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ヘンテコな集団⑰

 


 だが、私はそんな殺気を真正面から受け止めて、聞き返す。


「……クラウスを知っているの? なら話が早いわ。実はアルベルトも私の護衛だったのだけれど……途中で会ったエリックさんの話を聞いて、アルベルトとは別行動に……。クラウスは、ヒヒヒじ……侵入者と戦闘になって、それで私、はぐれてしまって……」


「戦闘!!! 敵がいるのか!!」


「……ええ、そうよ!! いるわよ。すぐ近くに……たぶん」


 『戦闘』という言葉を口にした途端、目の色を変えて話に食いついてきた。

 その勢いに圧倒されつつも、マリアは言葉を返した。


 たぶん、と言葉を濁しはしたが、その答えは間違いではないはずだ。

五歳児の行動範囲なんてたかが知れている。それに、私の歩幅と大男の歩幅を比べる必要もないだろう。

 

 つまりだ。

 この人にクラウスのところまで連れて行ってもらえば、万事解決なのでは?

 今のところ信頼できそうなこの騎士さんに頼んでみるのは……うん、ありよりのあり、かもしれない。

 彼を見つめながら、私はそう瞬時に結論を出した。


「あの……」


「ああ、どうした!!!」


 興奮のあまりその目をぎらつかせた彼は、今にも飛び出さんばかりの勢いだ。


「……まず、貴方のお名前を教えてくださらないかしら? 私はマリア・グラツィア。以後、お見知りおきくださいませ」


 マリアはいつも通り――いや、それ以上に丁寧な挨拶を見せた。

 

 大男の騎士は、そんなマリアの様子に目をぱちくりとさせたが、名前を聞くと同時に目の輝きがより一層増した。


「おお! どこのお嬢さんかと思えば、我が公爵家のお嬢さんだったか! そいつは失敬した。我輩の名は、ガルム。ガルム・オスカーと申す」


 礼をするためか、熊のような巨体を縮こませ、彼は恭しく挨拶をした。

 

 膝は綺麗に折られ、なおかつマリアの目線に合わせてくれていることから、見た目とは違い、細やかな気遣いができる男なのかもしれない。

 ――と、マリアはさりげなく失礼なことを考えていた。


「ガルム。早速だけれど、お願いしたいことがあるの……。私の願い、聞き入れてくださるかしら?」


「ああ、勿論だとも。我輩のできる限り、全力を尽くそう!!」


「ありがとう、ガルム」


 その力強い言葉に、マリアは内心で安堵の息を漏らした。

 内容も聞かずに、『できる限り尽くす』と即座に請け負ってくれたことは、今の彼女にとって、この上なく頼もしく心強いものだった。

 これなら安心して任せることができそうだ。


「それで、お嬢さんの願いとは?」


「ええ。それに関しては――」


 私が彼にお願いしたいことは、たった二つだ。

 一つ。クラウスの元まで、私を連れて行くこと。

 二つ。彼が窮地にあった場合、加勢して敵を無力化してほしいこと。

 

 私は頭の中で要点をまとめて、その二つをガルムに頼んだ。


 そのことをガルムに告げると、一瞬目を丸くした。

 ――と思ったのも束の間、らんらんと輝く彼の瞳が、至近距離で私を覗き込んだ。


「お嬢さん……いや、マリアお嬢ちゃん! あんたはなかなかに面白いお方だ!!」


「え……それは、どうも、ありがとう?」


「はははっ!!! 正直なところ、今まで出会わなかった時間すら惜しく感じるほど、あんたは面白い!」


 歯を見せて笑う姿はいっそ清々しい。

 だが、先程までの殺気から一転してこの情熱ぶりだ。

 

 あまりにも真っ直ぐな感情をぶつけられ、マリアは思わず戸惑ってしまう。

 ……褒め言葉として、受け取ってもいいのよね? いい、のよね?信じるわよ?


 

 そんなマリアの様子を気にする素振りもなく、ガルムは「では失礼する」と告げるやいなや、彼女の体を軽々と持ち上げた。

 

 混乱に混乱を塗り重ねられ、彼女はもはや目を回さんばかりだ。

 

 だがそんな状況の中で、ふと、懐かしくも嫌な予感が彼女の脳裏をよぎった。

 

 ――あれれ? この体勢、どこかで見覚えがあるわね?

 そんな、まさかですよね……?



「ガルム、ちょっと……?」


「マリアお嬢ちゃん、しっかり掴まっていてくれよ。――でないと、振り落としてしまうかもしれんからな」


「――え、ちょっ……」

 



 マリアが言いかける(いとま)もなく、ガルムの巨体は爆発的な勢いで地を蹴った。





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