関与できない特殊な牢に繋いではいるが…必ずしも安全とは限らない。それでも行く覚悟があるのか」
言葉に重りが増えていくかのように、後になるにつれ、お父様は表情がなくなり事務的な声で言った。
淡々と自分の”公爵”という役割をこなす。
その意志を私に初めて見せた瞬間だった。