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ヘンテコな集団⑭



 受け止められた剣。


 その刃先の向こうにクラウスは自分と同じ漆黒の甲冑に身を包んだ騎士の姿が見えた。

 クラウスはその男の顔を、よく知っていた。


「は?どうして止めるのですか?ガルム。差し支えなければ、理由(わけ)をお聞かせ願いますか?それが万が一、取るに足らない理由であった場合、例えガルム相手でも俺は容赦しませんよ」


「おいおい、珍しいじゃないか。クラウスが感情的になっているなんてな」


「……茶化してます?」


 クラウスは苛立たし気に、剣を構えなおす。

 剣先はガルムの視線と交差していた。

 それでもガルムは慌てることなく、その切れ先を見つめたまま、むしろ楽しげに口角を上げた。


「ははっつ!!いつもの我輩であれば、喜んで剣を交えていただろうな。だが、すまん、クラウス。この場では見送りだ」


「…………ほんとに珍しいですね。貴方ほどの戦闘狂が見送るとは……よっぽどの事情があるようですね。では聞かせてもらいましょうか、その言い訳を」


「ああ、無論だ。率直言うと、あの公爵家の娘さん、マリアお嬢ちゃんからのお願いなんだよ。流石の我輩にも無下にはできん。……まぁ、それはお前さんもそうだろうがな」


 それを聞いた途端、クラウスの肩がびくりと震えた。


「えっつ!?お嬢の!?ガルム!!それは、嘘ではありませんよね??」


「ああ、ほれ、見てみ?」


 クラウスはガルムに促されるまま、指し示す方を見やった。


 するとそこには無邪気な様子で武器に触れているマリアがいた。

 クラウスは思わず息を呑み、顔からは血の気が引いていく。

 冷や汗が顎を伝う。


 慌ててガルムの方に振り返るが、当のガルムは落ち着いた様子でその光景を眺めていた。

 クラウスは声を荒げかけた。


「おい、あれに触ったら……!!」


「大丈夫だ」


「どこが大丈夫なんだよ!?」


 ガルムはそれでも動じない。

 クラウスは苛立ちを隠しもせず、ガルムを一瞥した後、マリアに向かって走り出した。


「いやぁ~、あのクラウスが、あんなに慌てるとはな」


 ガルムは、心配性の友人の背中を黙って見送りながら面白そうにつぶやいた。

 彼の口元には、やはり微かな笑みが浮かんだままだった。


「公爵家のお嬢ちゃん、平凡なお嬢さんかと思いきや、どうやらそうでもないらしい…………この先、面白くなりそうだ」


 彼の目には、強い光が宿っていた。



「なぁ。お前もそう思うだろう?」



 ガルムは、逃げようとしていたレイヴンの肩を掴み、静かにそう問いかけた。


 「ひゃっつ」という短い悲鳴が、レイヴンの喉から漏れて出てしまう。

 掴まれた肩は、逃げられないと悟るほどに力強かった。


 レイヴンは恐る恐るガルムの方へ振り返る。

 ガルムの目は、先ほどとは違う、冷たい光を宿していた。


 レイヴンは思わず視線を逸らそうとしたが、その視線に縫い留められたかのように動くことはなかった。

 声も出ない彼に、ガルムは不敵な笑みを向けて、そう言った。



「まぁ、悪いように()しないさ。悪いように()な」



 ガルムが言った言葉の意味を悟り、レイヴンは言葉もなく、顔を強張らせた。




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