表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
熱血ヒーラー、世界を癒す旅に出る  作者: 今晩葉ミチル
リベリオン帝国の中央部
29/62

ローズベルからの伝言

 気を失ったエリック・バイオレットは、個室のベッドで寝かせられていた。個室はリベリオン帝国の王城内にあるもので、特殊な蔦が壁に張り付いている。王城内の蔦は、人が動くのを感知すると光る性質を持つ。

 しかし、あまりに人の動きが緩慢だったり気配を察せられないと、光らない場合がある。


 その性質を利用して、エリックに静かに近づく人影があった。


 身長の高い細身の男だった。切れ長の瞳をぎらつかせている。暗闇を迷わずに歩いていた。

 そして、男はベッドのそばに行く。

 その時に、エリックは勢いよく起き上がり、袖から取り出したナイフで男を切りつける。

 男は待ち構えていたかのように、手持ちのナイフで受け止めていた。

 甲高い金属音が鳴り、蔦が一斉に光る。そしてエリックと、呆れ顔の男を照らす。


 男はダーク・スカイであった。


 ナイフ同士が交差してギリギリと押し合う。

 ダークは溜め息を吐いた。

「てめぇと出会って間もなく、眠っている間に敵が近づいたら寝起きで仕留めるように教えたが、殺気があるか察しろよ」

「あんたは敵が殺気を感じるまえに仕留める時があるだろう」

「まあな」

 エリックが睨むのに対し、ダークは半笑いを浮かべた。

「今はローズベル様から伝言を預かっているだけだ。今すぐにてめぇを仕留めるわけじゃねぇから安心しろよ」

「……今を強調するのは、いつか殺しに掛かるという意味か」

「まあ聞けよ。あんたの扱いが決まったぜ。まずは決闘の勝利を伝えろと言われた。てめぇは南部地方の死守に成功したんだ」

 ダークは力を込めて、エリックのナイフを勢いよく弾く。エリックは勢いを殺せずに、ベッドに倒れこんだ。背中がひどく痛んでいた。

 ダークは口の端を上げるが、目は笑っていない。

「闇の眷属に害を与えない事、ブレイブ・サンライトの手助けをしない事。この二つが守られれば多少の裏切りは大目に見るだとさ。ローズベル様の目の届く所では俺はてめぇに手出しをしない」

 エリックは苦渋の表情を浮かべた。


「ローズベル様の目を盗んで襲ってくるという事か」


「当たり前だ。勝手に中央部を出て行ったら仕留めてやる。てめぇにも言い分があるだろうが、サンライト王国跡地の事はぜってぇ許さないからな」


 ダークはサンライト王国の跡地でブレイブたちと対峙した。その時に、エリックはブレイブの側についた。

 エリックの紫色の瞳が揺れる。

「人質を取る作戦が我慢できなかった。あんたに必要な作戦とは思えなかった」

「てめぇが何を言おうと、俺が邪魔されたのは間違いねぇんだ。ブレイブを仕留める絶好のチャンスを作ったのにな」

「ブレイブは殺すべき人物ではない。彼の人格と実力は、あんたも分かっているはずだ」

「状況が許さないという事もあるんだ。てめぇが理解するのは早いかもしれないけどよ」

 ダークはナイフを袖にしまって、踵を返す。


「ローズベル様からの伝言は分かったな。次に会う時は叩き潰してやるから覚悟しておけ。あと、バイオレットの塚の事だが、直接言われていない事に対応する気はないぜ」


 ダークは早口に言うと、足早に歩き去る。

 バイオレットはエリックの想い人だ。彼女を弔う塚がサンライト王国の跡地にあったのだが、ダークのワールド・スピリットで跡形もなく壊されてしまった。

 エリックは痛む身体を無理やり起こした。


「待て! 話しておけば対応したのか!? 答えろ!」


 切実な問いかけに、返事が返ってくる事はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ