表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/62

悲惨な景色

 ブレイブの行きついた先は悲惨な有り様だ。

 広大な作業場のようだが、重苦しい空気になっている。

 多くの人がツルハシを振るい、採掘用の鎖を引っ張る。

 苦しそうにうめく人々を鞭打つ大柄な男たちが数人いる。

「奴隷にされている」

 アリアが言うが早いか、ブレイブは走り込み、鞭打つ男のうち最も大柄な人間の腕を掴む。

「やめろ、何をしているんだ!」

「ああ? てめぇは何だ? いつのまに近づきやがって」

 大柄な男たちが怪訝な表情を浮かべる。

 ブレイブは男たちに視線を向ける。

「僕はこんな病んだ景色を見たくない。みんなで温かな家に入って休もう」

「なんだこの甘ちゃんは? 偉そうに」

 男たちの視線がブレイブに集中する。

 ブレイブは男から手を放して、ポンと軽く手を叩いた。


「ああ、名乗っていないから警戒されて当然か。僕はブレイブ・サンライト。今は亡きサンライト王国の王子だった」


「ブレイブ様、簡単に名乗らないでください!」


 アリアが長剣を構えつつ走りこむ。

 男たちは鞭を構えて下卑た笑いを浮かべる。

「おいおい、マジか? ルドルフ皇帝が血眼になって探しているブレイブか?」

「こんなに簡単に見つかるし、虫を殺せそうにない優男なんてな。こりゃローズ・マリオネットの力を借りる必要はなさそうだな」

 ローズ・マリオネット。

 この言葉を聞いた時に、ブレイブの表情は硬くなった。

「ローズベル率いる殺人集団か……僕の国の人が何人殺されたか……」

「こんな事で泣き顔になるのか!」

 男たちは声を大にしてブレイブを嘲笑う。

「やっちまおう!」

「こいつを倒したら、リベリオン帝国の重役になれるかもな!」

 男たちが一斉に鞭を振るう。標的はブレイブだ。

 ツルハシを振るっていた人や、採掘用の鎖を引いていた人々が絶望の溜め息を吐いた。

「また人が死ぬのか……」

 男たちの鞭がしなる。

 ブレイブの白いローブがはだけ、血がにじむ。凶悪な鞭を一斉に食らったのだ。倒れても不思議ではない。

 しかし、ブレイブは直立不動のままだ。


「気は済んだか?」


 傷口はすぐに塞がっていた。

 男たちが驚愕した。


「化け物か!?」


「僕が倒れないのはワールド・スピリットのおかげだ。僕自身にヒーリングを掛けたんだ。化け物じゃないよ」


 ブレイブが穏やかに微笑むが、男たちの表情は険しい。

「ワールド・スピリット……こんな若造が使えるのか!?」

「ルドルフ皇帝やローズ・マリオネットぐらいだと思っていたのに……」

 動揺する男たちのうち、二人の腹に剣の一線が走る。アリアの長剣が抜き放たれていた。目にも留まらない早業であった。

 二人の男は血を吐いて倒れる。

 他の男たちは悲鳴をあげて、ブレイブたちに背を向けて、全速力で走り出した。


「エリック様を呼べ! あの方に頼るしかない!」


「おい、誰か時間を稼げよ!」


 男たちは全員で逃げ出したのだった。森の中へ姿をくらます。

 ブレイブは血を吐いて倒れた男たちにヒーリングを掛けた。傷口が塞がったのを確認して、安堵の溜め息を吐く。

「いつか意識を取り戻すだろう」

「悠長に敵を治療している場合ではありません! エリック・バイオレットは恐るべき男です。ローズ・マリオネットの中でも警戒するべき相手です」

「そんなに怖いのか!?」

 ブレイブの仰天をよそに、アリアは森に向かって走り出す。

「説明している時間はありません!」

「分かった、走りながら聞くよ」

 ブレイブも走る。森の中は太い木の根や枝がはびこっていたが、ものともせずに突き進む。

「エリックはどんな人なの?」

 ブレイブが改めて聞くと、アリアは苦渋に満ちた表情を浮かべた。

「鋼鉄を操る冷酷な男です。数多くの戦士や英雄が無残に切り刻まれました。一見すると銀髪の美しい少年ですが、悪魔と考えるべきです」

「子供なんだ……アリアは見た事があるの?」

 ブレイブが尋ねると、アリアの瞳に殺意が宿る。

「サンライト王国が滅んだ要因の一つです。子供も大人も関係ありません」

「気を悪くしたらごめん。アリアをイラつかせるつもりはなかったよ。そういえばメリッサは大丈夫かな?」

 メリッサとはブレイブに仕える女魔術師だ。いつも温厚な表情を浮かべる長い茶髪を生やす女だ。日頃は緑色のローブをまとっている。

 鞭を振るう男たちが怖いと言って、建物の陰に隠れている。

「放っておきましょう。男たちを倒すのが先決です!」

「エリックは、そんなに危険な子なのか……」

 ブレイブの表情に緊張が走る。メリッサには悪いが、エリックを呼ばれないようにする方が優先順位は高いだろう。

 しかし、そんなブレイブたちの思惑を裏切るように、木の陰から静かに獲物を狙う銀髪の少年がいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ