天然②
毎度お馴染み。
牽制するための殺気の飛ばしあい大会、いい加減慣れてきましたわね。
その光景は、まるで目と目がぶつかれば意思疎通できると信じ切っているかのよう。
――誰でもいい。何でもいいから、とりあえず喋ってくださいな!!
威圧も込めてたり、ほかにも意味合いはあるだろうけど、待たされるほうは長いのよ!!
私は参加できないんだから!!!!
そしてクラウス、さり気なく私のほうに向かってウィンクをしないでちょうだい!!!!!
せめて雰囲気だけでもそれっぽくしておきなさい。
……なんて思っていたけれど、彼が真顔で本気の殺気を出し始めたら、それはそれで私が怖くなりそうだから、やっぱり今のままで。今のままでいいです。
そんな脳内会話の思考を一刀両断するかのように、ルカが切り出した。
「――――確かに敵対する気はないとは言ったが、ここまで拒否権のない条件をつきつけられたら、素直に『はい、そうします』とは言いたくならねぇな……」
その瞬間。先ほどまでふざけていたはずのクラウスから温度が消え、事務的にあくまで確認するために言葉を継ぐ。
「……それは拒否、ということで?」
その言葉と同時に――カチリ、と。クラウスの親指が腰に佩いた剣の鍔を押し上げた。
先ほどよりも強まった殺気に対し、どこか乾いた笑いをまじりながら宥めるようにルカは話し始める。
「おいおい、結論を急ごうとするんじゃねぇ。ここまで用意周到だったら、俺だって愚痴の一つ言いたくなるもんよ――後から来るって言っていたお仲間さん。そもそも最初から来ていたし……あの追いかけっこにいたっては、手加減しているのがバレバレ。捕まえようと思えば一瞬でできたはずだろう?」
そこで一度言葉を切り、ルカの視線がアルベルトを真っ向から射抜く。
「――そして、そこの団長さん?だっけ。あんたには真正面から勝てる気しないしな……だから降参だよ、降参」
「……抵抗の意思はない、ということだな。そのまま動くなよ」
「はいよっ、分かってるって」
アルベルトの宣告に対し、ルカはどこか吹っ切れたかのように短く、応答する。
それを合図にしたかのように、あちこちから騎士たちがぞろぞろと姿を現した。
隠れる場所はほとんどないのに、その鍛え上げられた大きい身体を、どこに隠れていたのかしら?
騎士団の訓練の中に、「忍ぶこと」が必須項目となっているのかしら??
騎士団の謎が新たに追加されたが、これらは解決する日がくるのだろうか???
そうこうしてうちに 私はあっさりとルカの背から引き剝がされ、アルベルトの手からクラウスの元まで運ばれた。
どうやら本人の宣言通り、愚痴だけだったらしい。
そしてクラウスの手に渡ったのだが、己が何か黒っぽい血で汚れているのを自覚しているからなのか、直接触れるのも躊躇しているようで。
近くにいたであろうエリックを呼び寄せ、私は荷物のように受け渡された。
それを見て、ふと思う。
(――一応言っておきますけど、私にも意思と足というものが存在しておりますのよ??そんなに淀みなくパス回しされると、自分がリレーのバトンにでもなった気分ですわ!!!あと、お姫様だっこもやめてくださいな!!!)
せめて一言だけも文句を、と。思って動かそうとした口は、結局閉ざされたまま。
ゆらりと揺れる腕に安心感を覚えたせいか、私の瞼は眠りへと誘われていった。
(……このままでは、また欲求に負けてしまうわ……まけたく……くぅ~~)
最後に見えたのは、こちらを覗き込むエリックの、ホッとしたような、ひどく複雑そうな顔だった。
第一章、これにて完結となります!
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました!!
ブックマークや評価もありがたく頂戴し、勝手ながら執筆の励みにさせていただきました。
作者は飛び上がるほど、喜んでおります!!
第二章も続きます!!楽しみにしてくださる読書の皆様方、しばしお待ちください。




