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~プロローグ~

いつも通り疲れる毎日。


変わらない退屈な日々。



彼女は、ため息をつきながら城からの景色を見るともなしに眺めた。


先ほど来たばかりのはずの彼女がこうして早々とバルコニーにいるのには理由がある。


パーティホールに目を向けると、そこには断片的にその原因となる来客たちの姿が嫌でも映りこんでくる。

その様子を目に入れてしまうと、思わずため息をはいてしまう。



現在、ヴァレンシアの王城には我が国の令息や令嬢たちがわんさか集まっている。


社交の場…それは、女性にとって女の戦場に等しい。

顔、ルックス、家柄…玉の輿チャンスとか所謂バーゲンセールみたいなものだ。

ここから楽しそうに聞こえてくる話声や会話なんて、ほとんどが上辺だけ…頭の上で輝いているはずのお天道様が暗く陰ってしまうかのような味気無さだ。


さらに私を憂鬱な気分にさせるのは、すれ違う派手な女性たちにも原因があった。

彼女らの性格などの個人話は、一先ずは置いておくとして…問題なのは、彼女達がつけている一人ひとりの香水の香り。

個性と個性が混ざり合った匂いは、思わず吐きたくなってしまうような強烈な匂いなのだ。

もはや香水ではないし、香水だとは思いたくもないし、そもそも香水としての役割を果たせていない。


現によく観察していると、令息たちの中には苦笑とも極まりわるがりともつかない複雑な笑いかたをしているものもいた…。

その様子は、雨に打たれて尾をだらりと垂れさせた野良犬よりも哀れで痛々しく映った。



…それらに比べて、外の景色はとても美しい。


どこまでも続きそうな広々とした大地。


今すぐにでも飛び立っていけそうな青い空。


燃えるような日光に負けないくらい活気にみちあふれた城下町。


自分とそれ以外に区切られた空間は毎度のことながら新鮮味と心地よさを感じる。



そんな風に日常を過ごしていた、とある公爵家の娘。

それが私、マリア・グラツィア。



五歳の誕生日。

あの日、あの時間からいつも通りだったはずの退屈な毎日は、あっという間に崩れ落ちることとなる。

こんな未来がくるなんて、今の私では到底、想像することができなかっただろう。


こんな———物語が待っているなんて…


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