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一つの命

確認するために急いでテーブルの上にあった本を広げて地図をみる。


「…る、ルミナリア、あった!ヴァレンシアの首都、私が今いる場所、そして主人公が初めて旅する国…」


(うわっ、ここにきてちょっと感動したかも…感動している場合では分かっているけれどもここは既に“異世界”なのだ……つまり前世でも出来なかったことが今ならできるというわけで…そのためには情報は必須!…と思ったけど、いくら何でも情報が少なすぎるわ…ネタバレは絶対に見たくなかったのが今回の仇となった…………うぅ~。マリアについては、後々登場してくる必要最低限のことしか知らない…)


「つまるところ収穫物ゼロ、ということか」


(……どちらにせよ。私は…もう…しんでいる、というのも事実か…)


…前世の私は、自身より一回り小さい子供を助けようとして死んだ。

その子供は川で遊んでいるうちに、いつの間にか自身で足がつけなくなるくらいに深いところへ流されてしまっていたのか、私が見つけた時にはすでに子供の胴体が見えなくなるくらい溺れていた…。

その子と遊んでいた子供たちが騒いでいて、それらの声に聞きつけた私が咄嗟に近くまで泳いで助けようとしたが、溺れていた子に前からしがみつかれてしまい、私は水の中に引き込まれる石かのように川の底へ沈んでしまった。


…こういうときは、背面から襟首を掴んで引っ張りながら陸へ向かったほうがいいってニュースでやっていたっけかな?


「…あの子は無事であればいいな…」


“死んだ”という事実を知った今でさえ、彼女はそこまでの感情がわいてこなかった。

怒りもなければ、悲しみもない…。

未練がないのもそうだけど、すでに私はマリアとして生きていると自覚があるからかな?

それとも、まだ思い出していない記憶があるからなのか?


実際に、私の記憶の欠片(バーツ)は揃っていない。

そのため、マリアには何とも言い難い感想が生まれる。


自分自身のことだったはずなのに、いまいちよく分からない…。

まるで、長い間眠っていたはずなのに、いきなり呼び覚まされて叩き起こされたかのような、そんな感じだった。

そして正直な話、死んだときの記憶をあんまり思い出したくない…。




「…それよりも、倒れる直前の最後の声は一体?私の気のせい、だったのかしら…それにしては、やけにハッキリ聞こえたはずなのだけれど…」


そう思いふけっていると何やら人声らしい音の塊や、潮でも押し寄せてくるかのような群衆の足音がした。


ドアから現れたその姿が、彼女の瞳の中で大きくなってゆく。

マリアは入ってきた人物が誰だか理解した途端、彼女の足はすでに走り出していた。


「お父様!」


「マリア!怖い思いしたよな。もう大丈夫だ。一応、医師に確認させたが頬以外に他にも怪我したところはないかい?」


「はい、ありませんわ」


「そうか…病み上がりだろう?マリア。少し座って、お父さんとちょっとだけお話しようか」


「…ええ、分かりました」


お父様や執事さん、騎士の方々が次々と部屋へ流れ込んできた。  

一気に部屋の密度が高くなったせいか、少し息苦しく感じる。


それに気づいた父様は爺や以外を廊下へと促した。

そのまま私にソファーへ座るようにいい、お父様に昨晩の出来事を一通り話した。


(前世関係の諸々の話や謎の声のことは話していない…いきなりこんなこと話されても、お父様が困りますものね)



………それにしても、お父様タイミングぴったりね。まるで、私が先ほど部屋で起きたのを知っていたみたいに…。

 





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