ヘンテコな集団⑮
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——あ~、テステス。こちらマリア。マリア・グラツィアでございます。
只今、私、
「お嬢? ちゃんと聞いてますか? 」
「ひゃいっ!? あ、いえ、聞いてます聞いてます! ええ、ばっちりです! 」
絶賛説教タイムになっております。
かれこれ、何分が過ぎたことでしょうか?
クラウスの説教は、いまだに終わる気配が見えません。
彼の怒りの程度を鑑みるに、そう簡単に許してもらえるとは到底思えませんでした。
「だれか助けてほしい」と願いながらも、辺りに漂う人の気配があまりにも希薄で、この状況を打開するのは無理だと、すでに悟っております。
「――――お嬢様? 」
「……ええ、分かっておりますわ」
クラウスに何を言われていたかなど、もはや記憶の彼方である。
だがマリアは、それこそが正解であるかのように、殊更深く、神妙に頷いてみせた。
とりあえず、頷いとけばそのうち終わるでしょう。
「お嬢。やはり、聞いていませんね? 俺は聞いているのなら、相槌で返すようにとお伝えしたはずですよ? 」
「………………」(マリアは、慌ててコクコクと首を振る)
「…………いや、今さら取り繕っても、もう遅いですよ? マリアお嬢」
クラウス、謀りましたわね! この私が、まんまと引っかけられてしまうなんて……!
うぬぬ……おのれ、クラウス・フォルマ―!!!決して忘れませんわよ、この屈辱。
(※ほとんど自業自得である)
クラウス!あなたは知らないでしょうけど、異世界にはこんな言葉がございますのよ!!
目には目を、歯には歯を。
ハンムなんちゃら——————ハムハム法則の通りですわッ!!
「……あれ? 何だか美味しそうな名前になってしまいましたわね……テンポ的にはあっているはずなのに……」(※彼女は異世界出身のはずでした)
「何がです?」
「……っ! いえ、いえ! なんでもございませんわ……!!」
クラウスは不審げに眉をひそめたものの、深追いはせず、ひとまず次の話題へと話を移した。
私は密かに安堵しつつも、これ以上の追及を避けるべく、背筋を伸ばして彼の話に耳を傾けることに専念する。
「……まあ、いいでしょう。お嬢に伺いたいことは山ほどございますが、まずはいくつか、ご質問させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ。もちろんよ」
背筋を伸ばした私は、努めて冷静に、そう短く答えた。
「では、お嬢。まずは……先ほど、一時でもお傍を離れてしまった非礼、深くお詫び申し上げます」
「!?」
いきなりお説教モードが解除され、逆に怖いのだけれど、彼自身は真剣に話しているようだ。
では、こちらもその誠意に応えねば。
「怪我はありませんか? 出血や、痛みなどはございませんか?」
「ええ。怪我はしておりませんわよ。あえて言うならば目が少し痛いくらいかしら。でも、しばらく休めばそのうち治ると思うわ」
「承知いたしました。では、事が終わり次第、すぐに医師を呼び出すことにいたしましょう」
「え……? いえ、そんな、大した怪我ではありませんわ! ……ましてや医師を呼ぶほどのことでは……」
(それは、不味いわ!クラウス、やめなさい!!)
このままクラウスの言うとおりに頷けば、父様に知れ渡り、外出の可能性が限りなくゼロになる未来を予感する。
予感ではなく、ただの確信めいた事実だと思うけど。
「……お嬢? 今、『大した怪我ではない』とおっしゃいましたね。やはり、どこかに傷を負っておいでなのでしょう。お嬢に何かあれば、公爵様の怒りが俺らに降り注いできます。……ここは俺のためと思って、どうか聞き入れてください」
(ああ……。逃げ場がない、逃げ場が完全に塞がれてしまった……!)
マリアは、絶望のどん底に突き落とされていた。
事件の発覚だけでもう十分詰んでいるというのに、医師の検分という最悪の追い打ちが彼女を待ち構えている。
「……よろしいですね?」
クラウスが駄目押しのように、静かに、けれど逃げ場を許さないトーンで問いかけた。
「…………はい」
わずかな抵抗を試みたのち、マリアは力なく、敗北を認める返事をした。
————ああああ、クラウスの馬鹿ぁぁぁ!!!!




